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曽和利光の就活相談室自己分析のコツ=「幸せを感じるのはどんな時?」

曽和利光の就活相談室 自己分析のコツ=「幸せを感じるのはどんな時?」
authored by 曽和利光

 就活生の皆さん、こんにちは。人材研究所(東京・港)の曽和利光です。今回のテーマは「自己分析」です。2019年卒業予定の学生の方で、すでにインターンシップに参加している人も多いと思います。就職活動の初期といったところでしょう。今はまず自分がどういう人間か、きちんと自己分析することが大切です。その後の会社選びもスムーズに進みますし、面接の場で聞かれることもあります。

今回の参加者
▽中下智也さん(早稲田大学人間科学部3年)
▽松本卓巳さん(国士舘大学政経学部3年)

就活の初期段階では自己分析をきちんとすることが大切(模擬面接の様子)

 就活相談室ではこれから就活シーズンが本格化するまで、内定を目指す学生の皆さんに、本番さながらの模擬面接を体験してもらいます。リクルートなどの人事責任者として20年以上就活生を面接してきた経験をもとに皆さんにアドバイスいたします。実践的な内容を盛り込みますので、きっと役に立つはず。ぜひ参考にして、本番に臨んでください。

質問「どのように自己分析していますか」

中下さん 僕の強みはバイタリティーがあるところです。「思い立ったら行動」がモットーで、就活でも自分の目でいろいろと仕事について見てみたいと思い、業種もバラバラの20社ほどのインターンに参加しました。その中で自分に合う職業を考えた結果、今は自動車メーカーの営業が向いていると感じ、営業を主にできる商社かメーカーを考えています。

 ありがとうございます。面接官が自己分析で聞きたい要素は2つあります。1つは「can」。あなたは何ができる人なのか、ということです。もう1つは「will」。つまり意志です。このwillは、「営業をやりたい」「海外に行きたい」というような単なる希望ではありません。「何にモチベーションが湧くのか」「何をやったら幸せに感じるのか」を丁寧に説明するのです。

「can」だけじゃダメ

 もちろんcanの話をするのはとても大事です。面接官は「何ができるか」で人物を評価します。ただ自己分析というのはあくまで話す人の主観に過ぎません。「自分のいいところは○○です」と言われても、それは本人が思っているだけかもしれませんよね。そこで、willもセットにして聞きたいというのが面接官の本音です。

 中下さんの場合は、canしか言っていませんでした。willについては、確かに「自動車メーカーに就職したい」と言っていました。しかし、面接官は「志望業界はどこですか」「どんな仕事をしたいのですか」と質問した訳ではありません。あなたは一体何のために生きていて、何をやったら幸せに感じる人なのかを聞きたいのです。自分の歴史から考えてみてください。

中下さん 人を幸せにするのが好きだったので、人に尽くす職業に就きたいと思っています。高校生の時に、チアガール部の応援をしてくれと言われました。僕が筆頭になって30人集めて実行に移しました。そういうことに僕は生きがいを感じたことに気づきました。昔の彼女にも、尽くして喜んでもらえたのですが、尽くしすぎて振られてしまいました。とにかく人に喜んでもらうことが好きだと思います。

 人を幸せにすることが好きだからチアガールの応援をしたということですね。悪くはないですが、もう一歩です。なぜそういう人になったのかを答えなくてはいけません。「私はこういう人です。だからこういう場面でこういう風になりました」というのは「成果アプローチ」といって、面接官を説得する一つの手段ではあります。でも今回はここをもう少し掘り下げたいと思います。「そもそも何でそうなったのか」という、もっと根っこの生えた「歴史アプローチ」で攻めるのです。なぜ人を幸せにするような人になったのでしょうか。

中下さん 幼稚園のころから絵を書くのが好きでした。小学校でマンガを描いたところ、周りの友達が面白いと言ってくれ、僕のマンガが共有されるようになりました。図書室にマンガが置かれるようになったのです。本棚の1段が埋まるくらいの数です。みんなが僕のマンガを読んでくれたことがうれしかった。それがモチベーションになって、さらに描きたいと思うようになりました。私は人を楽しませるのが好きな人間です。

 とても良くなりました。歴史アプローチで模範解答に近づいたと言えると思います。

 それでは次は松本さんに自己分析をお願いします。

松本さん 自分しか知り得なかったことを普及させるのが好きです。ホテルでアルバイトをしていますが、多くのスタッフがテナントの営業時間など細かな情報を頭に入れていません。でも客から聞かれたときに、すぐにレスポンスできるかどうかが、気が利くかどうかのポイントだと思っています。私はオタク気質があり、マニュアルを読むのが好きなので、暇な時に読んでいて知識を蓄えておきます。客から聞かれて、すぐに答えられたときに喜びややりがいを感じます。

 松本さんも中下さんと同様、過去のことを一切言っていませんね。大学時代に何か実績を挙げたといっても、社会人から見ればたいしたことはありません。でも根っこが生えているものは、違います。1回限りの成果や、ある場面だけで発揮できたエピソードの場合は、話としては弱いのです。知らないことを覚えて蓄えていく。それが喜びになった根っこの部分は何ですか。

松本さん 1980~90年代の米国のテレビドラマ「冒険野郎マクガイバー」を見たことがきっかけです。主人公が科学の知識を使ってさまざまな問題を解決する内容で、すごいな、こうなりたいなと思いました。その後は戦闘機が好きになりました。世界の名機の設計者のインタビューを本で読んだ時に、問題点をどう解決したのかが書いてありました。物事に詳しい人になれたら面白そうだなと思いました。

 はい、ありがとうございます。松本さんもそのような歴史アプローチのエピソードでまとめてみると良いと思いますよ。

 「willは何ですか?」と面接官がストレートに聞いてくればいいのですが、ほとんどの場合、それは期待できません。でも自己分析についての質問は、自由に自分をアピールできる貴重な場なのです。

「キャッチボール」は期待しないで

「面接官が自己分析で聞きたいのは『can』と『will』です」(曽和利光さん)

 よく「面接はキャッチボールだ」という話を聞いたことがあると思います。確かに、皆さんがフリートークがとてもうまくて、面接担当者もあれこれ聞いてくれるタイプであれば、キャッチボールが成り立つかもしれません。しかし、面接担当者の全員が面接のスキルが高いわけではないのが実情です。

 特に大手企業の場合、1次などの初期面接には、万人単位の就活生が受けます。それをさばくために、営業現場などから面接の訓練を受けていない人が借り出されます。だから就活生から聞きたいことを引き出したり、突っ込んだりするスキルがないことが多いです。「自己分析してほしい」と言われた場合は、キャッチボールがないことを前提に、言いたいこと、伝えたいことをちゃんと全部言い切るほうがいいでしょう。

【自己分析のポイント】

(1)can(できること)とwill(何に幸せを感じるか)、2つのエピソードを盛り込む。

(2)willは、「成果アプローチ」と「歴史アプローチ」の2つの側面から分析する。

曽和利光(そわ・としみつ)
 1971年生まれ。京都大学教育学部卒。リクルート人事部ゼネラルマネージャー、ライフネット生命総務部長などを経て2011年、主に新卒採用を対象にしたコンサルタント事業の人材研究所を設立。著書に「就活『後ろ倒し』の衝撃」(東洋経済新報社)、「『できる人事』と『ダメ人事』の習慣」(明日香出版社)などがある。

[日経電子版2017年12月5日付]

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