日本経済新聞 関連サイト

OK
liberal arts-大学生の常識

若者にストレッチスーツ人気、消える「やせ我慢」

若者にストレッチスーツ人気、消える「やせ我慢」

 紳士服専門店でいま、一番にぎわっている売り場はストレッチスーツだ。オフィスでのカジュアル化でスーツ全体の販売はさえないが、素材を工夫して、着心地がいいスーツの売れ行きは好調。店頭で買っている人の顔ぶれをみると、太めの人が多い中高年よりも20~30代の若年層が目立つ。なぜ、若者に受けるのか。人気の背景を探った。

 最近のIT(情報技術)企業やベンチャーでは仕事着のカジュアル化が進む。伊藤忠商事が毎週金曜日に脱スーツを奨励するなど、こうした動きは大手企業にも広がり、紳士服のスーツ市場全体はさえない。矢野経済研究所(東京・中野)によると2016年のスーツの販売額は2017億円で15年比10%減った。

紳士服専門店ではストレッチスーツの売り場が目立つ(東京・豊島の洋服の青山池袋東口総本店)

 そうしたなかでも「ストレッチスーツに限れば好調」と大手紳士服各社は口をそろえる。はるやま商事の衣服圧が従来の3分の1になる「ストレス対策スーツ」の売り上げは、通常のスーツの3倍という。

 ストレッチスーツの主要顧客というとこれまでは、お腹回りが気になる中高年だった。紳士服専門店のスラックス売り場のサイズ展開をみると、ゆったりしたはきごこちのツータックの品ぞろえは、ウエストサイズが90センチ以上が中心だ。

 ところが最近のストレッチスーツの売り場では、明らかに若い男性客が目に付くようだ。

 東京都渋谷区の紳士服専門店で試着していた28歳のシステムエンジニアの男性は「基本的にストレッチスーツしか選びませんね。楽なのが一番」と話す。この男性の前職は私服OKのベンチャー企業で、転職を機にスーツを着なければならなくなったので買いに来たという。

 AOKIが17年5~6月に実施した消費者調査によると、ビジネススーツに伸縮性を求める割合は20~29歳が44.5%に対して、30~44歳が35.3%、45~59歳の28.7%だった。明らかに若者のほうがニーズが強いことがわかる。

 なぜ、若者はスーツに伸縮性を重視するのか。「スーツはシルエットを重視」というファッションへのこだわり派は確かに中高年に比べて少ない。「最近の若者は我慢しない」とよく言われるが、それだけでもなさそうだ。

 高島屋の担当者は「最近のストレッチスーツは細身のシルエットでも、着心地など格段に進化している」と説明する。伸縮性を出すためには、ウールなどの素材にポリウレタンなどを混ぜるが、技術革新によって、その割合が少なくても機能性を発揮できるようになった。耐久性もよくなっており、長く着られるようになってきている。

 技術革新が進む背景について、北陸の合繊メーカーの社長は「欧米のラグジュアリーブランドからの要請がある」と明かす。高級ブランドは最近、他のブランドとの差異化の切り札として新素材への関心を強めている。ファッションショーなどで披露された新素材はその後、一般のアパレル、そして紳士のスーツにも広がっているのだ。アパレル業界ではいまだに「(着心地などを犠牲にして)我慢することもファッション」と言う人もいる。
(鈴木慶太)[日経電子版2018年1月22日付]

「日経College Cafe」のお勧め記事はこちら>>