就活は様々な人に出会うイベント
中国人留学生シューカツ体験記(3)
皆さん、こんにちは!曹です。この連載もついに最終回を迎えました。今回は皆さんに私から見た日本と母国である中国の就職活動の違い、私が就職活動で感じたことを紹介したいと思います。少しでも就職活動中の皆さんの参考になれば幸いです。
中国と日本の就職活動の違い
日本にいるとそれが当たり前になってしまいますが、日本の就職活動の形式はかなり独特で、長期間色々な努力をして仕事を探すイベントです。私の母国ではそもそも就職活動というイベントがありません。大学3年の終わりから4年にかけてインターンシップに参加し、卒業後、直接その会社に入社し、配属されるのが一般的な流れです。私が知る限り、このような形式が東南アジアの国々では主流だと思います。それに比べ、日本の就職活動は大学3年の3月から始まり、説明会に参加したり、セミナーに行ったりします。その中で、様々な会社を分析し、自分に合った会社にエントリーし、一次選考・二次選考などを通過してようやく内定を貰うという流れです。
一番の違いは、中国では基本的にその学生の専門分野に合った会社に入社するということです。そうすることによって、その学生の力も発揮できるし、本人も喜ぶと思うからです。一方、日本では就職活動をしている時によく「文理不問」や「文系大歓迎」といった文言を見かけます。たとえプログラミングのような専門性が強い仕事でも、新卒採用時は経験なしを前提にして募集している会社もたくさんあります。学生達の選択が広がりますし、また入社後新しいスキルを身に着けたい人にはベストですが、このことは外国から来た留学生は困惑する部分と思います。
一部、中国には日本のような就職活動もあります。大学が紹介した配属先に不本意な学生はその配属先を放棄し自力で仕事を見つけることになります。就職サイトもありますが、国が運営しているセンターで仕事を紹介してもらうのが一般的です。ところが、13億の人口を持つ中国では競争が非常に激しく、私のふるさと上海でも常住人口が2400万人を超えています。年間数十万人の卒業生がいる中、就職するのは容易ではないので、仮にセンターに行ったとしてもそう簡単に仕事は見つからないというのが事実です。また、中国での就職活動で一番重視されているのは能力で、何ができるのか、何を経験したかは必ず聞かれます。また、実力至上主義なので資格はとても重要視されていて、ITに関わる仕事であればJavaの資格、C言語の資格が必要とされることが多いです。
私が感じた日本の就職活動
就職活動を経て内定を貰った私が、日本の就職活動を終えて感じたことを皆さんに紹介したいと思います。まず感じたことは、日本の就職活動はスケールが大きいということです。就職活動の時期になると、よく駅でスーツを着た人を見かけるようになりますが、日本の就職活動はスケジュールが決まっているので、みんな一斉に動き出す、という大きな流れになります。次に感じたことは会社の多さです。日本に来る前に大手企業くらいしか知らなかった私も就職活動に参加することで、日本にはこんなに多くの企業があって、それらが日本の産業を支えているということを実感しました。これは就職活動があったからこそ知ることができたことでした。
さらに感じたのは日本の少子高齢化社会がもたらした人手不足の問題です。企業説明会で一生懸命学生を呼び込んでいる姿を見て、この問題の深刻さを感じました。最後に、これが一番強く感じたことですが、就職活動は人と人とが繋がっていく役割を果たしているということです。私は就職活動で様々な人に出会い、話を聞いたり、自分の夢を語ったりすることもありました。そして、自分の大学の人との交流も深めることができました。このことに気付いた時、就職活動はこんなにいいイベントなんだなと感じました。確かにつらいこともいっぱいありましたし、就職活動のためにアルバイトなどをやめたり、時には授業も休まなければならないということもありました。ただ、就職活動を終えた今感じることは、これは社会人になるための一歩でもあり、自分にとっていい鍛錬にもなったということです。
最後になりますが、これから就職活動を始める人、もしくは日本で就職するかどうかを迷っている人に伝えたいことがあります。それば、人生は一度きり、悔いのない道を選んで突き進んで行こうではないか、ということです。以上で私の連載が終了です。初めての試みだったので未熟なところが沢山あるかと思いますが、少しでも皆さんの役に立てれば幸いです。
*この連載は今回で終了します。
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