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港区の社長 私生活のぞいてみた

港区の社長 私生活のぞいてみた

 区民の10人に1人が社長――。東京商工リサーチの調査によると、東京都港区は、人口に占める社長の割合が9.9%に上る。もちろん23区でトップ。なぜ港区? どんな生活しているの? やじ馬根性を発揮して、そんな社長たちに会いに行ってきた。

人を招き、オン・オフ満喫

 2017年の11月中旬。夜のとばりが下りた東京都港区の赤坂。ライトアップされキラキラと輝く東京タワーを一望できる高層マンションの44階のラウンジで、男性は3人の女性と語り合っていた。

自宅マンションのラウンジで仕事関係者とくつろぐプレイライフの佐藤太一社長(東京都港区)

 まず1人目の社長はこの男性、メディア運営のプレイライフ(東京・港)の佐藤太一社長(35)だ。ここは自宅マンションの居住者用のラウンジで、この日は会社関係者と一杯。ラウンジにはバーが併設され様々なドリンクが注文できるほか、マンション内にはカラオケやパーティールームなどもあるという。

 デートコースなどを紹介するウェブサイト「プレイライフ」を運営する同社。社員はチームで動くよりも、個人商店的な働き方をしているため「リアルで集まれる場が大事」(佐藤社長)。そんな場所として佐藤社長が選んだのが港区だ。以前は品川区の天王洲に住んでいたが「遠くて呼びづらかったため会社のある港区に引っ越した」。

 3A(スリーエー)――。港区のなかでも特に人気のエリア、青山、赤坂、麻布。その頭文字をとって不動産業界では長年こう呼ばれているという。土地や物件価格が「他が下がっても下がらないエリア」(月刊誌『都心に住む』の江原亜弥美編集長)だ。

休日に社員らとバイクのツーリングを楽しむ清水嘉夫AZEST社長(手前右)

 ここにも3Aに住む社長がひとり。週末、投資用不動産のAZEST(東京・豊島)の清水嘉夫社長(53)に会いに行くと、社員らとバイクで熱海までツーリングに出かけるところ。途中でメンバーが合流し一泊するという。

 清水社長が4~5年前に家を建てたのも赤坂だ。エレベーター付き4階建て。「特にこだわったのは10人は入れる和室。居酒屋みたいな感じにした」というように、そこは掘りごたつ。高級飲食店の個室の雰囲気だ。

 ここに社員たちが時折やって来て、飲んだり焼き肉をしたり。「引っ越して一番よかったのは人が集まること。千葉、神奈川、埼玉など、どこに住んでいる社員も集まりやすい」。社員との距離や社員同士の距離は近くなり、スキーやウインドサーフィンなど休日の集まりも増えた。

 さらにもう一つ。飲食店も多く、アクセスもいい赤坂で接待することも多い。そんなとき、取引先に「『家に来ますか?』と言うと喜ばれる。日本人は自宅を見せることってあまりない。その分、家に呼ぶと特別感があり親密度があがる」。人を呼ぶ街、港区はその関係性を密にする。

朝からステーキ食べる

 続いては麻布十番へ。11月のある朝、こちらも東京タワーを一望できるマンションを訪ねると、人材紹介のBNGパートナーズ(東京・千代田)の蔵元二郎CEO(42)は、100グラム990円の黒毛和牛ステーキを食べていた。「うんうん。おいしい」

東京タワーが見える自宅で朝食にステーキを食べるBNGパートナーズの蔵元二郎CEO

 朝にステーキを食べてプロテインを補給するのは、体重管理を徹底している蔵元CEOの日課だ。出身は鹿児島県。現在の約70平方メートルの賃貸マンションに引っ越して9年目になるが「起床してすぐに東京タワーを見れば、東京で勝負するエネルギーをもらう」。東京の中心、港区はトップの心をも奮い立たせる。

 行きつけの店は看板も出していない会員制バー。焼酎を2杯飲めば、お会計が8000円の高級店だが「企業経営者や芸能人に会い、話ができて楽しい」。赤ちょうちんから高級バーまで様々な飲み屋がひしめくことも、同区を選んだ理由の一つという。

 「(JRの田町と品川駅間に)新駅もできるし、まだまだポテンシャルがある」。ITサービスのシンクスクエア(東京・港)の田中健一社長(41)が住むのは、区内でも現在進行形で再開発が進む芝浦エリアだ。約3年前、高層マンションに引っ越してきた。

 この日、娘(3)とハンモックに揺られながら見ていたベランダからの眺めは、遮るものは何もない。以前は港区の白金高輪エリアに住んでいたが「海を見ながら生活してみたいと、内覧した日に即決した」そうだ。

ベランダのハンモックで子供とくつろぐシンクスクエアの田中健一社長

 たまたま見た住宅展示会に触発され、リフォームも決断。11月中旬から「壁も全部はがして一から作り替えている」。完成は18年2~3月の大がかりなリフォームの内装はほとんどを田中社長が描いた。2LDKを3LDKにするほか、特にこだわるのはお風呂。32インチのテレビを付けたり、打たせ湯を作ったり。社長業は「体が資本なのでお風呂と寝具にはお金をかける。やりたかった夢をつめこんだ」。

 川崎市育ち。自宅の引っ越しと同時に、会社も千代田区の神保町から港区に。「会社の住所、港区はやっぱり響きがいいです」。若い頃「夜中ラジオを聞いていて、はがきの宛先で『東京都港区......』という響きは憧れだったんですよね」。

 港区、しかも社長。さぞかし派手な生活を送っているのかと思ったが、実際はお金に物を言わせて豪遊しているわけじゃない。もちろん、住まいや持ち物などはすごいが、それよりも、プライベートで大切にしているのは、人に会ったり、思いっきり遊んだり、体をいたわったり。真のリア充を見た気がした。

憧れの職住近接

 最近のとあるテレビ番組。某社長を始め、有名人とお付き合いするタレントの紗栄子さんに、芸人さんたちが「どこで知り合うの?」と尋ねていた。そのとき紗栄子さんは一言。「港区とか......」

 東京商工リサーチの調査によると、社長が多く住む街の1位は3Aの一つ、港区赤坂で、2488人が住んでいる。10位までに港区は5つの町がランクイン。「かつては(大田区の)高級住宅街の象徴、田園調布などが上位にあったが、アクセスのいい東京都の中心に集まってきている」(東京商工リサーチ)

 港区人気は社長に限ったことではない。リクルート住まいカンパニーの調査によると、「住みたい行政市区ランキング(関東)」で、港区は2年連続で1位だ。2位は世田谷区、3位は目黒区と続く。「共働きが増え、職住近接がより重視されている。購入時に資産価値を考慮する傾向も強まっている」(『都心に住む』の江原編集長)

 一方、総務省の「市町村税課税状況等の調」によると、港区の住民1人当たりの所得は1100万円超。最下位の足立区(335万円)とは3倍以上の差があり、23区の中でも断トツの高さだ。

 「のみの市」も港区の場合はひと味違う。10月22日、森ビルが開催する「赤坂蚤の市」には、アンティークの食器やファブリックなどを扱う約90店が出店していた。その値札をみると、数千円はざら。中には50万円ほどの絵画もあり、客単価は4千円。散歩途中に買い物していた地元の主婦(43)は「いつもおもしろい発見があり、何か買ってしまう」そう。

 政治の中枢やオフィスの集まる千代田区、銀座などの商業地を抱える中央区に対して、港区は「オフィスもショッピングもあり、六本木などの『遊』のエリアも備える」(江原編集長)。大使館も多いため国際色も豊か。トレンド発信地としてのポジションも確立している。
(井土聡子、ゼンフ・ミシャ、二村俊太郎、角田康祐)[日経MJ2017年12月1日付、日経電子版から転載]

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