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資生堂、IoTで肌ケア商品の「個人化」に挑む

資生堂、IoTで肌ケア商品の「個人化」に挑む

 資生堂が今春、個人の肌にカスタマイズしたスキンケア「Optune(オプチューン)」の試験販売を始める。スマートフォン(スマホ)アプリで肌の状態を計測すれば、その日の天候や体調に最適なスキンケアを配合する。商品開発の「パーソナライゼーション(個人化)」の第1弾として、個人の嗜好にIT(情報技術)で応えるサービスモデルを磨く。

 「Optimize(最適化する)」と、「Tune(調和)」から名付けられたオプチューン。「最先端のデジタル技術を活用して、誰も創造したことがない『パーソナライズド・ビューティー』を展開していく」と国内事業会社、資生堂ジャパンの杉山繁和社長は強調する。

 仕組みはこうだ。利用者がスマホのカメラで肌を撮影してデータを専用サーバーに送る。システムは、利用者の居住地のその日の気温、湿度、天候などのデータも加味。その日の肌のコンディションに、最適のスキンケアの成分比をはじき出す。

資生堂の「オプチューン」はその日の肌の状態に合わせた化粧品を配合する

 こうして作られた処方箋は、ネット経由で消費者の自宅に設置された専用マシンに伝送される。マシンには5種類の成分を充填したカートリッジが収納されており、伝送された最適の比率で各成分を配合し、美容液や乳液を抽出する。抽出パターンは実に1千通り。千差万別の女性の肌質に対応したカスタムメード型のスキンケアだ。

 ITの技術を結集して、より個人の嗜好をとらえた商品を提供できるビジネスモデルをつくる――。オプチューンは資生堂が模索するモデルを象徴する取り組みだ。

 その原型は2017年に買収した化粧品ベンチャーの米マッチコー(カリフォルニア州)が持つ。13年設立の同社はスマホアプリで肌を撮影してデータを送信すると、それぞれの肌質に最適のスキンケアを処方し、届けるサービスを手掛けてきた。消費者の嗜好の多様化への対応を課題にしてきた資生堂が新しさに着目。傘下に収めた。

 マッチコーのビジネスモデルに資生堂が長年蓄積した処方技術を組み合わせ、さらにあらゆるモノがネットにつながる「IoT」の要素を加味したものが、オプチューンといえる。

 さらに資生堂は17年11月、人工知能(AI)を使った肌色計測技術を持つギアラン(マサチューセッツ州)も買収している。「オプチューンはまだベータ版」(杉山社長)の位置づけだが、ギアランの画像認識技術なども取り入れることで、ビジネスモデルをより洗練させていく考えだ。
もともと化粧品は嗜好性の強い商品だ。リップやアイシャドーなどのメーキャップでは資生堂も少量多品種型の商品開発を進めてきた。市場でも、数十通りのカラーバリエーションを持つブランドが珍しくない。

 一方、スキンケアは技術的な制約もあって基本的にはマスプロダクトだった。資生堂の魚谷雅彦社長は「AIなどのテクノロジーの進化は、数百万通り以上のバリエーションを可能にしつつある」とみる。

 近年、ファッションなどの分野でも消費者の嗜好の多様化に対応したカスタムメード型の商品開発が目立っている。「パーソナライゼーションを1つの事業モデルに統合できた企業はまだない。この分野で先行していけば、規模で勝るグローバル企業にも勝てる可能性がある」。魚谷社長は話す。

 資生堂はオプチューンの課金方式や価格体系などについては、現時点ですべて未定としている。その設定は同社が志向していくパーソナライズモデルの成否を占う上でも重要となる。
(松井基一)[日経MJ2018年1月17日付、日経電子版から転載]

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