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20年後から見る職選び(6)物流、ロボ・AI活用で飛躍

20年後から見る職選び(6) 物流、ロボ・AI活用で飛躍
authored by 戸崎肇首都大学東京特任教授・経済学者

 福井県では、2月6日から37年ぶりの大雪となり、国道で一時1500台もの車が立ち往生するという異常事態が発生しました。その後も状況は改善されず、自衛隊も出動するなどし、3日後にやっと問題は解消されましたが、多くの被害が出ました。

 そのうち、特に注目されたこと、食料などの配送ができなくなったことです。地元のスーパーでは、商品の供給をしてくれるトラックが立ち往生に巻き込まれてしまったために、パンなどがなくなってしまいました。飲食店も同様に食材がなく、閉店しなければなりませんでした。こうなると、地元の生活にも大きな不安がもたらされます。

EC拡大で需要増

 このようなことは自然災害とともに繰り返されています。2011年の東日本大震災の時もそうでした。その際には、東京でも賞味期限の短いような食品、非常時の需要が高い乾電池などが売り場からなくなってしまいました。スーパーの開店時には長い行列ができたのです。

 これは、いわゆる「物流」の問題です。物流の重要性は、平時にはなかなか実感されませんが、自然災害などの非常時には痛感させられることになります。

ロボットが運んできたコンテナに入った製品を作業員が注文の数だけ取り出して出荷口に送る

 しかし、物流の問題は、今後さらに重要性を増す一方です。というのは、ネット上での商品の売買、いわゆるEC(E-commerce:電子商取引)が盛んとなり、商品である現物を購入者のもとに送り届ける需要が急激に高まっているからです。皆さんもECを一度は利用したことがあるでしょう。

 たとえばAmazonなど代表的な例ですね。Amazonは、もともとはインターネット書店として開業しましたが、今やあらゆる商品を取り扱っています。今では商品を販売するだけではなく、それを届ける物流部門にまで業域を拡大しています。

 一般のスーパーなどでも、このような業容が広がっています。わざわざお店に行くことなく、電話やインターネットでその日必要なものを注文すれば、自宅まで届けてくれます。自由に動きまわることができず、重い荷物をもつことが困難な高齢者が増加する中、ECに対する社会的需要はますばかりです。

 しかし、現状では、こうした急増する物流需要に対応できるようなインフラが整っていません。何よりもトラックを運転できるドライバーの数が限られています。通常であれば、ドライバーの待遇もよくなるはずなのですが、トラック業界では依然として中小零細企業が多く、未だに過当競争が行われているため、労働条件も改善されず、新たな成り手がなかなか出てこないのが現状です。

専門性高い人材必要に

 だからこそ、物流の効率化を図っていかなければなりません。原料の入手から販売に至るまでの物流を効率的に管理するシステムのことを「ロジスティクス」といいます。これは、もともとは兵站を意味する軍事用語から来たものです。太平洋戦争中、日本は戦線を拡大しながら、その前線に武器や食糧などを輸送することの重要性を理解していなかったため、前線の兵士が孤立し、悲惨な最期を遂げるという事態が頻発しました。そうした反省もあり、それがビジネスの世界にも応用されることになってきました。

 ロジスティクスの成否は、これからどの業界であれ、その成否の鍵となります。だからこそ、ここでどのような創造性を発揮できるかが問われ、その専門性の高い人材は、これから引く手あまたになっていくはずです。

 その一方で、自社の中でロジスティクスを追求するのではなく、あくまでも本業に徹し、より優れたロジスティクスを外部に求める動きも高まっています。このように、外部から効率的なロジスティクスを提供する主体を「サード・パーティー・ロジスティクス」といいます。こうした業者間の競争も激しいながら、その需要は今後衰えることはないでしょう。ベンチャーとしてもこれから起業するもの面白いと思われます。というもの、これからはさらに高度な技術が導入されていくしかないからです。ビジネスモデル特許を取るだけでも大成功できるかもしれないのです。

 ハード面においても、ドライバー不足の問題は、これから自動運転技術の進展によって解消されていくでしょう。たとえば、大型トラックが何台も連なる形で自動運転を行う実験がすでに行われています。

 ただし、こうした技術が実際に運用されるためには、高速道路の出入り口などで、トラックがつっかえることがないようにしなければなりません。つまり、トラックだけを技術武装するのではなく、道路整備の在り方にまで変えていかなければなりません。つまり、都市計画、都市プランニングの領域にまで踏み込んだ提言、政策実行の必要性も出てきます。それだけやりがいのあるものだと思いませんか。

国境の壁なくなる

 荷物の積み下ろしも、ロボットがほとんどの部分を行ってくれるようになるでしょう。現在、過酷な積み下ろし作業を行った上に、長距離の運転を時間に急かされて行わなければならないような「過酷」な環境は、過去の話となっていくことでしょう。ただ、そうなると、ドライバーの需要自体はなくなっていくでしょうから、いわゆる「トラック野郎」はあまり見ることができなくなりそうです。

 また、当然、AIの活用も今後は進んでいくでしょう。どのようにトラックなどを動かせば最も効率的でコストパフォーマンスが高い物流体制を構築できるかを考える際に、AIの活用は大きな成功のカギとなってくるでしょう。

 その他にも、生鮮食料品の鮮度を保つための最新技術が開発されていたり、この分野での技術の進展は日進月歩です。もちろん、海外との間のロジスティクスもあります。グローバル化が進む中、もはや物流にも国境の壁はどんどんなくなっていきます。そうなると、海運、空運での専門性も問われます。

 無限の可能性を秘めるロジスティクス。今のうちによく意識し、研究しておきましょう。

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