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チェック!今週の日経(43)富士フイルム、米ゼロックス買収
事務機の世界市場どう変わる?

チェック!今週の日経(43) 富士フイルム、米ゼロックス買収事務機の世界市場どう変わる?
authored by 日経カレッジカフェ 

 日経の研修・解説委員や日経カレッジカフェの編集スタッフが、この1週間の日経電子版や日本経済新聞から企業ニュースを中心にピックアップし、解説する「チェック!今週の日経」。今回は、日本企業による海外企業の大型買収のニュースを取り上げてみましょう。

世界最大の事務機メーカーが誕生

新聞記事
2月1日付朝刊

 2月1日朝刊の1面トップは、富士フイルムによる米ゼロックス買収を伝えた記事でした。

富士フイルム、米ゼロックスを買収 事務機、日米統合 世界で一体運営(2月1日)

 ゼロックスといえば、コピーの代名詞になるほどの有名企業です。日本では富士フイルムと合弁で富士ゼロックスという共同出資会社をつくり、事業展開しています。現在は両社で世界市場を分割、北米などの市場をゼロックスが、インドを除くアジア・太平洋地域を富士ゼロックスが担当している構図です。両社の世界シェアは4位と5位。地域を分けての事業展開では、世界市場を一体的に攻略している他の大手事務機メーカーに比べて経営効率が悪くなっていました。

 そこで出した結論が両社の一体運営です。富士フイルムHDがゼロックス株の50.1%を取得し、同時に共同出資会社の富士ゼロックスをゼロックスが完全子会社化するという手法で、富士フイルムが経営の主導権を握ります。ゼロックスと富士ゼロックスを合わせれば、世界の事務機市場でトップに躍り出ることになります。

 大きな背景にあるのは、事務機市場の成熟化です。代表的な事務機である複写機は、日本や米国を含めた先進国ではどんどん市場が小さくなってきています。メールに添付された文書をパソコンやスマートフォンで見て印刷しないで済ませたとか、ちょっと気になった書類をコピーではなくスマホのカメラで撮影したなどということは、誰もが経験しているでしょう。コピーの出番はインターネットやパソコン、スマホの広がりで減ってきているのです。縮小する市場で勝ち残るには、規模の追求が欠かせません。これが一体運営をめざす理由です。

 さらに両社の背中を押したものについては、このニュースの詳細をたどった次の記事が詳しく伝えています。

ゼロックス買収(上)極秘交渉1年半 執念の名門支配 事務機、衰退リスクも(2月2日) ゼロックス買収(下)事務機7割 いばらの道 市場成熟、成長へ統治課題も(2月3日)

記者会見
買収を発表する古森重隆会長(右は助野健児社長)

 米ゼロックスは市場縮小の影響で売上高も営業利益もともに年々減り続けていました。このため筆頭株主で著名投資家のカール・アイカーン氏らから、最高経営責任者(CEO)の解任や富士ゼロックスの合弁見直しなどを要求されていました。一方の富士ゼロックスは2017年6月、ニュージーランドなどで複合機のリース取引を巡って、不適切な会計処理をしていた問題が発覚、75%出資する富士フイルムが取締役を3人送り込むと同時に古森重隆富士フイルム会長兼CEOが兼務で会長に就任しました。長く独立色の強かった富士ゼロックスの取締役会を富士フイルムが完全に掌握することになったのです。この二つの出来事から、両社の関係強化を一気に進める戦略として富士フイルムによるゼロックス買収にいたったのです。

市場の縮小をどう乗り越えるか

 ただ、規模拡大が本当に生き残りにつながるのか、この記事では一体運営になった新生ゼロックスが直面する課題についても言及しています。ひとつには今後も市場の縮小が続くことです。「米IDCによると2016年の事務機の総出荷台数は前年比4%減の9903万台。過去9年で26%縮小した。中国・アジアなど新興国の伸びが、先進国の縮小分を埋められない状況が続く。特に大市場の米国は20年までに15年比7%近く減る見通しだ」と指摘します。

複合機
複合機や複写機の需要は縮小傾向が続く

 もう一つ、地域別売り上げ構成のいびつさも課題です。「新生ゼロックスの売上高に占める成熟市場(日米欧)の割合は実に76%」といいます。市場の縮小に合わせてリストラに次ぐリストラを繰り返せば、成長力をそぐことになりかねません。

 「求められるのは新事業創出など事業シナジーを引き出すこと」と記事は指摘します。事務機ビジネスの中核は紙に印刷することでした。事務機が果たしてきたその役割を、すべてのモノがネットにつながる「IoT」技術やAI研究が生み出す革新的な製品やサービスへと置き換えていく必要があります。ゼロックスはこの分野での研究者を多く抱えるパロアルト研究所を傘下に持っています。期待値は高いわけですが、これをどこまで引き出せるかが成長への大きなカギとなるでしょう。写真フイルムの需要がほとんどゼロになるという本業消失の危機を乗り越えた富士フイルム・古森氏の経営力が今また試されようとしています。

(企画委員 水柿武志)

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