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池上彰の大岡山通信 若者たちへ働き始める君たちへ――人生の理想忘れないで

池上彰の大岡山通信 若者たちへ 働き始める君たちへ――人生の理想忘れないで
authored by 池上彰東京工業大学特命教授

 日経カレッジカフェと日経CNBCによる学生向け番組「日経カレッジ・ラボ」は2017年11月、特別ゲストにジャーナリストの池上彰さんを迎えて「池上彰スペシャル 働くこと、生きること~学生と考える」を公開収録しました。今回は大学生との対話の模様を再構成しました。 

◇ ◇ ◇

 前回取り上げた「働くこと」について考えるイベントでは、大学生たちと対話する場面もありました。今回はその一部を紹介します。大学生たちはどんなふうに考え、悩んでいるのか。「働く」というキーワードに、どんなイメージを抱いているのでしょう。

 学生A 働くこととはお金を稼ぐこと。生活を充実させ、仕事の成果への評価の目安になる。

 池上教授 確かにその通りですね。ただ、給料は評価の証しではあるけれど、給料では反映しきれない満足度を考えるようになる。働いて提供する商品やサービスが、人々を満足させられるかどうかも、大きなポイントだと思います。

 学生B 働くことで社会とのつながりを持つという大切な面がある。

 池上教授 給料を得ることは、あなたがつくった商品を消費者が買って、喜んでくれたということですね。つくったものが売れなければ、企業はつぶれてしまうかもしれないのです。

 学生C 働くことを通じて、自分の専門性を究めることだと思います。

「働くこと」をテーマに、学生の質問に答える池上彰氏(昨年11月20日、東京都千代田区の日経ホール)

 池上教授 自動車のトップセールスマンになる人がいますが、これもその分野の営業のノウハウに優れた専門性があるからだと思います。大学で専門性を究める道を歩んでいても、その世界だけが特別な専門の分野だとは思わないでください。

 学生D インターン(就業体験)などを通じて、企業での責任の範囲の大きさを感じた。

 池上教授 社会に出て、働いて給料を得ることは、「プロ」であることを意味しているわけですね。いまでも覚えています。NHKで初めてキャスターになって番組に出る前、緊張のあまり足が震えました。自分の名前ですら、原稿に書いたものです。スタジオにたどり着いていないという悪夢を何度もみましたよ。

 学生E 就職活動の前に、自分の働き方を突き詰め、社会の一員としてどう貢献するのかということを考えました。

 学生F 学生のときは自分のための勉強、成績でしたが、社会に出れば世の中や他の人々との関係が生まれる。そこが大きな違いだと思います。

 池上教授 働き始めれば、会社の中と外の世界という新たなつながりができてきます。責任が生まれ、それがつらいことにもなるでしょうし、生きがいになることもあるのですよ。

 学生G 自分の理想をかたちにしていくことだと思います。

 池上教授 とても大事な提起ですね。社会で働いていくときに「理想の社会」をイメージすることは大切なことだと思います。その中で「自分が果たす役割はあるのだろうか」と自問自答することが大事なのです。理想がそう簡単に実現するわけではないけれど、動き出すこと、進み始めることが大切なのです。

 学生H 成果物が社会的に評価され、金銭をもらうことが働くということだと思います。

 池上教授 学生たちがそれぞれに「働くということについて」思い描くキーワードを説明してくれました。決して、どれが正解ということではありません。そうした視点のすべてが、まさに「働く」ことにつながっているのです。

 すでに働いている若者たち、これから社会に出る若者たちも、働くこと、生きることに迷ったら、ぜひ「初心」を思い出してほしいと思います。

[日本経済新聞朝刊2018年1月15日付、「18歳プラス」面から転載]

 ※大岡山は池上教授の活動拠点である東京工業大学のキャンパス名に由来します。日経電子版に「大岡山通信」「教養講座」を掲載しています。

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