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アフリカで働けますか 女性起業家が積極的な理由

アフリカで働けますか 女性起業家が積極的な理由
ウガンダで起業した仲本千津氏。現地の女性らと布バッグを製造・販売

 日本を飛び出し、アフリカで起業する日本人女性が相次いでいる。現地の人と組んで農産品や民芸品を輸入したり、アフリカに進出する企業向けにコンサルティングをしたりと分野は様々だが、共通しているのは、それまでのキャリアで得た経営や専門の知識を生かして起業している点だ。経済界からも若手のアフリカ起業を後押しする動きが出ており、今年はアフリカ女子が脚光を浴びそうだ。

ガーナ版の「楽天」を起業

 「誰のどんなニーズをその商品で満たそうとしているのか、そこをもっとはっきりさせたほうがいい」「とりあえず、健康意識の高い若いビジネスウーマンをターゲットにしたらどうか」

 2017年11月下旬、東京・港区の森永製菓本社内で、森永の商品開発担当者らとVIVIA JAPAN(ヴィヴィアジャパン、東京・渋谷)の大山知春最高経営責任者(CEO、34)が、ガーナ産の植物由来の製品を日本市場でどう展開するかをテーマに、活発な議論を繰り広げた。

 ヴィヴィアは、ガーナと日本をつなぐをテーマにガーナ産の製品の輸入などを手掛けている。主に「モリンガ」というアフリカやインドなどに生息する栄養価の高い植物に関連した製品を取り扱っている。この植物は食品やサプリメント、美容液など幅広い用途があるという。ヴィヴィアは、2015年からモリンガ製品を輸入し、「JUJUBODY」のブランド名で販売。森永のビジネスプランコンテストに応募したところ、応募総数153件の中の6件に残り、優秀賞を獲得した。

 大山氏は成蹊大学を卒業後、みずほ銀行に就職。しかし、もともと外資系志望だったことから、2年弱で外資系金融機関に転職し、東京で海外投資信託のアドバイス業務を担当。バンコク支店に転勤後、経営の勉強をしようとオランダのビジネススクールに留学し、経営学修士(MBA)を取得した。

 授業でガーナ出身のビジネスマンと一緒にビジネスプランを作ったのをきっかけに、ガーナでの起業を計画。卒業後、その級友と首都アクラにマインドネット・テクノロジーズ社を設立し、ファッションサイトを立ち上げた。「ガーナにはオンラインショップがなかったので、日本の楽天のような事業ができないかと考えた」という。

がんを発症、コンサル会社に

 ところが、約1年後に舌がんを発症し、手術のため日本に帰国。舌がんは再発の可能性も高いため、しばらく日本に滞在することを決意。その間、収入を得るために日本でヴィヴィアを立ち上げ、現地で日常的に使用し、気に入っていたモリンガ製品などを、マインドネットを通じて輸入し、国内で販売を始めた。

ガーナで起業した大山知春氏。現在はコンサル業を手掛ける

 しかし、オンライン販売事業は売り上げが思ったほど伸びず、外国企業相手のコンサルティング会社に業態転換した。CEOは級友のガーナ人だが、大山氏も最高財務責任者(CFO)として経営に参画している。ヴィヴィアも、輸入業務のほかにガーナ進出を計画する日本企業向けのコンサルティング業務を掲げており、すでに何件かの問い合わせが入っているという。大山氏は「ビジネスを通じて日本とガーナのかけ橋になれれば」と抱負を語る。

 ガーナが西アフリカなら、東アフリカのウガンダで起業したのは、RICCI EVERYDAY(リッチー・エブリデイ、静岡市)の仲本千津最高執行責任者(COO、33)だ。独特のデザインや明るい色調が特徴のアフリカンプリントをあしらった布バッグを現地で製造し、輸入。国内の営業はCEOを務める母親に任せ、本人は2カ月ごとに日本とウガンダを行ったり来たりする生活だ。

ウガンダで起業 社員多くはシングルマザー

 仲本氏は早稲田大学から一橋大学大学院に進みアフリカの政治を研究。いったんは三菱東京UFJ銀行に就職したものの、東日本大震災を経験して「人間いつ死ぬかわからない。だったら、やりたいことを先送りせずにやろう」と、国際NGOの笹川アフリカ協会(現ササカワ・アフリカ財団)に転職。2年半後にウガンダ事務所に転勤になり、農業支援プロジェクトなどにかかわった。

 ウガンダで生活するうちに、マーケットで売られているアフリカンプリントに魅了され、それをあしらった布バッグを製造し、日本に輸出することを思いついた。最初は駐在員としての仕事をしながらボランティアでかかわっていたが、出来上がった製品の質の高さを見てこれはいけると確信し、退職して、16年7月に首都カンパラに現地法人を設立した。

 現地法人の社員数は現在14人だが、多くは生活が苦しいシングルマザーだ。06年まで内戦の続いたウガンダでは今も内戦の爪痕が深く残る。少年時代を兵士として過ごしたため、経済的な自立の術を持たない若者も多いという。仲本氏は、そうした若者にNGOなどと協力して職業訓練を施し、雇用を通じて自立の手助けをしたいと考えている。現地には実店舗も構えており、ウガンダでも事業拡大を目指す。「ビジネスモデルとしてうまく行けば、将来的には、アフリカの他の国にも事業を広げたい」と語る。

アフリカでも都市部中心に携帯電話が普及している(ケニアのナイロビ)

 日本の若手起業家のアフリカ進出を支援する動きも出てきた。16年には、世界的に活躍する若手起業家の育成や日本とアフリカの関係強化などを目的に、経済同友会のメンバーらが中心となり、「アフリカ起業支援コンソーシアム」を組織。アフリカで起業する若手起業家を選考し、資金援助をするプログラムを始めた。

アフリカで起業 男性より女性が積極的

 プログラムの選考運営員を務める渋沢健氏によると、プログラム初年度の16年は、15人の応募があったが、うち10人が女性。最終的に支援対象となった3人もすべて女性だった。その1人が仲本さんだ。17年も、16人の応募者の半分が女性。支援対象は女性と男性が2人ずつだった。

 女性が多い理由について、渋沢氏は、「男性はいろいろなしがらみを感じて、やりたいことがあっても一歩踏み出す勇気がない。その点、女性のほうが自分の気持ちに正直に生きている人が多いためではないか」と推測する。

 仲本氏は、「アフリカでも農村部は男尊女卑が色濃く残るが、都市部では女性に対する偏見や差別意識がなく、とても働きやすい。また、ベビーシッターの文化があり、子育てしながら働ける環境もある」と話す。実際、渋沢氏によると、コンソーシアムが支援している女性の中には、日本より子育てしながら働きやすいとの理由で、勤めていた日本の会社を辞め、ルワンダで起業したシングルマザーがいるという。

IT環境も問題なし

 インターネットや携帯電話などITの普及で生活しやすくなったことも、アフリカで起業する女性が増えている背景にあるようだ。主要国のケニアでは首都ナイロビだけではなく、地方でも携帯電話を所有している人が多い。大山氏は、「ガーナも、都会でも田舎でも年配者もみんな携帯電話を持ち、通信に何の不自由もない。フェイスブックも、ネタがいっぱいあるので、日本にいるときよりひんぱんにアップしていた」。仲本氏も、「ウガンダは、インターネットも快適だし、ウーバーもモバイルマネーもあるし、日本より進んでいる部分は多い」と指摘する。大半の日本人にとってアフリカは遠い大陸だが、新たなビジネスチャンスはありそうだ。
(ライター 猪瀬聖)[NIKKEI STYLE 2018年1月2日付]

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