日本経済新聞 関連サイト

OK
skill up-自己成長

「わたし」が生まれた、横須賀(3)ヨコスカネイビーパーカー誕生
~「もしも」を本物に変えるなら

「わたし」が生まれた、横須賀(3) ヨコスカネイビーパーカー誕生~「もしも」を本物に変えるなら
authored by 八村美璃中央大学法学部法律学科3年

 こんにちは、八村美璃(はちむら・みり)です! 前回の記事では、大学受験の葛藤を経て、わたしの代表作となる「ヨコスカネイビーパーカー」を着想したストーリーについてお話してきました。今回は、わたしがネイビーパーカーで表現したかったことは何かについて、シェアしたいと思います。

「もしも」を本物にしていく一歩

「横須賀市民にこそネイビーパーカーを着てほしい」

 横須賀学生政策コンペに参加することに決まり、仲間たちである女子5人と放課後のモスバーガーへ。横須賀でどんなことがしたいのか、それぞれ考えを話していると場は白熱。「優勝したら市長に政策提言できる!」そんな希望に満ちた空気の中、わたしは思い切って他の5人に、あの時ひらめいたダジャレと、アイデアがいっぱい詰まったノートのページを見せました。

 「色々な問題がまちにはあるけれど、せっかくならわたしたちにしかできないことがしたい」
「確かに"バーガー"のダジャレで"パーカー"を作るってとってもくだらないけど、もしもそのパーカーを使って本当に横須賀を盛り上げられたら...」

 6人の感性が共鳴しあったこの瞬間、どうしたら「もしも」を本物にできるかを一緒に考え始めたこの瞬間、わたしの頭の中のネイビーパーカーが、「わたしたちのネイビーパーカー」へと変わっていきました。そんな感動に包まれていると、隣の席からこっそりおばあちゃまの声が。

 「あなたたち、横高生かしら? 盗み聞きしちゃって悪いけど、いつでも応援するわよ」

 優しいしゃがれ声の持ち主が、実は高校の大先輩だと知り、恐るべし地元! と気を引き締めながらも、幸先の良いスタートで感動に包まれました。白熱した議論も相まって、興奮のあまり気づけばあたりは真っ暗。そして中央大学から正式な合格メールが来たことを、家族に報告することもすっかり忘れる始末。次に席に鳴り響いたのは、母からのお叱りの着信。みんなに謝りながら急いでその場を後にして、わたしは空の色のようなちょっぴり暗い面持ちで、でもアイデアの余韻にちょっぴりわくわくしつつ、再び家へと向かう自転車を漕ぎ始めたのでした。

パーカーを着ることで一人ひとりが町おこしの主役になる

ただの「お土産」は、もういらない

 隣を見れば横浜や湘南。個性の強い県内のまちと比べながらは、「ネイビーバーガー? 海軍カレー? 観光グルメは食べたことない(笑)」と自虐する、どこか自信なさげな横須賀市民。米軍基地を行き来する外国人と、ドブ板通りでナチュラルにすれ違える媚びない異国情緒感、サーフィンができる海とは違う、ペリーが来航した新時代を引き寄せる海、ありのままで既に「かっこいい」まちである一方、その年の人口流出度ランキングではトップ独走状態。そんな中でわたしたちがコンペの課題にしたのは、政策や産業の在り方を「観光客」から「市民」に向けさせることでした。

 パーカーを、単なるお土産ではなく、いかに新たな政策として成立させるか。わたしたちは、横須賀市民にこそネイビーパーカーを着てほしいと考えました。学生だっておじいちゃんだって、みんなが横須賀をモチーフにしたオリジナルパーカーを着始めたら、それだけですごいことじゃないかと思うんです。

 でも、ただ作って売るだけでは、何も根本的な問題解決にはならない。人口流出だけでなく、高齢化、空き家、基地問題など様々な問題を抱えるこのまちは、「ヨコス感度」が高い人だけで盛り上げようとしても、きっと本当の盛り上がりは生み出せない。みんなでまちに向き合うためにも、まずは、普段「ネイビーバーガー」を食べない人たち、スカジャン(横須賀発祥なんです!)を着ない人たちこそが、無意識に持っていた自分の横須賀に対する想いに気づくきっかけが必要だと考えたのです。老若男女、まちへの感度も問わず、誰もが取り入れられるファッションを通じて、それぞれの心の底にある地元愛を引き出したい。ハードルを下げたい。だからこそ、私たちはパーカーをただのお土産ではなく、着た先の問題解決の糸口まで考えるという挑戦をしたのです。

初開催の政策コンペで、女子高生が優勝?!

 まず提案したのは、パーカーを着る人々が、横須賀への想いを表現するメッセンジャーとして集積される機能。それと同時に、着ることで一人ひとりが町おこしの主役になるという意味を込めて、「肌に触れる横須賀の新しいメディア」をコンセプトに掲げ、わたしたちは最終発表に臨みました。パーカーを着ることで商店街で割引が受けられるようにという「パーカー割」、ゴミ拾いでのユニフォーム化、パーカー購入の際に地域情報を送るメルマガに登録してもらうなど、パーカーをメディア機能として捉えるアイデアを発表しました。

 そうすることで、パーカーを単なる商品から、持続可能な政策へとステップアップさせることができると考えたのです。同級生に協力してもらったYouTubeでのブランドCMを制作し、これまた同級生の協力を得て創りあげたエンブレムをプリントして、実際の「ヨコスカネイビーパーカー」の試作品を作製。発表当日は、校則自由の学校らしく、制服の上に試作品を着こなして登場しました。すると、他の大学生、院生チームを横目に、なんと優勝してしまったのです。このニュースが地元紙に大きく取り上げられ、わたしたちの「もしも」は後に1000枚以上の普及につながる「本物」に向かって、階段を駆け上ってゆくのでした。

 次回、ヨコスカネイビーパーカー記念すべき発売について、また、その後どのようにして横須賀を盛り上げていったのかについてお話します。お楽しみに!