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日本企業の業績が好調! 
その理由を答えられますか?

日本企業の業績が好調! その理由を答えられますか?
ロボット業界は好調が続いている(安川電機の北九州市の本社工場)

 このところ企業の業績がすごく良いと聞いたけど、どうしてなの。業績の好調さはいつまで続くのかな。賃上げに期待したいけど、企業はもうけたお金をどこに回しているの。

 企業業績が好調な理由や今後の見通しなどについて、松崎雄典編集委員に話を聞いた。

――企業業績の現状について教えてください。

 上場企業約1600社(金融や新興企業など除く)の2018年3月期の純利益は、前期に比べて17%程度増える見通しです。2期連続で過去最高益を更新することになります。2017年1月下旬からは17年4~12月期決算の発表が本格化しますが、併せて公表する通期見通しを上方修正する企業も多いとみられ、増益率はさらに高まりそうです。

 18年3月期業績の特徴は、売上高が6%程度増える見通しであることです。17年3月期は売上高が減る中で、企業がコスト削減を進めることで過去最高益を記録しました。つまり前期は減収増益決算でしたが、今期は増収増益決算に転じます。

 好調決算をけん引しているのは電機とサービスです。電機では特に半導体の大幅な売り上げ増が目立ちます。パソコンや携帯電話の高度化、自動車のデジタル化、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」の普及などを背景に、半導体やセンサーの需要が爆発的に増えています。省力化投資の拡大に支えられて、ロボットメーカーも好調です。またサービスでは人手不足の深刻化を受け、人材派遣会社の業績が好調です。

――数年前まで日本企業は全般的に不振だった印象があります。

 08年秋のリーマン・ショック以降、日本企業は不振を極めました。09~12年の民主党政権下では、日本企業が様々な厳しい経営環境に直面している現状が「6重苦」と形容されました。

 しかし12年末の政権交代でアベノミクスが始まり、「超円高」と「厳しい環境規制」はほぼ解消され、「高い法人税」「経済連携協定の遅れ」「高いエネルギーコスト」も改善しつつあります。進展していないのは「厳しい労働規制」ぐらいでしょう。

 企業を取り巻く環境が改善する中で、ここへきて世界経済が同時に回復するという好機が訪れました。原油相場の下落に歯止めがかかり、資源国やエネルギー産業が復調しました。欧州債務危機が一段落する一方で、中国景気の先行き不安も払拭され、世界的に需要が回復しました。加えて多くの国で物価が上がらないので、拙速な金融引き締めが回避されていることも好都合です。

――企業業績の好調はいつまで続きそうですか。

 市場関係者の間では、19年3月期も増益基調が維持されるとの見方が大勢です。世界経済の回復基調は少なくとも19年半ばまで持続するとの声も聞かれ、海外からの追い風が続きそうです。

 19年3月期も最高益を持続できるかどうかを左右するポイントを4つ挙げます。第1に半導体需要の拡大は今後も続くのか。第2に中国景気が金融引き締めの影響で急減速する事態が起きないか。第3に北朝鮮などの地政学リスクが急激な円高を招かないか。第4に世界景気が過熱しすぎて金融引き締めによる株式市場の混乱が生じないかです。

――企業はもうけたお金を何に使っていますか。

 企業の利益は主に配当と内部留保に回っています。現金収入が増えても投資は増えない状況が続いており、上場企業の現預金は100兆円近くに達しています。かつて金融機関の貸し渋りを経験した企業経営者は現預金の取り崩しに慎重になっています。

 一方、企業のもうけに占める働き手の取り分を示す労働分配率は低下基調が続いています。政府は経済界に、今年の春季労使交渉で3%の賃上げを求めています。企業経営者にも景気を左右する消費押し上げには賃上げが必要との認識が広まっており、労使交渉の結果が注目されます。

■ちょっとウンチク
円高への耐性高まる
 上場企業は海外で稼ぐ割合が高いため、円高になると輸出採算が悪化し、業績が落ち込みがちだった。最近では円高への耐性が高まっている。内閣府が輸出企業に実施したアンケートでは、採算レートは1ドル=100.5円と、10年前の106.6円から6円ほど改善した。
 企業は海外での生産を増やし、地産地消へのシフトを進めてきた。材料の調達から販売まで現地通貨建てにすれば、為替変動のリスクを抑えられる。建設や不動産の大手が最高益になるなど、内需企業の業績が伸び、IT関連の若い企業が増えてきたことも円高に振れにくい構造になってきた要因だ。

(編集委員 松崎雄典)[日本経済新聞夕刊 2018年1月22日付、NIKKEI STYLEから転載]

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