ダムのコンシェルジュになっちゃった
八ッ場に恋したダム女子たち(2)
こんにちは! 前回に引き続き、私たち跡見学園女子大学篠原ゼミの学生が取り組んでいる「八ッ場(やんば)ダムプロジェクト」の内容を紹介していきます。私たちは群馬県長野原町にある八ッ場ダムとその周辺地域を観光で盛り上げるプロジェクトを行っています。昨年4月に4つのグループを設け、それぞれが同時進行で活動してきました。その中の「やんばツアーズ・女子大生コンシェルジュ&ジオパークプロジェクト」(4年生3人、3年生5人、2年生4人)のリーダーを務めました副ゼミ長の岩本真由子が、今回の原稿を担当いたします。
長い名前のプロジェクトが始まった
私たちのグループの長いプロジェクトの名前から、どんなものか想像がつきますか? 4月にこのプロジェクトをゼミの篠原先生から告げられたとき、私はまったくイメージできず、「具体的に何をすればいいのか、そんなグループのリーダーなんて務められるのか」ととても不安でした。
しかしその数カ月後にはダムの現場に立って、グループリーダーとしてみんなをまとめ、長野原町の方、八ッ場ダム工事事務所の方と手を取り合って八ッ場ダムを日本一のダム観光の地にするために、全力でプロジェクトに取り組んでいました。グループでは昨年8月下旬から9月上旬にかけて計3回、長野原町で合宿し、フィールドワークを行いました。合宿で私達が行ったことを紹介しましょう。
ダムコンシェルジュっていったい何?
私たちはまず、ダムコンシェルジュに参加しました。ダムコンシェルジュとは八ッ場ダムに見学に来たお客様を、現地でガイドする仕事です。昨年4月に国土交通省の八ッ場ダム工事事務所の主催で始まった無料の見学ツアー「やんばツアーズ」での案内役で、地元にゆかりのある若い女性の方4人が、お客様に八ッ場ダムや周辺地域の魅力を楽しく、分かりやすく説明しています。ダムにこのようなコンシェルジュがいるのは、八ッ場ダムだけなんです。
「やんばツアーズ」では現在、個人向けと団体向けの計10本のツアーが実施されています。個人向けでは、例えば町内での滞在を伸ばすため、夜間にしか見ることのできない「ホテル観賞と夜間の工事見学会」といったダム見学ツアーを実施しています。団体向けは、一般向け・インバウンド向け・マニア向けなどお客様のニーズに沿った、「建設中のここでしかみることのできない」ツアーを行っています。
やんばツアーズを実施した結果、昨年4月のダムへの集客数は前年4月の4倍にもなったそうです。ツアーは多くのマスコミでも紹介され、八ッ場ダムの観光客は今後、ますます増えることが予想されます。しかし、現役のダムコンシェルジュさんはたったの4人しかいません。そこで私たち自身が臨時の「女子大生コンシェルジュ」となって、八ッ場ダムの魅力を発信すると同時に、地元の方にも八ッ場ダムのことをもっと知っていただき、ダムコンシェルジュにもどんどんなってほしいと考えたのです。
暗記して話すだけではお客様に伝わらない
私たちのプロジェクトメンバーは全員がダムコンシェルジュを体験しました。コンシェルジュの主な仕事はお客様の前で八ッ場ダムの建設状況を説明することですが、その際にはダムの近くにある吾妻渓谷など町の観光資源にも触れ、お客様に町への関心も高めてもらうことも必要です。
実際、ダムコンシェルジュを経験してみると、聞いてくださるお客様の心を掴み、ダムや地域の魅力を伝えることがいかに難しいか、痛感しました。どんなに原稿を細かく覚えても、聞いている人に響くような伝え方をしなければ意味がありません。私は原稿を完璧に覚え、できるだけ前を向いて伝えようと必死でした。しかし、終えてみるとお客様に八ッ場ダムの魅力を本当に伝えられたのだろうかという、もやもやした気持ちが残りました。他のメンバーも同様だったと思います。
それに対し、現役のダムコンシェルジュさんは伝え方が私たちと大きく違いました。一人ひとりに個性があり、八ッ場ダムについてお客様が「知りたい」「聞きたい」と思うところを重点的に伝えて、聞く側の心をしっかりと掴んでいました。私たちのように原稿を覚えて正確に伝えようとするだけではダメなのですね。
それでも、グループのメンバーは伝え方の研究を重ね、合宿の最終日には始めた頃と全く違う「伝わる」ガイドがある程度はできたと思います。ということは、現地の方も練習と工夫を重ねれば、現役のコンシェルジュさんのようなガイドできるのではないでしょうか。やんばツアーズを回していくためにも、現地の方がどんどん、このコンシェルジュに参加していただければと思います。
ユニフォームやヘルメットの改善提案が実現
次は、ダムコンシェルジュのブランド化に向けて、私たちが八ッ場ダム工事事務所に提案した内容です。具体的には、「こだわりのホスピタリティ構築」、「ユニフォームの新しいデザイン提案」、「ツアー特典のこだわり」の3つです。合宿中にダムコンシェルジュの方や八ッ場ダム工事事務所の方と行った「本音の交換会」という会議でお話ししました。
まず1つ目の「こだわりのホスピタリティ構築」は、ダムコンシェルジュ体験を通して気付いた新たな対応についてです。現状では、八ッ場ダムなどについての解説はコンシェルジュによる言葉だけです。そこでより分かりやすくするために、お客様に写真付きの資料をラミネート加工して配布することを提案しました。
2つ目は「ユニフォームの新しいデザイン提案」です。ダムコンシェルジュという「ここだけ感」を大切に、デザインを考えました。コンシェルジュの今のユニフォームはツアーの案内役という感じがあまりなく、見学者の服とも紛れて目立ちにくいという印象があります。そこで、八ッ場ダム工事事務所の方、デザイナーの今城由樹さんも交えて、制服デザイン案についての会議をしました。その結果、八ッ場ダムとの統一感やダムコンシェルジュらしさを出すデザインができ上がりました。現在、実現に向けての具体的な話を進めています。
3つ目の「ツアー特典のこだわり」では、私たちの女子大生目線で、見学者が楽しめそうなツアー特典を提案しました。特に、注目してもらいたいのが「新・ヘルメット」です。ダムの見学中は安全のためヘルメットをかぶります。そのヘルメットをカラフルな色にすることで、子供から大人まで見学をより楽しんでもらえると考えました。これらのアイデアは、2018年4月からの新年度のやんばツアーズで実際に導入される予定となっています!
私たちは八ッ場ダムがどこにあり、長野原町がどんな町なのか、何も知りませんでした。それが今では、ダムコンシェルジュを体験し、長野原町や八ッ場ダムのことも大好きになっています。ダムコンシェルジュのブランド化へ向けて、国土交通省工事事務所の方や地元の方と会議を重ねて、ユニフォームやヘルメットのように実際の形になるものができて、とてもうれしく思います。
次回は八ッ場ダムに近い川原湯温泉のブランド化などについてです。みなさんお楽しみに!
(跡見学園女子大学 篠原ゼミ3年副ゼミ長 岩本真由子)
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