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老後資金、自分で準備? 長寿化で貯蓄・運用が重要に

老後資金、自分で準備? 長寿化で貯蓄・運用が重要に
「つみたてNISA」をテーマにした投資セミナーが相次いで開催されている(東京都千代田区)

 「つみたてNISA」が2018年から始まるのね。長期の積み立て投資の税金が優遇されるそうだけど、なぜ政府はこういう制度を始めるの? 老後資金は公的年金に頼らず自分で準備すべきなの?

 2018年1月に始まる積み立て型の少額投資非課税制度「つみたてNISA」について田村正之編集委員に話を聞いた。

――どんな制度ですか。

 「少額をコツコツ投資する利益が非課税になる仕組みです。年40万円までの元手で投資信託を積み立て購入すれば、20年間は値上がり分や分配金に課税されません。37年までに始める投資が対象で、累計で最大800万円を非課税で運用できます」

 「今も、年120万円までの元本の運用益が非課税となる一般NISAがあります。ただ非課税期間が5年間と短く、長期投資するには使い勝手がよくありません。つみたてNISAは、資金は少ないけれど運用できる期間は長いという比較的若い資産形成層に使いやすい仕組みです」

 「対象は基準を満たす株式投信や上場投信で、13日時点で132本あります。購入時の手数料が原則無料で運用中のコストが低く、幅広く分散投資するものに限られます。高齢者に人気の、運用成績にかかわらず分配金が毎月出る投信は対象外です。一般NISAはこうした条件がなく個別の企業の株にも投資できるので、大きく違いますね」

――どうして国が長期積み立て投資を支援するのですか。

 「自助努力での資産形成を促すためです。厚生労働省の推計では、50年には男性の4人に1人が93歳、女性は98歳まで生きるようになります。人生100年時代を迎え、それだけ老後資金が多く必要になります。一方で公的年金は実質的には減る可能性があります。足りない分は自分で何とかしなくてはなりません」

 「もちろん老後資金に限らず、住宅・教育資金をNISAで備えることも可能です。税制優遇が大きい資産形成の仕組みには個人型確定拠出年金(愛称イデコ)もありますが、イデコは積み立てたお金を60歳まで引き出せません。つみたてNISAはいつ引き出してもいいので、子供が生まれたときに始め、大学入学時に使うこともできます」

――預貯金だけではだめなのですか。

 「日本の家計の金融資産は米国などに比べ現預金に偏っています。これまで20年ほど日本では物価が下がった時期が長く、預貯金の金利がゼロに近くても大丈夫でした。でも今後は働く人が減るため賃金を上げざるを得ず、物価も上昇する可能性があります。金利が物価ほどには上がらなければ、例えば20年後に1000万円が必要だからと預金を続けても、20年後の1000万円の価値は現在より目減りしてしまい、足りません」

 「一方、株式という資産は物価上昇に比較的強いことが知られています。物価が上がる時期には企業は製品やサービスの価格を上げられ、利益を増やしやすいからです」

 「ただし一つの企業に集中的に投資すると、運悪くつぶれるかもしれません。多くの企業、世界全体に幅広く分散することが大事です。投信なら少額で幅広い国の株式に分散投資できます。例えば、もし先進国の株価に連動する投信に積み立て投資していれば、17年9月までの20年間に投資したお金は円ベースで約2.3倍に増えていました」

――なぜ長期投資する人が少ないのですか。

 「日本の投信の平均保有期間は約3年と短く、株式投資も短期売買が主流です。金融機関は長い間、株や投信の売買時に顧客が払う手数料で利益を得てきました。少額を低コストの金融商品にコツコツ投資し長期に持ち続ける方法は、利益が少ないためにあまり勧められなかったのです。個人の側にも投資は怖いというイメージが強く、長期投資が根付きませんでした」

 「一般NISAの導入時に比べ、金融機関がもうからないつみたてNISAのCMは目立ちません。裏を返せば、金融機関があまり勧めないものは、投資する人にはコストが安くてありがたいとみることもできるでしょう」

■ちょっとウンチク
心理のワナ避ける積み立て
 投信評価会社モーニングスターによると、運用担当者の腕で市場平均を上回ることを目指すアクティブ型の日本株投信の成績は、17年3月までの10年間をならすと年マイナス0.04%。だが、同じ投信を持つ人の平均損益はマイナス3.03%とさらに悪い。市場のムードが楽観的になる高値の時期に買い、悲観的な安値の時期に売ったためのようだ。
 一方、同じ金額で毎月、積み立て投資する確定拠出年金専用の投信では、同じ期間の投資家の平均損益は年3.78%のプラスだった。同じ金額なので高値圏では少ししか買えず、安値圏では多く買い続けた効果が表れた結果だ。積み立て投資には「高値づかみの安値売り」になりがちな心理のワナを避ける効用がある。

(編集委員 田村正之)[日本経済新聞夕刊 2017年12月18日付、NIKKEI STYLEから転載]

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