日本経済新聞 関連サイト

OK
skill up-自己成長

創立100年迎える「東女」 なぜ今も企業にモテモテ
東京女子大学の小野祥子学長

創立100年迎える「東女」 なぜ今も企業にモテモテ東京女子大学の小野祥子学長
東京都杉並区にある東京女子大学

 2018年に創立100周年を迎える東京女子大学(東京・杉並)。約9万5千平方メートルの美しいキャンパスに約4千人の「東女(とんじょ)」の女子学生が集う。全国的に女子大人気が下がるなか、大手企業への就職率では女子大でトップクラスの実績を上げている。なぜ企業にもてるのか。東京の西荻窪にある東女を訪ねた。

チャペル内では演奏会も

 12月2日、東女のキャンパス内にある講堂では、クリスマスコンサートとして第63回メサイア公演が開かれた。JR西荻窪駅から徒歩12分のところにある東女。都内有数の高級住宅街の善福寺に緑豊かなキャンパスが広がる。講堂に隣接するチャペルでも、学園祭などで演奏会が開かれるが、「とにかく荘厳、パイプオルガンの音色がすばらしい」と、楽しみにしている学生や地域の人たちは少なくない。ステンドグラスが美しいチャペルは東女の象徴的な建物だ。

 キャンパスには瀟洒(しょうしゃ)な本館を中心に整然と建物が並ぶ。広い芝生の中庭があり、女子学生らがおしゃべりに興じている。他の大学と比較して、1人当たりの空間が広く、雑然とした雰囲気はない。

 なぜ東女を選んだのか、何人かの女子学生に聞いてみた。「女子高校だったのでその流れで何となく」という学生もいたが、明確に理由を語る学生もいた。

偏差値の割に「お得な学校」

チャペルにはパイプオルガンがあり、演奏会を開くことも

 「意外と『お得な学校』じゃないかと。学生の多いマンモス大学だったら、私なんて埋もれてしまいますが、ここだと自分を出しやすいし、やりたい勉強もできる。何より就職がいい。大半の人は志望した会社に行けますね」。現代教養学部3年生の女子学生は志望理由をこう話す。MARCH(明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)クラスの大学にも受かったが、あえて東女を選んだという。

 東女の小野祥子学長も「確かに偏差値の割には『お得な学校』といえるかもしれませんが」とほほ笑みながら話す。大学通信などの調査によると、16年卒業生を対象にした「有名企業400社の実就職率ランキング」では、女子大で1位になったという。

 女子大から大企業への就職というと、一般職採用のイメージが強いが、東女によると、17年3月の進路状況は就職率が99.5%。コース別では総合職と準総合職で49.5%とほぼ半数、一般職は19.8%だ。

 実際の就職先はメガバンクをはじめとする金融大手のほか、トヨタ自動車やソニー、ホンダ、全日本空輸など就職人気企業がずらりと並ぶ。

東京女子大学の小野祥子学長

 一方で合格難易度は昔に比べれば下落傾向にある。「かつての偏差値は早稲田大学や慶応義塾大学並みだったが、女子大全体が伸び悩むなか、東女も今はMARCHの下のクラスぐらいに下がった。親御さんなど保護者には今も人気が高いが、第1志望の生徒は少なくなった。ただ、東女は東京大学のパートナー女子大と呼ばれ、同じテニスなどのサークルでカップルになるケースも少なくないし、企業側のブランド力は昔も今も高い」(大手進学塾幹部)という。

まじめでしっかり者

 大手メーカーの採用担当者は「東女の学生はイメージがいいですね。基本的にはまじめで責任感のある人が多いし、ある程度の協調性もある。ウチに入社して1年で勝手に会社を辞めたとか、問題を起こしたとか、あまり聞きません。それで定期的に東女の学生は採用している」という。

 現在、大学経営は全般に厳しい。少子化や受験生の女子大離れで、女子大は1998年の98校をピークに16年には77校に減少した。東女は津田塾大学や日本女子大学と並ぶ女子私学ではトップクラスの大学だ。しかし「やはり昔と比べると、学生を集めるのは容易ではないですね」(小野学長)という。経営安定のためには付属中学・高校を設置するのも一案といわれるが、「そのような考えはない。創立時には女子学院(東京・千代田)などミッション系の女子校の生徒を受け入れるという役割もあり、現在も全国のキリスト教主義の高校と広く連携しています」という。

 1918年に創設された東女。初代学長は5千円札の肖像としても有名な新渡戸稲造だ。キリスト教主義に立脚した「リベラル・アーツ(教養)」を是とする女子大だが、現在も教養が看板だ。学部は入学定員890人の現代教養学部のみで、文理融合型の4学科で構成されている。

 18年の100周年に合わせて、この学科の編成を見直す。学部全体の定員は変えないが、5学科12専攻とする。新設する学科は「国際英語学科」。人間科学科も専攻を一部見直して「心理・コミュニケーション学科」という新しい学科が誕生する。さらに国際社会学科に「コミュニティ構想専攻」という専攻分野を設ける。

半年留学を実施へ

 目玉はやはり国際英語学科(入学定員は155人)だ。キャリアに生かせる実践的な英語力を養うのが狙いで、大学2年生の後期には全員に半年留学を義務付けるのが特徴だ。東女には米国や英国など英語圏に約20校の協定校があるが、他の大学にも留学先を増やしてゆく。「女子学生をそれぞれ受け入れてもらうにはセキュリティー上の問題もクリアする必要がありますが、現地での経験はその後のキャリアの糧になる」(小野学長)と半年留学制度の導入に踏み切った。

 心理・コミュニケーション学科の心理学専攻は、17年に制度化された「公認心理師」にも対応する。コミュニティ構想専攻は、外国人観光客が増えるなか、女性視点の街づくりなどを学ぶのが狙い。理数から人文まで幅広い分野のリベラル・アーツをカバーしながら、今の社会ニーズに合った実践的な専門知識を磨く。

東女の象徴的な建物でもあるチャペル

 東女の教員は124人。哲学から数学、経済学など多様な分野の教授が在籍し、学生との距離が近い。1~4年生までゼミがあり、10人前後の少人数教育が施される。卒業論文・卒業研究はもちろん必修だ。

OGは多彩 有名な女将も

 東女を彩るのは多彩な分野の著名OGだ。一般には作家の瀬戸内寂聴さんやファッションデザイナーの森英恵さん、女優の竹下景子さんが知られている。

 企業家もいる。富士ゼロックスインターフィールド社長の鏡久賀さんや、フランス系の化粧品メーカー、ロクシタンジャポン社長だった鷹野志穂さん、ポーラ取締役の及川美紀さんなどマーケティングや販売分野で頭角を現す女性リーダーも少なくない。

 東女ではコミュニティ構想専攻を新設するが、卒業生のロールモデル的な存在が、山形県の人気旅館「日本の宿 古窯」の女将で社長の佐藤洋詩恵さんだ。日本航空の客室乗務員だったが、結婚して旅館の女将に。観光情報紙や再就職支援制度をつくり、地域の活性化に取り組んでいる。現在の芸能界では、女優の多部未華子さんや、フリーアナウンサーの西尾由佳理さんや高橋真麻さんらが活躍している。

 東女では著名なOGを各界ごとに、大学に招き、在学生に向けて大学での学びとその後のキャリアについて語ってもらっている。小野学長は、「子育てしながら働いているOGが多いですね。私もその一人です。強い女性というよりも、まじめで、しっかり前を向いている女性が少なくない」と話す。多彩な分野で活躍し、企業からの信頼も厚い東女。女子大受難の時代を果敢に乗り切りそうだ。
(代慶達也)[NIKKEI STYLE 2017年12月24日付]

「日経College Cafe」のお勧め記事はこちら>>