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僕がゴミを拾うわけ(3)「ごみ拾い×就活」 イメージ戦略で人を巻き込む

僕がゴミを拾うわけ(3) 「ごみ拾い×就活」 イメージ戦略で人を巻き込む
authored by 谷村一成中央大学4年生

 NPO法人greenbird(グリーンバード)は、2002年に原宿表参道で表参道欅会の青年部の方々によって設立された。明治神宮へと続くけやき通り。そこが冬になると一面がイルミネーションで飾られ、大勢の観光客で通りはごった返す。そのイルミネーションが1991年にスタートしたことも影響してなのか、当時のけやき通りはゴミだらけ。どんなに拾っても、翌日にはまた同じ量のゴミが落ちているありさまだったという。

キリのないゴミ どう減らす?

東京・表参道での灰皿清掃時に倉庫で作業する筆者

 拾っても拾ってもキリがない日々。そんな中、当時のメンバーの方々は気がついたのだった。「どんなに一生懸命ゴミを拾っても、ポイ捨てする人が減らないとゴミは減らない」と。それ以来、グリーンバードはイメージ戦略を活動の柱にしている。

 グリーンバードが大切にしている2つの考え方がある。1つ目は、「ゴミを拾う側が街の中でとにかく目立つこと」だ。真面目にゴミ拾いをしている集団を想像してみてほしい。無言で地面を見て黙々と作業している姿は、まるで何かの罰ゲームでもしているかのように、つまらない集団に見えてしまう。だが、グリーンバードは緑色のカッコいいビブスを着けて、お洒落な軍手をはめて、みんなで固まってワイワイごみ拾いをする。道行く人々は、「なんだ?あの集団...」と気になって仕方がない。なんだか楽しそうだから今度自分も参加してみようかな?と思ってくださる方もいるかもしれない。ゴミを拾う側がその街で存在感を発揮することで、この街を綺麗にしている人が誰なのかを知らせることで、その街にポイ捨てしにくい雰囲気ができるのだ。ふとポイ捨てしたくなった時に、ゴミを拾う私たちのことを思い出して、思いとどまるのではないか?と考えている。

ゴミを拾った人は捨てない

東京・表参道でのゴミ拾い風景

 2つ目は、「1度ゴミを拾った人は2度とゴミを捨てない法則」だ。ごみ拾いに1度でも参加した人は、その後ふとポイ捨てしたくなったとしても、「あの時ゴミを拾った自分はどうしたんだ?」と、ごみ拾いに参加した経験が抑止力となり、ポイ捨てを思いとどまるのでは?という考えだ。そこで、どんなきっかけでも、1度だけでもいいからごみ拾いに参加してもらうことをグリーンバードでは大切にしている。

 さて、前回の記事で書いた通り、インターン生として「グリーンバードを大学生世代に広める」という宿題に取り組んでいた私は、この2つ目の法則を応用することを思いついた。どんなきっかけでも、1度でもいいから、これまでごみ拾いに参加したことがない人に参加してもらいたい。そのためには、ごみ拾い以外の興味で惹きつけるのが効果的なのでは?と考えたのである。

「ごみ拾い」×「就職活動」

 とはいえ簡単にアイデアが出るわけではない。机の上で必死に考えたところで何も浮かばない。そんな時に、博報堂出身であるグリーンバード代表の横尾俊成さんからアイデア発想方法を伝授された。せっかくなのでご紹介したい。それは非常に単純なやり方だ。「ごみ拾い×◯◯をひたすら100個書く」というもの。ただそれだけだ。もしそれでも何もアイデアが出てこなくなってしまった時には、このような対処法がある。まず、あいうえお順に思いついたものをとにかく書く。(例:あ→ごみ拾い×愛、い→ごみ拾い×隕石、う→ごみ拾い×海...) そして、この中から企画化できそうなものをピックアップしていく。(例:ごみ拾い×愛→マッチングごみ拾い? ごみ拾い×隕石→宇宙ゴミを拾う!? ごみ拾い×海→ビーチクリーン!...)これがなかなか大変で、途中から家や街にあるものを見回して、無理やりごみ拾いに組み合わせたり、すでに思いついているものから連想ゲームのようにして考えたり、苦しみながらなんとか100個書き出した。これはとてもいい思考訓練になったと思う。

 その結果思いついたアイデアが、「ごみ拾い×就職活動」だった。ゴミ拾いの「拾」の音読みが、就職活動の「就」の音読みと同じことから、「拾活おそうじ」と名付けた。ターゲットは就職活動中の大学3年生と企業の人事担当者だ。ゴミ拾いを通して体を動かしながら、私服で普段の就職活動より近い距離で学生と人事の方が交流できることを前面にアピールして宣伝した。

「拾活おそうじ」に参加してくださったみなさん

 当日、就職活動中の大学3年生が約20人、ベンチャー企業を中心に企業の人事担当者の方などが5人参加していただいた。スーツの緊張感から解放され、ゴミ拾いという共同作業を通して、会社説明会やOB訪問以上に話が弾んでいた。ゴミ拾いのあとは近くのレストランで交流会を行い、その場でインターンが決まる学生が何人か生まれるなど大変盛り上がった。

 参加した学生の9割がなんとグリーンバード初参加。「就職活動」という切り口でこれまでゴミ拾いに参加したことがなかった学生たちを巻き込むことに成功した。参加者の評判も上々で、多くの方から「予定が合っていれば参加したかった」「すぐに第2弾を開催してほしい」との声が上がった。私が企画した人生で初めてのゴミ拾い企画は無事成功に終わった。その日の夜、帰宅した私は緊張から解放されて、そのまま布団の上で動けなくなってしまったことをよく覚えている。この「拾活おそうじ」は、インターン生の後輩たちや、青山学院大学や慶應義塾大学などのチームに引き継がれ、現在でも開催されている。

 ゴミ拾いに限らず、社会貢献活動にはどうしても「つまらない」とか「大変そう」だというイメージがあり、それが人々を参加から遠ざけてしまっている。活動の見え方を工夫することや、他の要素を掛け合わせることで、ゴミ拾いの持つマイナスなイメージを払拭し、新しい可能性を付加することができるのだ。