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チェック! 今週の日経(44)70階建て超高層「木造」ビルって本当に可能?

チェック! 今週の日経(44) 70階建て超高層「木造」ビルって本当に可能?
authored by 日経カレッジカフェ 

 日経の研修・解説委員やカレッジカフェ編集スタッフが、この1週間の日経電子版や日本経済新聞から企業ニュースを中心にピックアップし、解説する「チェック!今週の日経」。今回はちょっと変わった企業のプロジェクトを紹介します。住友林業が地上70階建ての木造(!)の超高層ビルを、2041年までに東京・丸の内に建築するという構想を発表しました。でも、木造で70階ものビルが果たして建てられるのでしょうか。

木材比率9割のハイブリッド構造、耐火部材も開発

2月9日付朝刊

日本経済新聞では2月9日付朝刊「企業総合」面に記事が掲載されました。

住友林業、70階建て「木造」ビル構想 東京・丸の内での建設を想定

 記事によれば、住友林業が建設予定のビルは高さ350メートルの地上70階建て。現在、ビルでは高さ日本一のあべのハルカス(大阪市)の同300メートル、地上60階をしのぐ規模です。しかも、これが木造というから驚きですね。「W350」というこのビルの構想計画では、延べ床面積45万5000平方メートルの建物を作るのに18万5000立方メートルの木材が必要で、これは同社が手がける注文住宅8000棟分にあたるとか。途方も無い木材の量です。

 しかし、さすがに100%木だけで70階のビルを建てるのは技術的に無理なようで、一部に鉄骨の耐震補強材などを加えた、木材比率9割の木鋼ハイブリッド構造というそうです。また、燃えやすい木造なので、もし火事になっても燃え尽きないような3時間耐火の認定が取れる耐火部材の開発を進めます。さらにビルの外周に、燃えにくいというサザンカなどの植栽を巡らしたり、水が流れるような仕組みを付けたりするなど、火災対策には知恵を絞っています。

住友林業が建設構想を発表した木造高層ビルのイメージ図

 総工費は6000億円と試算しています。これは現段階では従来型の超高層ビルのほぼ2倍にあたるとか。そうなると、本当に実現するかどうか、建ててもテナント代が相当高額になるのではないか、といった疑問が出てきそうですが、住友林業は「今後の技術開発でコストダウンを進め、経済的にも実現性を高めたい」と自信をのぞかせています。

生き物の棲み家となる森のような建築物を目指す

 同社はすでに7階建ての耐火ハイブリッド構造の木造ビルの建設実績があります。下記はその紹介記事です。

住友林業、7階建て耐火ハイブリッド木質ビルを建設

 4年後をメドに、高さ70メートルの14階建て木造ビルを建てる計画もあるというから、70階建ても単なる夢物語の構想で終わるわけではなさそうです。

建物の内部は純木造で、木のぬくもりを感じられるようにする

 では、なぜこんな巨大な木造ビルを作る構想をぶち上げたのでしょうか。同社の説明によると、「地球環境との共生」と「社会との共生」という2つをテーマに掲げています。前者は植物や生物にとっても快適な木造建築によって、生き物の棲み家となる森のような建築物を目指し、後者は木材の需要を拡大して国内の森林の荒廃を防ぎ、林業の再生や地方の活性化に寄与する、としています。

 いずれにせよ、これまでの高層ビル計画とは違った、ちょっと夢のある構想ですね。日本は高さ32メートルの法隆寺五重塔(世界最古の木造建築物)を1300年も前につくった匠の国。まだ完成予定とする年まで23年もありますが、ぜひ実現してもらいたいと思います。
(研修解説委員 若林宏)