日本経済新聞 関連サイト

OK
skill up-自己成長

僕がゴミを拾うわけ(1)ボランティアは滅私奉公じゃない!

僕がゴミを拾うわけ(1) ボランティアは滅私奉公じゃない!
authored by 谷村一成中央大学4年生

 こんにちは、中央大学「変人学部」の谷村一成です。今回から始める新連載では、「きれいな街は、人の心もきれいにする」をコンセプトにゴミ拾いのボランティア活動をするNPO法人greenbird(グリーンバード)と出合い、その社会問題へのアプローチ方法に衝撃を受け、自分の中での社会貢献のイメージが変ったことについて書いていきます。

ノリと勢いで参加

 若者文化の発信地「表参道原宿エリア」。日本の「かわいい」を集めたような竹下通りに、おしゃれの象徴のようなけやき通り。おいしそうなパンケーキ屋さんにおしゃれな美容室。色とりどりに着飾った若者たちが颯爽と歩いてゆく。そんなこの街に、ひょんなきっかけで私は3年間通うことになったのだった。

街のそうじをする筆者

 遡ること今から約3年前。大学1年生も終わりに近づいた2014年11月8日のことだった。その数日前、「おもしろい人を紹介するからこのイベント来てよ!」と、同じ中央大学の友人である後藤寛勝さんから珍しく連絡があった。イベントの名前は「みなトーーク!」。東京・港区のまちづくりについてのワークショップだった。上京してまだ1年未満で港区の場所すら分かっていなかったのだが、ノリと勢いで参加してしまった。

 当時、いわゆる「まちづくり」にあまり関心がなかった私は、その日の議論に全くついていけなかった。だが、そこでお会いしたのが、NPO法人greenbird(グリーンバード)代表の横尾俊成さんだった。帰り道、お会いしたお礼の挨拶をしておこうとFacebookを開くと、すでに横尾さんから友達申請とメッセージが来ていた。「あ、この人なにか違うぞ。」この出会いがその後の大学生活を大きく変えることになるとは思ってもみなかった。

「みなトーーク」に参加する筆者

 それからしばらく経った2015年3月18日のことだった。「一度事務所に遊びにおいで」という言葉を額面通りに受け取った私は、表参道にあるグリーンバードの事務所を軽い気持ちで訪ねた。「和」の文化を象徴するかのような造りのJR原宿駅を出ると、目の前の竹下通りには若者がごった返していた。原宿に来たのはこの時が初めてだったと思う。事務所は、若者文化の発信地のど真ん中にあった。

 明治神宮の目の前にある少し古びた建物。服装に迷った挙句、スーツに身を包んだ私は、恐る恐る扉を開けた。するとカジュアルな服装の若い女性が現れた。「あら、新しいインターンの谷村くん?よろしくね!」事務局スタッフの谷口茉莉さんだった。「新しいインターン生?何のことだ?」。戸惑っているうちに横尾さんや他のスタッフの方々も現れた。この日は定例ミーティングの日だったようだ。よく分からないまま自分も参加することになった。メインテーマは、「2ヵ月後に開催される代々木公園でのフェスにグリーンバードはどのように関わるか」というものだった。そこで私は衝撃を受けた。

初参加した表参道おそうじでの集合写真

「大喜利」のような会議

 出される意見がいちいちぶっ飛んでいる。なかにはファンタジーというか非現実的というか意味不明なものもある。まるで大喜利大会。でも、決して誰も馬鹿にしたり否定したりはしない。むしろ、一つ一つの意見を面白がり、うまく拾って生かそうとしている。そうして、最終的には実現可能でかつ面白い企画にまとまっていったのだった。私は何も発言することができず、ただただ息を呑んでいた。こんなに面白いミーティングは初めてだった。これまで私が知っていたミーティングは、担当者が淡々と議題を話し、議事録係がパソコン打つ音がただ響くだけの何ともつまらないものだった。柔軟な発想と何を言っても許される雰囲気が、画期的なアイデアを生み出す源泉だと痛感した。ミーティング後に改めて、「インターンやる?」と聞かれ、「やります」と即答した。ここでならきっとたくさんのことが学べると直感的に判断した。

 インターン生としての最初の役割は、毎週水曜午前10時30分から行っている表参道でのゴミ拾い活動の運営だった。グリーンバードは2002年にここ表参道でスタートして以来、現在では世界87のチームが街のゴミ拾い活動をしている(2018年1月時点)。谷口さんと一緒に事務所から集合場所である神宮前隠田区民会館に向かうと、すでに参加者が集まっていた。ゴミ拾いが始まると、参加者のみなさんは楽しそうに会話を始めた。「はじめまして!お仕事は何をされているんですか?」「あ、僕まだ大学1年生です......」。私も年上の男性に話しかけられた。

おそうじ後のランチにて

「楽しいから長続き」

 参加者の方々と話しているうちにわかったことがある。それは、多くの方はゴミ拾いではなくそこでの出会いを楽しみに参加しているということだ。もちろんゴミは拾うのだが、ほどほどに拾っている。遅れてくる人もいれば、途中で抜ける人もいる。新しいお店がオープンしていると立ち止まってみんなでメニューを見たり、アイスの試食をやっているとみんなで食べたり。こんなことで大丈夫なのかと心配になった。だがそれが秘訣なのだという。「ゆるくて楽しいからこそ活動が長続きするんだよ。一生懸命やって続かないより、できる限りを続けることが大事だよ」。このできる限りを続けるスタイルで、2002年の発足時から約15年。表参道のゴミの量は半分以下に減ったという。

 私はこれまでゴミ拾いが嫌いだった。正確に言うと、ボランティアを偽善と感じ、懐疑的に考えていた。それは、ボランティアを、他人のために自分を犠牲にする「滅私奉公」であるべきだと思い込んでいたからだ。他人のために自分を捨てて尽くす。自分が楽しんだり、自分に得があったりするのはもってのほか。そう考えていた。でもそうだとすると、ごくわずかな聖人君主しかボランティアをやる資格がなくなってしまう。社会問題は多くの人が関わることで解決に向かう。これだと本末転倒だ。ゴミ拾いを楽しんだっていい。出会いがあるから、褒められるから、理由はなんだっていい。それでゴミが減っているのだから。自分が楽しんで、しかも社会もよくなるなんて最高じゃないか。人間の持つ欲や弱さを認めた上で、できることを続けていく。そんな人間臭さにあふれたグリーンバードの活動は、地に足の着いた実に戦略的で奥深いものだと思う。「ボランティアは滅私奉公じゃなくていいんだ!」。私が長年の桎梏(しっこく)から解き放たれた瞬間だった。