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U―18起業家、輝く原石「21世紀少年」たち

U―18起業家、輝く原石「21世紀少年」たち

 2018年の年が明けても18歳以下の「U―18起業家」が表舞台に出てきた。00年以降に生まれ、幼少期からスマートフォン(スマホ)を使いこなし、あふれる情報に触れてきた世代。固定概念に縛られず、軽やかに億単位のカネを集める。そんな「21世紀少年」たちが織り成すのはどんな未来なのだろう。

16歳、1億円調達「全然少ない」

ワンファイナンシャルの山内奏人CEO(16)

 夜の街・六本木。バーやカラオケ店が立ち並ぶネオン街のオフィスで山内奏人(16)は働いている。「仕事帰りに補導されないかドキドキしてます」と笑う顔は、どこにでもいる高校2年生だ。

 クレジットカード決済アプリを手がけるワンファイナンシャル(東京・千代田)の最高経営責任者(CEO)。15歳だった16年5月に起業した。国立大の付属校に通い、授業が終わると六本木に毎日出勤してシステム開発に取り組む。

 「僕らが大企業に負けないのは、熱量くらい」。2人いる仲間は30代。年明けにはさらに開発者を採用する予定だ。

 同社はカード決済サービス「ONE PAY」を運営している。お金を支払う人のクレジットカードを、売る側がスマホのカメラでスキャンするだけで決済できる。

 「お客さんに『カード払いできますか』と言われて、その瞬間にダウンロードして使えるくらいのスピード感」を目指す。17年8月からサービスを始め、月間の決済額は数千万円に達した。

 サービス開始の翌月にベンチャーキャピタル(VC)のインキュベイトファンド(東京・港)とD4V(同)から総額1億円を調達した。代表パートナーの本間真彦(42)は「キャッシュレス化が進む中で、すぐに多くの人が使えるアイデアに魅力を感じた」と話す。山内については「起業家の中で突出して若いが、出資する上で年齢は全く気にしなかった」。

 一方の山内。「身の丈に合わない額を調達して人生を賭けていますよ。でも世界で戦っていくにはまだ(1億円は)全然少ない」と言い切る。

 そもそもクレジットカードも持っていない高校生がなぜフィンテックなのか。山内は「決済のデータが面白いと感じたから」と明かす。さらに業界の特性も指摘する。「銀行は決済や預金、貸金をずっとやってきたが、デザインの力で変えられる。めちゃくちゃでかい産業なのに、こんなに変えられる業界は他にない」

 小学生だった12年に「中高生国際Rubyプログラミングコンテスト」15歳以下の部で最優秀賞を勝ち取った。6歳の時、家に放置されていた父親のノートパソコン。ワードやエクセルで一通り遊んだ後、プログラミングにのめり込んだ。

 「それまで自分に自信がなかった」というが、コンテストでの受賞を機にスタートアップの経営者らが腕前を評価し、インターンとして声がかかる。彼らと触れあう中で起業は当たり前の選択肢になった。「個人でプロダクトを作っていて、カード会社と提携するときに『あ、会社作んなきゃ』ってなって」

 起業してからは無我夢中。「同世代で一番失敗したのは自分だと思う。めちゃくちゃいろんな人に迷惑をかけてきた」

 最近、かつて自分が優勝したコンテストで審査員を務め、入賞した小学生に度肝を抜かれた。「僕が生まれた01年はまだスマホがなかったけど、生まれた時からスマホがある子たちとは、すごい世代間ギャップがある」と真剣に話す。

 元日のきょうも六本木に通い、サービスの開発を急ぐという。「怖くて休めない。休んでいる間に、競合他社がすごい勢いで開発しているじゃないですか」

17歳、「仕事と勉強に境界線ない」

クリエイティブファンタジープロダクションズの武藤篤司社長(17)

 2015年5月29日。武藤篤司(17)は15歳の誕生日に社長になった。役所で印鑑証明を取り、映像制作会社のクリエイティブファンタジープロダクションズ(東京・港)を立ち上げた。「昨年あたりから、この先歩む人生がよく見えてきた」。大人びた表情で話す。

 動画やロゴ制作、アプリの開発などを受注している。バンドのミュージックビデオ制作なども手がけ、アプリ開発なら1件あたり50万~100万円で請け負う。

 武藤は仕事を細分化し、業務委託契約を結んだエンジニアなどに投げる。ある程度のプログラミングの知識はあるため、品質管理や不具合の修正は自分でやる。

 デザイン制作に触れたのは8歳の時。クラスの新聞係に選ばれた。初めは手書きだったが、品質を高めようと家のパソコンに入っていたデザインソフトを使うようになり、次第にのめり込んだ。小学校低学年の時、5000円で駄菓子店の引換券を制作したのが「初受注」となった。

 高学年から小学校に行かなくなった。家でデザイン制作をしたり、動画投稿サイト「ユーチューブ」に投稿したり。「親も無理に価値観を押しつけてこなかった」

 ネットで知り合った人づてにフリーの仕事が舞い込むようになったが、不満もあった。請け負い仕事は企業との契約もあり、制作物から自分の顔が見えてこない。「会社を作れば、自分の作品に価値を与えられるようになる」と起業を決めた。

 起業後も経験を積むため、フリーマーケットアプリのメルカリ(東京・港)やアプリ開発のエウレカ(同)にインターンとして通った。組織で働くうち自分に足りないものに気づく。「順序は逆だけど、勉強が自分のキャリアに必要だと分かった」。復学を決意した。

 16年から英国の高校に通い始め、フォトグラフィーや数学を専攻している。小学生の頃は話題の合う友達は少なかったが、「今の同級生はIT(情報技術)スキルが高くて話していて居心地がいい」。「仕事と勉強の境界線はあまりないけど、オフの日は彼女と過ごしてます」と学生らしい一面も垣間見せる。

 学業と事業を両立するため、大きな仕事は四半期に1回のペースで受けるようにしている。最近は別の選択肢も考えるようになった。「企業に勤めた方がデザイナーとして1つのモノに集中できるかもしれない」

 学校、経営、就職。17歳の未来は1つではない。

10代から教育「仲間と挑戦・創造を」

高校生・高専生向けの起業家育成イベントも開かれた(12月26日、東京都中央区)

 マイクロソフトのビル・ゲイツも、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグも10代で事業を起こした。未来の経営者を育てるのに早いに越したことはない。日本の起業家教育も10代が中心になり始めた。

 12月26日、東銀座。ドワンゴの会議室を借り、高校生向けの起業体験イベントが開かれた。首都圏だけでなく、広島県や大分県からも参加者が集まった。

 12人の高校生が4チームに分かれ、2日間かけて事業アイデアを競う。街に出て消費者の意見を聞くなど自ら動き、事業案を練る。この日は、サムライインキュベート代表取締役の榊原健太郎ら投資家や企業の担当者の前で最終プレゼンに挑んだ。

 「誰の問題を解決したいの?」「費用対効果は?」。審査員から厳しい質問が飛ぶ。榊原氏は「年齢は関係ない。本気の人に投資したい」と真剣だ。2014年からイベントを運営するまつりば(東京・渋谷)代表取締役の森真悠子は「起業を後押しするのが目的ではなく、仲間との挑戦や創造など、働く上で必要な起業家精神を身につけてもらいたい」と話す。

 審査員の一人、ドレイパーネクサスベンチャーズの中垣徹二郎マネージングディレクターも「大人に比べて背負っているものが少なく、瞬発力がある」と若者の起業を歓迎する。

 国も動き出した。文部科学省は16年度から小・中・高を対象に起業体験の推進事業を始めた。起業家の経験談を聞いたり、模擬的に起業したりする内容で、17年度は約10の自治体が参加した。

 5年に一度の総務省の就業構造基本調査によると、10代の起業家は12年に800人。最新の数字はまだ出ていないが、一つ一つの粒は大きく育っているに違いない。

=敬称略
(企業報道部 若杉朋子・吉田楓、映像報道部 森園泰寛・古谷真洋)[日経産業新聞 2018年1月1日付、日経電子版から転載]

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