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和える(aeru)の夢(5)好きなことを、まず10年続けるためには

和える(aeru)の夢(5) 好きなことを、まず10年続けるためには
authored by 矢島里佳和える代表

 人生100年時代。100年も生きられる可能性があります。人類史上、こんなことってあったのでしょうか。おそらくあり得なかったと思います。

 昔の人が今を生きる私たちを見たら、不老長寿の薬を飲んだ人たちに見えるかもしれません。自分の世代に起こりうること、そしてすでに起き始めていることにもかかわらず、人類はここまで進化したか......と、なんだかまだどこか信じがたいところもありますが、時代の転換期を生きる私たちは、この事実も受け入れなければならないのです。

20歳の私を突き動かした一言

 仮にみなさん、100歳まで生きられるとしたら、どのような人生を送りたいですか。

 私は少なくとも、100年間自分に嘘をつき続けることはしたくありません。100年間、自分の気持ちに素直に生き続けたいと思っています。これだけ長いと、自分の気持ちに嘘をつきながら生きていると、辛くなってしまうと思うのです。

 自分の気持ちに耳を傾け、素直に生きるためには、2〜3年で物事を考えると上手くいきづらい気がしています。寿命が伸びた分、事を成すことについても、より中長期的な視野で考えた方が、長寿時代の新たな世界を見ることができるのではないでしょうか。それは、この長寿時代に世界一の長寿国日本に生まれたからこその、特権だとも思えるのです。

京都府の農家できゅうりの収穫体験を楽しむ

 私が20歳のときからお世話になっている方が、おっしゃった言葉があります。

 「10年好きなことをやり続けたらいいよ。たとえ失敗し続けたとしてもまだ30歳。そこからまた新たにスタートしたらいい。だから、10年好きなことをして生きていったら良いよ」

 この言葉はもっともだなぁと思い、10年間好きなことをし続けて生きられるか、ある種の実験を行ってきました。そして、この夏に30歳を迎える今、10年間好きなことをして生き続けてきたと、胸を張って言える人生を過ごしてくることが出来ました。

社員も一緒に「白鳥」目指す

 これは私一人の力ではなく、今までにお会いしたすべての方々のおかげです。けれども、改めてこの10年という月日を振り返ると、私自身の続ける努力もまた、求められてきたと感じるのです。

 私はこの10年間、好きなことを継続する努力をし続けてきたと思います。「10年好きなことをやり続ければいい」。簡単そうに聞こえますが、「それはやめた方がいいよ」「こうした方が良いのでは」など、周囲から様々な声が聞こえる中で、自分が信じたことを淡々と貫くには、実は強い意志が必要です。生き方の太い柱をまっすぐ保ち続けることができるよう、水面下で努力し続けなければならず、中途半端な気持ちでは出来ないのだと実感しました。

 幹は太くまっすぐに。そして、その太い幹を支え続けられるように、根は地中深くまでしっかり張る。けれども周辺の枝葉は柳のようにしなやかに。そのようなイメージを持って、この10年を生きてきたように思います。

 そしてもう一つ、大切にしている言葉は、「白鳥であれ」。

 一見涼やかな顔をして、湖面をすーっと泳いでいるというより、滑っているように見える白鳥ですが、水面下では一生懸命に足を掻いているのですね。ジタバタ、ドタバタせず、すーっと湖面に浮かび上がり続ける努力を、まさに水面下でしているからこそ白鳥は美しい。渡り鳥の白鳥は、越境のとき、かなりの飛行距離にもかかわらず、飲まず食わずで目的地に向かって飛び続けるのです。社員にも「白鳥であれ」と言い続けてきていますし、私もまた白鳥を目指しています。

素直な生き方、職人さんの背中見て学ぶ

能観賞の記念で能装束に袖を通した(東京都内の能楽堂)

 私が10年間このように生きてこられたのは、なぜだろうかと改めて考えてみました。それは、自分に素直に生きている大人の背中を、10年間見続けながら生きてこられたからだと思いました。

 その素敵な大人の背中の持ち主の多くは、職人さんたちでした。職人さんというお仕事をされている方々は、自分に素直に生きている、生き続けている大人たちの割合が非常に高いと感じました。何十年も自分の気持ちに素直に生き続けている輝く大人の背中を、私はたくさん見続けてきました。だからこそ、自分もそのようにありたいと、自分の気持ちに素直に生きるための努力が苦にならなかったように感じます。

 「頑張る」のではなく、「努力」。「頑張る」は、我慢したり無理をしたりする意味合いが強く、長続きしにくいと感じます。一時の「頑張る」ではできないことがたくさんあります。一方「努力」は、目標に向かってコツコツと積み重ねていくイメージ。だから誰でもできることだと思うのです。

 私はあまり「頑張る」ことができるタイプではないので、スーパーマンみたいにすぐには結果を出せません。以前もお話した、分析・仮説・検証・実証という一連の流れを、何度も何度も繰り返しているうちに、いつかできるようになるのです。

 いつできるようになるのかは、自分でもわかりませんが、やり続けることで誰でもできるようになります。「頑張る」を続けると自分も辛くなると思うのです。もしも今、頑張り過ぎて、疲れてきているなぁと思う人がいたら、頑張るのをやめてコツコツ努力をしてみてはいかがでしょうか。まずは10年、そして100年を、自分に素直に生きるために。

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