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目指せ!世界変える「変人」(6)自分で考え世界へ飛び出そう

目指せ!世界変える「変人」(6) 自分で考え世界へ飛び出そう
authored by 谷村一成中央大学4年生

 2014年春。海を越え、山を越え四国の田舎から上京してきたあの日。「東京」への夢と希望を胸に辿り着いたキャンパスは、故郷と何一つ変わらないのどかな風景に囲まれていた。初めて私が多摩にやってきた日。遠くに見える富士山を見ながら、ただただ呆然としていたことを今でも覚えている。あの日からおよそ4年。私はどれほど変人に近づくことができただろうか?

 私は期待しすぎていたのかもしれない。教室では、学生たちが活発に世界の様々な問題について議論している、と。放課後には、学生たちが社会をよくするために様々なボランティアや社会活動を行っている、と。親身な教職員に囲まれ、大学の万全のサポートのもと、学生たちはキャンパスライフを謳歌しているのだ、と。

講演する筆者

 だが現実は違った。教室では、学生たちはいま世界を征服しようとしている邪悪なモンスターを倒すべくスマホに向かっていた。放課後には、居酒屋でこれから直面する厳しい社会を忘れて、つかのまの人生の夏休みを楽しんでいた。お経を唱えるような授業をする教授と、業務処理でいっぱいいっぱいの職員に囲まれ、大学の古くて融通のきかないシステムのもと、学生たちは自分の大学の悪口を繰り返すばかりだった。

 こんなはずではなかった。

 絶望した私は、より評判のよい大学への編入を考えもした。実際に編入していった友人たちも少なくなかった。だが私はすぐにその考えを捨てた。なぜならそれは、「いつかみた光景」だったからだ。これまでの自分も、周りの人も、結局いつもその時の環境に期待しては絶望していた。私が地元の名門中学に入学した時も、香川No.1といわれた進学校に入学した時も、そして他の有名大学に入学した友人たちも、口をそろえて「こんなはずじゃなかった」と言っていた。

完璧なものなんてない


私は結局そんなものなんだと思った。完璧なものなんて存在しない。どこにだって課題はある。もちろん、その高校なり大学なりを目指して入っている以上、憧れや期待がある。だから、問題点を見つけるとがっかりするし、余計に目につくのだと思う。そして、その問題点がよいところをかき消してしまう。これはある程度は仕方がないことなのだと思った。編入したところで同じ現象にぶち当たると予想できた。

 ではどうするのか?絶望し続けるしか方法はないのか?そう悩んでいた私はある言葉で救われた。それは、1年の英語の先生の一言だった。「もう他人に求めるのはやめて、自分がどうするか考える時だ。」

大学1,2年次のクラスメート

 義務教育、そして高校生と私たちは常に教えられ、導かれる側として生きてきた。先生の言う通りにすることが正しくて、それが成長につながった。だが、大学からはその状況が大きく変化する。これまでの受動的な存在から、主体的な存在となる。履修は自分で組む。課外活動もアルバイトも自由。誰にも管理も指示もされない代わりに、誰も導いてくれない。自分が主体的に決定し、行動しなければいけないのだ。

 だが、いきなり説明なしに主体的な存在となるので、戸惑う人が続出する。そして、大学や教授、サークルなどに自分を正解へと教え導くことを求める。だが、これらはあくまで選択肢の一つであり手段の一つ。教え導く義務などない。だから学生たちは環境に対する不満を募らせていく。この大学は何もしてくれないと。

自分が動く


しかし、もう私たちは自立した人間にならなければならない。自分のいる環境をよくするためには、自分が動かなくてはいけないのだ。なぜなら私たちは保護者の管理下から、自立した主権者になったからだ。私はこのことに気づいたのだった。

筆者が開講したアイヌ文化講座

 自分たちのまちは自分たちでよくするのが当たり前のように、自分たちの大学は自分たちでよくしよう。変人学部の活動だけでなく、自分が学生生活を通して行ってきた活動のベースにはそんな思いがある。ケネディ大統領が就任演説で話した有名な言葉がある。Ask not what your country can do for you, ask what you can do for your country. 国があなたのために何をしてくれるのかを問うのではなく、あなたが国のために何をできるのかを問うてほしい。これは大学に置き換えても同じだと思う。だが、こんな当たり前のことがなぜだか気づかない。それほどに、高校までの受動的な存在としての経験の呪縛は強いのだ。

身の回りから変える

 さて、私が大学で活動している一方で、大学に対して不満を述べていた人たちはどうなったか。そのうちの少なくない人たちが、「世界を変えるため」にこの多摩キャンパスから出ていったのだった。「世界を変えるためにこんな小さな大学で活動してもしょうがない」「多摩よりも都心で世界を変えるために動き出す」そんなようなことを言っていた。

次期運営メンバーと、変人学部を作りたいと中央大を訪ねてきてくれた関学大生㊥

 これまで何度も「変人こそが世界を変える」と私は言ってきた。だが、大切なことは、まず自分の身のまわりから変えていくことだと思う。もちろん大学でなくてもいい、それぞれにとっての身の回りから始めることが大切だと思う。それが世界を変える第一歩だと私は思う。

 変人学部はこれからも、そんな世界を変える仲間たちを増やすべく活動していく。私たちの「授業」を大学の正式な授業にする。ラジオ局と連携したり、YouTubeを用いたりして、変人たちによる番組を放送する。変人奨学金にゲストハウスやシェアハウス、コワーキングスペースにシェアオフィスなどの機能を兼ね備えた「変人ハウス」。変人学部を全国に作り、変人学会を開く構想など、様々な今後の展望を考えている。それでもやはり謙虚に、初心を忘れず、まずは身の回りから「世界を変える」をはじめていく、そんな私たちでありたい。変人学部はいつでも、みなさんのご入学をお待ちしています。

 この連載は今回で終了します。

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