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20年後から見る職選び(5)未来のエネルギー担う企業は?

20年後から見る職選び(5) 未来のエネルギー担う企業は?
authored by 戸崎肇首都大学東京特任教授・経済学者

 2011年に発生した東日本大震災、それに伴って起きた福島第一原子力発電所のメルトダウン、それがもたらした膨大な被害は、東京電力のイメージに大きなダメージを与えました。それまで、東京電力といえば、エネルギー産業の枠を超え、全産業的にも超人気企業で、エリートがこぞって志望する会社でした。それが、キャリタス就活2018のランキングでは、電力部門では中部電力がトップでやっと114位、ガスなども含めて、エネルギーは軒並み元気がありません。

 確かに、こうした新卒者を対象とした就職先希望ランキングは、その時々の流行に左右されやすく、依然として福島で避難生活を強いられている人々が多く存在し、それが報道される機会もまれではない現状では致し方のないところかもしれません。

 では、すでに社会経験を積んでいる人々がどう思っているかを、DODAが行った2017年の転職先人気ランキングで見てみると、ここでも東京電力は94位止まりです。どうも電力産業は相当嫌われてしまったようです。

電気の安定供給は不可欠

 しかし、電気なしでは現代社会は成り立ちません。特に情報化が進めば進むほど、電力の不可欠性は強まっています。いくらIoT(Internet of Things)といっても、電力がなければうまく機能しません。このことは、普段、スマートフォンの充電に追われていることを思い出せば理解できるでしょう。大都市で短時間でも停電が起きれば、信号は動かなくなるは、エレベーターは止まるはなど、大混乱になることは必至です。

 ガスも同様です。効率的に加熱するための手段としてガスはとても重要です。普段の調理で、ある部分は電力で補えても、火力がなければどんなに調理が不便になるか想像できるはずです。

 ただ、福島の事故が改めて提起した問題は、いかに安全にエネルギーを生み出すかということです。もちろん、ここでは原子力発電の是非について激しい議論が行われることになります。

 一方、石油がいつか枯渇することは確かです。これまでにも石油が枯渇することについての警鐘が何度も鳴らされてきましたが、掘削技術の向上などによって採算的に採掘可能な石油埋蔵量が増大し、石油は現在まだ、エネルギー源の中心に鎮座しています。でも、これから20年から30年先となってくると、インドなど、新興国の爆発的な経済発展、人口増大などもあり、さすがにその枯渇問題についても相当な危機感を持って取り組まなければならない状況になっているでしょう。その時、どのように日本、あるいは世界全体にエネルギーを供給していくかは、極めて重い社会的使命となります。

 なお、電気自動車の開発も進んでおり、注目の分野ですが、廃車時のバッテリーをどう処理するか、などの課題も残っています。

 安全性の確保と同時に環境問題への配慮も必要です。現在、盛んに「クリーン・エネルギー」ということが言われています。石油や石炭といった化石燃料は、燃焼すると、地球を温暖化させる原因となるCO2を放出します。天然ガスは石油や石炭に比べれば環境にやさしいのですが、それでもCO2の発生は免れません。

 そこで一時注目されたのが水素エネルギーです。水素の場合には燃焼しても水ができるだけでCO2の排出はありません。しかし、その取扱いが難しく、ちょっとした不注意で大爆発を生じさせる危険性があります。そのこともあって、現在でもなかなか実用化は進んでいません。

風力発電は各地で取り組みが進む

風力発電、無駄のない送電課題

 自然エネルギーの分野もあります。地熱発電や風力発電といった分野です。日本は火山帯に属していますので、地熱発電の可能性は大きいでしょう。風力発電に関しても、各地で取り組みが進められています。ただし、地熱発電の場合もそうですが、発電した場所は都会から離れている場合がほとんどなので、どこまで無駄のない送電を行うことができるかが問われることになります。

 ちなみに、ある風力エネルギーに関する専門家のお話をお聞きしたことがありますが、日本で最も安定的に強い風が吹き、風力発電に適している場所は北方領土であるとのことでした。当該地域の帰属問題は今でも難しい問題ですが、エネルギー面で大きな可能性を秘めていることも、この問題の解決を難しくしている要因となっているようです。

既存企業も体制強化

 専門家の中には、いかに自然エネルギーの可能性について注目すべきであるとはいいながら、それだけで現存のエネルギー需要を満たすことは無理だと指摘する人もいます。これからますます世界的な経済発展が進むとするならば、既存のエネルギーの生産体制と、自然エネルギーの両面について、供給体制を強化していかなければなりません。ですから、この分野はこれからも重要性は不変であり、そこで働くことは、安定的な発展のもとでの雇用確保の期待が持てると同時に、社会的に貢献できるというプライドも満たすことができるでしょう。

 さらには、規制緩和によって個人単位でも売電ができるようになっていることに注目すべきです。太陽光発電など、自宅をベースとして電力を生産し、それを売却することが可能になっているのです。つまり、ここでもベンチャー精神が発揮できるのです。従来は巨大な生産設備の設置が必要であったエネルギー産業も、これからは個人単位でも、売電によって生活を支えていくだけの収入が得られるようになるかもしれません。廃棄物を回収し、そこから効率的にエネルギーを抽出することができれば、環境問題の解決にも大きく貢献することができます。つまり、エネルギー産業は、既存の企業で働いても、またベンチャーとして道を切り拓くにせよ、今後ますます面白い分野になっていくでしょう。

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