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起業家の発想、中小が形に 京都でものづくりコラボ

起業家の発想、中小が形に 京都でものづくりコラボ

 日本電産、京セラなど日本を代表する製造業が集積する京都。それを支えるのが地域の中小企業の厚みだ。ただ大手の海外への製造移転が進み、受注環境は厳しい。スタートアップのアイデアと中小企業のものづくりの力をつなぎ、新たな製品開発を後押しできないか。京都のスタートアップ、ダルマテックラボ(京都市)はコラボレーション(協業)の新しい仕組みづくりに挑む。

仕組み作りはダルマテックラボ

3Dプリンターなど工作機械がずらりと並ぶ工房には海外のものづくりスタートアップが集う

 JR京都駅から北西に2キロメートル。市場や民家が並ぶ下町にユニークな工房がある。カフェのような明るい空間の奥には、3Dプリンターやレーザー加工機がずらりと並ぶ。訪れるのは様々な国や地域の起業家や、地元の中小企業の担当者だ。

 9月に開業した「KYOTO MAKERS GARAGE」を中心となって運営するのがダルマテックラボ。スタートアップが気軽に製品を試作し、ものづくりのプロである中小企業と意見交換するスペースだ。

 工房は料金1000円でどの機械も1時間使い放題。米ニューヨークなどの起業家育成機関と連携し、海外の投資家や起業家を招いた講演会なども開いている。

 「ものづくりの担い手を京都から増やしたい」。ダルマテックラボ代表の牧野成将氏(38)は、起業家支援の輪を広げることを目指す。国内外のスタートアップと中小企業をつなぐことで、これまで20件以上の試作や量産を支援してきた。

 それを支えるのが約100社の京都の中小企業ネットワークだ。電子部品や医療機器などの製造ノウハウを持つ「京都試作ネット」と提携。ソニー出身のエンジニアや京都試作ネットの前代表理事らと共同で、15年に起業した。

 「人間の足の動きをセンサーで解析できるスマートシューズを開発したい」。スタートアップのノーニューフォークスタジオ(東京・千代田)は、機械設計を手がけるKYOSOテクノロジー(京都市)と協力し、製品の耐久性を当初より大きく改善した。開発中の製品は来年1月に米ラスベガスで開かれる家電見本市に出展する予定だ。

 米国でスマートフォンに使う電池のシェアサービスを手がけるホップライトパワーは、電池を補充できるスタンドを日本で開発したいと来日した。機械設計などを手がけるニューネクスト(京都市)と新製品の開発プロジェクトを始めている。

「死の谷」を越える懸け橋に

「京都からものづくりスタートアップの波を起こしたい」と語る牧野氏

 牧野氏がものづくり支援に関心を持つきっかけは10年ほど前。ベンチャーキャピタル(VC)出身で国内外のスタートアップと付き合う中、1つの問題意識が生まれた。ものづくりに携わる起業家の多くが「死の谷(デス・バレー)」と呼ばれる経営の壁を乗り越えられないことだ。

 低コストで量産したくても、量産の手前の試作段階で設計の不備や性能不良が発生。量産にたどり着けず、初期投資が膨らんで疲弊する企業を多く見てきた。

 「欧米のスタートアップの多くもこの壁にぶつかっている」(牧野氏)。低コストの中国企業に試作を依頼したために品質が悪かったり、仕様が固まらなかったりするケースが多い。試作段階で日本の中小企業が指南役となれば、死の谷を乗り越えられると考えた。

 一方、中小側にもスタートアップの仕事を引き受ける難しさがある。発注量が小さく、量産まで至るかどうか未知数のスタートアップ向けは多くの中小が二の足を踏む。

 牧野氏はVC時代のネットワークを生かし、有望なスタートアップに投資して資金面でも支援する。中小にとっては、資金的な裏付けのあるスタートアップなら仕事を受注しやすくなる。

 3月には京都銀行などと投資ファンドを設立。10年間で50社程度のスタートアップへの出資を計画している。既に設立以降の出資案件は5件。11月にはゆうちょ銀行もファンドに参画した。

 「京都を核にスタートアップと中小が持続的に成長できるエコシステム(生態系)をつくりたい」。牧野氏が描くのは、水平型のものづくりだ。日本は中小が大手の下請けになる縦型のものづくりが主流。だがそのピラミッドがひとたび崩壊すれば中小の廃業や技術流出のリスクも高まる。

 スタートアップとの協業で中小は下請けの立場から、一から主体的にものを作り上げる立場に変わる。「中小企業の競争力強化につながる」(牧野氏)。関西ではシャープもスタートアップの試作を取引先の工場を活用して支援する取り組みを進めている。

 国内製造業の復権と成長力の高いスタートアップの育成。日本の産業界に最も必要な2つのテーマは、実は表裏一体なのかもしれない。
(大阪経済部 川上梓)[日経産業新聞 2017年12月4日付、日経電子版から転載]

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