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自動運転時代、経営もNext模索 GMやフォード
NextCARに挑む 米国からの波頭(中)

自動運転時代、経営もNext模索 GMやフォードNextCARに挑む 米国からの波頭(中)

 自動運転や電気自動車(EV)シフトに突き進む世界の自動車産業。急速な変化に対応するために、20世紀に世界の自動車産業の礎を築いたたゼネラル・モーターズ(GM)とフォード・モーターが新たな経営モデルを模索している。そこに挑むのが21世紀の旗手、テスラ。新しい時代に生き残るために、それぞれが進む道を探っている。

試験走行中のGMの自動運転車(米サンフランシスコ市)

 「2019年をめどに投入するハンドル、ペダルなしのEVは完全自動運転への重要な一歩。着実に前進していく」。

「パラレル戦略」のGM

 GMのメアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)は米デトロイトでの北米国際自動車ショーの開幕を前にした発表会で記者団に力強く語った。

 12日まで米ラスベガスで開催された家電見本市「CES」。フォードのジェームス・ハケットCEOが派手に基調講演したほか、自動運転に関わる機器やソフトウエアの展示も花盛り。そんな中でGMはプレス発表の機会も設けず沈黙していたが、地元デトロイトでは雄弁だった。

 GMが目指す次世代車時代の経営は、自動運転の車両から無人タクシーサービスまで自社で全て手掛け、高い利益率を目指す姿。それをスピード感を持って実現するために「パラレル戦略」を採っている。

 例えば同社の自動運転車の土台になっている技術は、16年に約10億ドル(約1110億円)で買収したサンフランシスコが拠点の自動運転技術開発ベンチャー、米クルーズのものだ。GMの調達担当、マーサス・ジョシュア上級ディレクターは「自動運転車開発にはベンチャーの力が必要だ。だが調達はGMが一手にになう。両方の長所をいかす」と語る。

 既に持つ量産や部品調達ノウハウと、シリコンバレーなどのベンチャーの技術力。ハードの開発の強みを生かしつつ、意思決定をシンプルにすることで他社よりも早く製品化することを狙う。

フォードは「シリコンバレー化」

 一方のフォード。より過激な「シリコンバレー化」を志向するハケットCEOは、デトロイトでのモーターショーの会場で「我々は単純に技術を進化させるだけでなく、自動運転車の使い道を広げたい。規模の小さな企業にも声をかける」と繰り返した。

フォードが運営するバスサービス(米ヒューストン市)

 もちろんフォードもモーターショーでは「順当」に電動車への110億ドルの投資を打ち出した。だが力点は、サービス開拓の営業の方にあった。展示では主力のピックアップトラックや多目的スポーツ車(SUV)の横に、自動運転による配送を受託した米ドミノ・ピザや食品配送ベンチャー、ポストメイト用の2台の車両が並ぶ。

 CESのブースでは巨大な展示空間に車両はこの2台のみ。自動車メーカーとしては異例だった。CESでの基調講演でハケットCEOが強調したのは「ヒューマニズム」。道路の中心は車ではなく歩行者。渋滞で自動車が人間にとって移動の邪魔になっているなら数を減らす方向へ行く、という意思表示だった。

 鍵を握るのはシェアリングなどのサービスだ。17年のハケットCEO就任以降、交通サービス強化に振り切っている。例えば路線バスとライドシェア(相乗り)の中間のようなサービスで、16年に買収したチャリオット。同社はサンフランシスコからニューヨーク、シアトル、テキサス州オースティンなどへ急速に展開地域を広げている。

大手の牙城狙うテスラ

 デトロイトの既存大手に対してシリコンバレー企業の代表、米テスラはGMやフォードの牙城にEVで殴り込みをかけようとしている。その舞台はピックアップトラック市場だ。イーロン・マスクCEOが17年末に、20年以降の出荷計画をほのめかした。

19年に発売するEVトラックを発表するテスラのマスクCEO

 テスラの顧客は都市部の富裕層に偏っている。だがまず低価格のEVトレーラーを開発して、法人から米国の地方市場にも攻勢をかける。米小売り大手ウォルマート、米物流大手UPSなど大口顧客などから続々と注文が入っている。その延長線上にピックアップ参入がある。

 開発投資先行で資金繰りは常に厳しいが、投資家にファンが多いカリスマ経営者イーロン・マスク氏の資金調達力でしのいでいる。量産型の新型セダン「モデル3」の生産も、ようやく目標の半分の水準までは立ち上がってきた。

 テスラは自動運転に最低限必要なハードウエアを組み込んだ車両を既に販売。年産は17年にようやく10万台に到達した。規制が整い次第、ソフト更新で運転支援機能を高度化していく計画だ。

 米自動車メーカーの戦略はそれぞれだが、共通なのは自動運転への巨額の投資だ。市場を制するのはGMのハード開発力か、フォードのサービス開拓か、はたまたテスラが量産の垂直立ち上げで食らいつくのか。19年には答えが見えてくる。
(デトロイト=兼松雄一郎)[日経産業新聞 2018年1月17日付、日経電子版から転載]

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