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和える(aeru)の夢(4)文化と経済が育み合うビジネスモデルに挑む

和える(aeru)の夢(4) 文化と経済が育み合うビジネスモデルに挑む
authored by 矢島里佳和える代表

 経済が経済だけで回り続けると、経済は小さくなってしまい、成長することが難しくなる――。日本経済史をひも解くと、1990年代のバブル崩壊は、すべてを物語っています。私の生まれた直後、学生のみなさんにとっては生まれる前に起きた話ですが、過去の歴史的な事実から何を学び、どう今に活かすべきなのでしょうか。

文化あってこその経済、経済あってこその文化

 私がもっとも学んだことは、文化があってこその経済で、経済があってこその文化であるということです。みなさんのお家には、いくつのコップがありますか。1つしかないという方は、おそらく殆どいらっしゃらないのではないでしょうか。少なくとも1人平均5~10個のコップをお持ちではないでしょうか。湯呑み、ティーカップ、コーヒーカップ、お水を飲むコップ。大人になると、日本酒のお猪口やワイングラス、ウィスキーグラスなどなど、増えていきますね。

 みなさんが生命を維持するために水分を補給していればよいという状態でしたら、こんなにコップはいらないはずなのです。けれども私たち人間は、いくつものコップを所持します。なぜか。そこに文化が関係しているのです。

愛媛の和紙職人を訪ねた際に記念撮影(右から2人目)

 お茶をより美味しく飲むためにはどんな形のコップが相応しいだろうか。より美味しく感じるだろうか。ワインをより美味しく飲むには? 日本酒をより美味しく飲むには?......。先人たちはただ飲めればよいではなく、飲むということ自体を愉しもうとしてきたのです。そして、愉しむために様々なコップの形を考えだし、飲み物に合わせてその形を増やしてきました。

 飲み物をより美味しく頂くという文化を生み出してきたからこそ、私たち人間は多くのコップを必要とするようになったのです。つまり、飲料を愉しむという文化があってこそ、多くのコップが必要となり、経済が活性化するのです。もし、この文化を失うと、おそらく必要なコップの数も減り、経済も同時に減退していきます。

モノを売るのではなく、モノとの暮らし方提案

 こんなにも身近なところで、文化と経済は密接につながっているのです。私はいつも、文化が経済を育て、経済が文化を育むと考えています。和えるが販売する"0から6歳の伝統ブランドaeru"は、赤ちゃんや子どもの時から使えるオリジナルの伝統産業品です。本質はモノを販売することではなく、モノを通して日本の伝統を伝えることにあります。ですから、よく小売業に分類されるのですが、私たちはジャーナリズム業だと捉えています。

 経済のためにモノを売るのではなく、日本の伝統を幼少期から自然と知る機会を生み出す、感性を育むモノたちとともに暮らす暮らし方の提案をしたい、という思いのもとで、和えるは誕生しました。

愛媛の砥部焼職人の工房で、器の釉薬(うわぐすり)がけに挑戦

 そもそも経済のためではなく、日本の伝統を次世代につなぐという文化を育むために経済が必要であり、経済がゆるやかにでも継続していくためにも、この文化が必要であるという考えに基づいて始まっています。「aeru room」や「aeru re-branding」、「aeru oatsurae」など、和えるを土台に様々な事業を展開していますが、すべてに共通しているのは、文化と経済が共に育み合うような関係性において成り立つビジネスモデルだということです。

 私がビジネスモデルを生み出す時、ビジネスモデルを生み出そうとして生み出していません。ある時、様々なピースが集まっていることに気が付き、そこで、「こんなに必要なモノが目の前に広がっているのだから、ビジネスという手法を用いて取り組んだほうが、長期的に責任を持って続けられるのではないか」と考えたり、感じたりするわけです。その中から、新たな事業が生まれてくるような感覚なのです。

「三方よし」の起業家精神、先人の知恵に学ぶ

 「この子(新しい事業)は長生きするかなあ」と見極める3つの大切なことがあります。1つ目が、日本の伝統を次世代につなぐという創業の想いに沿っているか。2つ目は、悲しむ人がいない三方よしになっているか。そして3つ目が、文化と経済が両輪で育まれていくか、です。

 「三方よし」と言うのは近江商人の言葉で、自分も相手も社会も良しであれば、その商売は長続きするという、まさに先人の知恵なのです。大学時代に起業し、働くということ事態が初めての私がなぜ7年間、和えるくんを育み続けてこられたのか、それはこの三方よしというシンプルな言葉に集約されていると感じています。

 大切なことの多くは、すでに先人たちが知恵として残してくださっています。新たなことを始めるときは、先人の知恵から学ぶことで、しなくて済む失敗をしなくて済みますし、その分新たに挑戦すべきことにより多くの時間を投資できるように感じます。

 日本は長い歴史を有する国です。先人たちが残してくださった、たくさんの知恵に溢れています。これはお金で買うことが出来ない宝物で、伝統産業や文化だけでなく、ビジネスの世界でも実は先人の知恵はとてもとても役に立つのです。和えるも、様々な先人の経験や知恵を学び、ビジネスモデルを生み出す際に活かさせていただき、今の時代の感性と和えることで、結果として概念的に新しい事業を生み出しているのだと思います。

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