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地方創生ワークショップ 首都圏の学生、静岡で経営者と交流

地方創生ワークショップ 首都圏の学生、静岡で経営者と交流

 青山学院と成城、フェリス女学院の3つの大学の1~2年生グループが2月上旬、静岡市の中小企業2社を訪ねました。首都圏の学生たちと地場の経営者との交流を企画したのは静岡市の就職支援財団。初の試みとなった地方創生を考えるワークショップの1コマです。どんな狙いがあったのでしょうか。

町工場の自社ブランド、職人芸と女性の発想融合

山崎かおり社長(左)の案内で板金加工の現場を見学(静岡市清水区)

 「学校や大学で経験できないことを通じて、就活やキャリア形成の視野を広げてほしい」と、就職支援財団は学生向けのワークショップ事業に力を入れています。東京でも開催実績を増やし、首都圏の大学とのネットワークを築いてきました。

 地方創生のワークショップは2月5日~9日の5日間、東京・八重洲のセミナー会場を借りて開催。2日目のプログラムが静岡の企業訪問でした。最初の訪問先は機械板金加工業の山崎製作所。作業用のジャンパー姿で出迎えてくれたのは、2代目社長の山崎かおりさんです。

 経理担当だった山崎さんが父親の事業を継いだ9年前、売上高は半減し、従業員20人ほどの町工場は瀬戸際に立たされていました。「現場を知らない素人」「女性に務まるはずがない」といった冷ややかな目を向けられる中、思い切った設備投資で生産工程のボトルネックを解消。先輩と後輩、同僚同士、男性と女性など、もろもろのコミュニケーション改革で職場は活気を取り戻し、鮮やかなV字回復を成し遂げました。

メタル素材のかんざしの値段は1万2960円(税込み)

 「みんながやりがいを持って働ける会社を作りたい」「夢のある仕事を続けたい」。山崎さんの熱い思いを、みんなで形にした自社ブランドの新商品がメタル素材(ステンレス)のかんざしです。

 女性チームが繊細なデザインを担当し、職人の技でより美しく仕上げたかんざしのラインナップは21種類。若い女性を狙った豊かな品揃えでアクセサリー・雑貨市場に割って入ろうというわけです。ちなみに、ブランド名は「三代目板金屋」。2代目の山崎さんが次の世代に技術を伝えていく意味を込めたそうです。

 山崎さんらの案内で、学生たちは板金加工の作業現場を間近で見学しました。若手の職人や女性社員が活躍の場を広げている町工場の息吹を体感したのではないでしょうか。

 昼食をはさみ、次に向かったのは駿河湾に面した用宗(もちむね)地区でした。シラス漁が盛んですが、よほどの縁や用事がなければ、静岡の人たちでも素通りしてしまいそうな小さな港町です。

観光まちづくり、「人を楽しませる」社員が担う

宿泊客の送迎用で使う三輪タクシーに試乗(静岡市駿河区の用宗地区)

 CSA不動産の社長、小島孝仁さんが現地オフィスで待っていました。本社を置く静岡市の街中のリノベーション事業で培ったノウハウを生かそうと、1年前に観光事業に参入。古民家を改装した一棟貸しの宿や、ジェラートの専門店などを相次いでオープンさせています。

 「昔懐かしい路地裏があって、海があって、漁港がある。ただ歩いているだけでも気持ちがよい。用宗の魅力を最大限に引き出せる青写真を描いています」。山崎さんのものづくりがそうであるように、小島さんはオンリーワンの観光まちづくりで「静岡市のブランド力」を磨き、みんなで地場産業を盛り上げたいと考えているのです。

 8年前に2人で始めた会社の従業員は26人に増え、外国人の採用にも積極的です。学生たちとの質疑応答の中で、小島さんからこんな話が出ました。「人を楽しませるのが僕たちの仕事。そんな若い人材を求めています」。働くということの意味を学生たちに問いかけるワンシーンでした。

 「地方に目を向ければ、働きがいのある会社がたくさんある」。こんなことを学生たちに感じ取ってもらうのが、ワークショップの狙いでした。地方への興味や関心が高まり、それが地方の企業に就職する動機付けになれば万々歳というわけです。

 就職支援財団の事務局長、鈴木寿彦さんによると、首都圏の大学では地方出身の学生の比率が年々低下しており、静岡県出身者も例外ではありません。「県内出身の学生のUターン就職にこだわらず、首都圏育ちの学生のIターン就職につながる取り組みが必要」と考え、その手始めとして地方創生のワークショップを企画しました。参加した15人のうち静岡県出身は2人だけ。「地方のことを知りたい」と、公募に手を挙げた学生もいたそうです。

中小企業の魅力、学生のIターンに繋げる

一棟貸しの宿に改装予定の古民家で事業計画の説明を受ける(用宗地区)

 静岡商工会議所の全面協力により、企業訪問当日の昼食会場では地元の若手経営者らが同席。静岡の名物料理を囲んで学生たちと交流しました。初日の東京のセミナーでは、有限責任監査法人トーマツ静岡事務所の増山達也さんが地方創生をテーマに講演。特許庁が旗を振る地方創生の「事業プロデューサー」として静岡の元気な中小企業を支援している専門家の話は、盛りだくさんの内容でした。

 ワークショップの後半3日間は、お題への挑戦でした。「学生ならではの企画を提案し、地方を元気にしよう!」。提案相手は山崎製作所とCSA不動産です。かんざしを、あるいは、用宗を知ってもらうためのアイデアを4つのグループに分かれて考えてもらい、コンペ形式で発表してもらう趣向でした。

 「母親から娘への贈り物として50~60代にアピールを」「若い人のふだん使いをプロデュースしよう」といった提案や、「用宗を映画のロケ地に」「レトロな街並みを目指そう」というプランをまとめ上げ、鈴木さんは「期待以上のプレゼンテーション」と二重丸を付けました。

 「これからのインターンシップや就活にあたって、貴重な経験でした」「とにかく楽しかった」。学生たちの満足度も高かったようです。「ものづくりの面白さを知りました」とは、男子学生の感想です。初日のアンケートで、静岡県外出身の13人の中で「地方(静岡)に関心がある」と答えたのは3人だけでした。しかし、最終日のアンケートで、その数は11人に増えました。次につなげるには、どうすればよいのか。鈴木さんたちは新たなアイデアを練っています。

5日間のワークショップを終えた全員が「楽しかった」と振り返る(東京・八重洲のセミナー会場)

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