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八ッ場に恋したダム女子たち(3)川原湯温泉再生へ、私たちが考えたこと

八ッ場に恋したダム女子たち(3) 川原湯温泉再生へ、私たちが考えたこと
authored by 跡見学園女子大学篠原ゼミ

 みなさんこんにちは!私たち跡見学園女子大学篠原ゼミのゼミ生が取り組んでいる「八ッ場(やんば)ダムプロジェクト」の第3回です。このプロジェクトの目的は、群馬県長野原町で建設中の八ッ場ダムとその周辺地域を、地元と協力して観光で盛り上げようということです。私たちのゼミでは昨年の4月にテーマ別に4つのグループを設けて、それぞれが同時進行で活動してきました。今回の報告は、グループのひとつである「川原湯温泉活性化・リピーター拡大研究プロジェクトグループ」(以下、川原湯PJ)のリーダーを務めている森みなみが担当します。

ダム湖に沈みゆく名湯・川原湯温泉の旧旅館街

プロジェクトが成功するようメンバーで川原湯神社にお参り

 わたしたちのグループは4年生2人、3年生2人の計4人に、現地から川原湯温泉の未来を担っている若い後継者の方3人にも加わっていただいて、計7人で活動をしてきました。プロジェクトは八ッ場ダムが2019年度に完成した後も、地元・長野原町にある川原湯温泉を元気にしていくため、温泉のブランド化を目指すことが目的です。

 みなさんは川原湯温泉をご存知ですか?国指定の日本名勝・吾妻渓のすぐそばに湧き出る川原湯温泉は、源頼朝が発見したのが起源とされており、その歴史はなんと800年!草津の上がり湯として江戸時代から多くの人に親しまれ、現在でもファンが多いんです。それもそのはず。実際にわたしたちも入浴させていただきましたが、肌がすごくつるつるになりました。これは女性にも男性にも嬉しいですよね。気持ちが良くてついつい長湯をしてしまいました(笑)。

 そんな名湯の川原湯温泉ですが、八ッ場ダムの建設に伴ってダム湖に沈んでしまうことになり、2014年に近隣の代替地に移転を余儀なくされました。移転前にはもちろん反発もありましたが、止むを得なく決断を下したのです。

 わたしたちは今回、特別に移転前に川原湯温泉街があった場所へ入らせていただきました。そこには温泉宿が取り壊された痕が未だに痛々しく残っていました。同行していただいた川原湯温泉の旅館経営者の方から、「あそこが浴場、その隣が・・・」と説明を聞き、胸が痛みました。自分の旅館が取り壊されるってどれほど辛いことでしょう。

 しかし、川原湯温泉協会会長の樋田省三さんは「自分たちは前に進まなければならない。移転した新しい温泉街で、これからの新しい時代を作り上げていくんだ」とおっしゃりました。町の方々は未来への第一歩を歩み始めているのだと感じ、その力強い言葉に逆に元気をもらい、改めてプロジェクトに対するみんなのやる気につながったと思います。

現地で高齢の方に話を聞き、自分の目で確かめた

八ッ場ダムが完成すればダム湖に沈む旧温泉街の跡地

 わたしたちは昨年夏、川原湯PJの合宿を現地で行いました。そこではまず、川原湯温泉の現状と課題を詳しく知ろうということで、昔から川原湯地区にお住まいのご年配の方々に話を聞く「昔話会」を実施しました。その会には、わたしたちと共にプロジェクトに取り組んでいる川原湯温泉の旅館、丸木屋の後継者、樋田泰彦さんのおばあさまもいらして、昔の川原湯温泉街についてのお話を伺いました。

 みなさん、「昔の川原湯温泉街の様子」や「今と昔との景観の違い」など、たくさんのお話をしてくれました。どれも興味深くわたしたち学生は頷きながら真剣に聞いていました。印象に残ったのは、「昔は隣の旅館とは距離も近く、仲が良かった。でも今では移転で宿同士の距離が離れ、話す機会が減ってしまったことが悲しい」と話されたことです。以前より宿同士の連携が難しくなっているという現状が分かりました。

 次に、現地の若者の方に案内してもらい、川原湯地区を歩いて現状を見て、課題を探しました。東京から来たわたしたちには、緑が多くてきれいで、自然が豊かなこの町がとても新鮮で、歩きながら大はしゃぎ。でも視察はちゃんとしましたよ!

 ここで、移転したことで実際に宿と宿が離れてしまっている現状を確認しました。また、確かに緑が多く自然豊かですが、移転してまだ4年で、さらに八ッ場ダムが建設中ということもあり、置かれた三角コーンや更地などが目立ちました。まだまだハード面での景観整備などは整っていません。だからこそ、ソフト面で住民同士のつながりを大切にし、コミュニケーションを取ることが、この先の大きな課題であると感じました。

合宿で若手旅館後継者と考えた3つの提案

旅館・山木館15代目の樋田勇人さんがダムコンシェルジュに挑戦

 川原湯温泉を活性化するためには、前提として川原湯温泉全体での連携、情報共有を進めていかなければならないというのが合宿で得たわたしたちの結論です。そこで私たちが考案して、町や温泉協会に提案したことが3つあります。まず、「ニーズに合わせたHP(ホームページ)やパンフレットの作成」、次に「川原湯温泉全体でのアメニティ(備品)の統一」、そして「ネットを使い、川原湯温泉全体でお客様の好みや傾向などを管理することのできる顧客情報の共有」です。

 まずひとつ目の、「ニーズに合わせたHPやパンフレットの作成」です。みなさんはタイプ別診断ってご存知ですか?よく雑誌などでブロック形式の選択肢から、「Aを選んだあなたはこのタイプ」などという診断が書かれているものです。わたしたちはこのスタイルを使って、宿泊客が自分の好みに合った宿選びなどができる仕組みをつくろうと考えました。

 「川原湯温泉全体でのアメニティの統一」は、現在は同じ川原湯温泉でも旅館によってアメニティのデザインなどが統一されていないため、それを統一すればコスト削減につながると同時に、川原湯温泉ブランドとしての一体感を生むことができると思います。

 最後の「顧客情報の共有」。これはネットを使って、川原湯温泉全体でお客様の好みや傾向などの情報を管理することで、それぞれの宿は特徴や個性を残しつつも、「どこの宿に泊まっても川原湯温泉なら安心する」とお客様に言っていただけるようなおもてなしを目指すものです。これが実現すれば、「次は川原湯温泉街の別の宿に泊まってみよう」という、リピーターの獲得や長期滞在にもつながるのではないでしょうか。

 これらを実現するためにも、現在バラバラになっている宿同士をひとつにまとめ、川原湯温泉全体で連携していくことが重要になるとわたしたちは考えます。

何十年か後のお客様にも喜んでもらえたら

温泉協会会長の樋田省三さん(右)の案内で移転・再開した山木館を見学

 川原湯温泉の宿泊客の増加に向けた川原湯温泉と八ッ場ダムとの連携は、私たちの合宿中にも動きました。旅館の山木館15代目後継者である樋田勇人さんが、八ッ場ダムの案内役であるダムコンシェルジュに挑戦し、ダムガイド認定証を取得したのです!

 樋田勇人さんが実際にコンシェルジュをしている姿を拝見しましたが、以前から活動しているコンシェルジュの方に負けないような素晴らしいガイドをされていました。内容に川原湯温泉の宣伝を入れるなど、旅館の後継者らしいオリジナリティーもありました。

 わたしたちが合宿で現地の若い方々と共に考えた提案の中には、実はもう実現に向けて動き始めているものもあります。自分たちが取り組んだことが形になるというのはとても嬉しいですよね。

 実を言うと川原湯PJが始まった当初は、正直かなり不安でした。でも町を知り、人と触れ合うたびに、八ッ場ダムだけでなく、どうしたら川原湯温泉にも人が訪れるのだろうか、もっと町の役に立ちたいと思うようになりました。

 川原湯温泉はこれからも多くのことにチャレンジし、どんどん変わっていきます。ダムを巡って一度はバラバラになった町と住民も、いまでは未来へ向け、たくさんの取り組みを行っています。八ッ場ダムが完成したら観光客も増えるでしょう。私たち学生が川原湯温泉活性化への火付け役になれたらとても嬉しいです。

 いますぐ結果が出なくても、何十年か後に川原湯温泉へいらしたお客様に喜んでいただければ、このプロジェクトは成功したと言えると思います。私たちは川原湯温泉の明るい未来のために、これからも応援していきます。

 ここまで読んでいただきありがとうございました。次回は「酒蔵・酒造ツーリズムとブランド化研究プロジェクト」についてです。お楽しみに!
(跡見学園女子大学 篠原ゼミ3年ゼミ長 森みなみ)

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