日本経済新聞 関連サイト

OK
career-働き方

面接道場「スタバでバイト」は刺さるか?

面接道場 「スタバでバイト」は刺さるか?
authored by 曽和利光

 就活生の皆さん、こんにちは。人材研究所(東京・港)の曽和利光です。学期末試験が終わり、就活に本腰が入ってきた頃ではないでしょうか。この面接道場では、就活生が模擬面接に挑戦します。今回の質問は「あなたが仕事を選ぶ基準は何ですか?」。仕事観を問うもので、個別企業の具体的な志望動機にもつながる重要なテーマです。一緒に考えてみましょう。

参加者
羽鳥裕さん
(東洋大学文学部3年、男性)
田中美佐さん
(早稲田大学国際教養学部4年、女性)
原優太さん
(名古屋工業大学大学院修士1年、男性)
※希望があれば仮名にしています。

仕事観に関する質問は、就活では定番の話題だ

曽和さん:それでは就活相談室に集まってくれた3人に順番に尋ねてみましょう。まずは羽鳥さん。あなたは何を基準に仕事を選びますか。

羽鳥さん:その会社が、どれだけ人材を大事にしているかで選びたいと思います。しっかり休みがとれるか、社員一人ひとりに仕事の負荷がかかりすぎていないか、教育プログラムや人材育成の環境整備がされているか、などに注目しています。

曽和さん:それはなぜですか。

羽鳥さん:スターバックスコーヒーでアルバイトをしています。ここはスタッフを教育する体制がしっかりできているなと感じています。私も社会人になって教える立場になったら、教育制度が整った会社で後輩を育てていきたいです。

曽和さん:どういう会社を受けたいと考えていますか。

羽鳥さん:まだ絞り切れていません。金融業界の志望度が高いです。損保や証券会社に入って、日本企業が海外進出する際に手助けして、一緒に成長していきたいなと......。

曽和さん:はい、ありがとうございます。羽鳥さんの話は、前半が人の育成に関わりたいという内容でした。後半は会社が会社をサポートするという話で、前後が全然関係ないですね。

 このままでは、ただのこじつけです。論理的な思考能力が欠けていると判断されかねません。会社選びの軸は何も「業界」だけではありません。仕事の内容や職場の雰囲気、給与水準など、さまざまな要素があります。無理やり業界で説明しなくてもいいですよ。

 とにかく自分の経験を振り返り、自問自答を繰り返しましょう。経験には、何か会社選びにつながるきっかけがあるはずです。スタバのバイトの経験でも良いですよ。「指導した後輩がものすごく腕を上げて、社内の賞を取って感謝された」といったエピソードがあるかもしれません。

■情報量はなるべく多く

曽和さん:では続いて田中さん、お願いします。

田中さん:社会に在る課題を、自分の手で解決できないだろうかという視点で選んでいます。

 例えば、自分が現場で見聞きしたものを伝えることによって、より多くの人に問題を分かってもらいたいです。問題が起きている現場と、関係のない人たちをつなぐことで問題を解決したくて......。

面接官に与える情報量はなるべく多くしよう

曽和さん:現場を重視しているのは分かりましたが、それはなぜですか。

田中さん:現場でしか分からないことがあるからです。私は米国に1年間留学しました。ちょうど大統領選の時期と重なり、マルコ・ルビオ候補の集会に行ったんです。勢いのある政治家は言葉も圧倒的で、現場の雰囲気にも勢いがあります。

 ルビオ氏の集会では、そういう勢いは見られませんでした。その後、ルビオ氏は敗退しました。現場でしか感じ取れないことがあるのだなと思いました。

曽和さん:なるほど。何を基準に考えているのかが分かりました。田中さんは就職留年したということですが、どういう業種や企業を受けてきたのですか。

田中さん:新聞社や通信社、テレビ局です。

曽和さん:その回答をもっと掘り下げることはできますか。例えば新聞社の中でも全国紙がいいとか地方紙がいいとか。あるいは政治部なのか社会部なのか。そういう話は聞かれなくても自分から言わなくてはいけません。就活生の皆さんはシンプルで端的に答える方が分かりやすいと思うかもしれませんが、情報量が少ないと、面接官がイメージできずに、よく分からないまま終わってしまうということもあり得ます。

■話の根深さで説得

曽和さん:では最後に原さんに話してもらいましょう。

原さん:二つあります。まず、人々の生活を健康的で快適にするような製品やサービスを扱う会社であるということです。もう一つはグローバル展開を積極的に進めている会社です。海外での販売比率が高い会社かどうかを見ています。

曽和さん:人々の生活を健康的にするということに着目した理由は何ですか。

原さん:子供の頃、家族で山の麓などにしょっちゅうキャンプに行っていました。楽しい思い出ですが、最近、父に「なぜキャンプに行っていたのか」と聞くと、母がぜんそく持ちで、私もどちらかというと体力がなかったので、「空気がいいところに行っていた」と言われたのです。「そういうことだったのか」と。今は人々が健康的な生活ができる環境を作りたいと思うようになりました。

思いの「根深さ」をきちんと伝えることが重要だ

曽和さん:とてもいいと思います。就活生の多くは「人々の生活を健康で快適することです、以上」で終わってしまいます。これでは面接官も突っ込みようがありません。話す内容には「いかに根っこが生えているか」が問われます。

 原さんのように、お母さんや自分のライフヒストリーに基づく話が根っこにあるのは強いですね。これが例えば「中国の経済成長によって世界的に大気汚染が進み、社会問題になっているので、これを解決したい」というような理屈で説明されたら、面接官は「ふーん」で終わります。「最近みんながエコと言っているから、それに乗っかっているだけでは」と思われる。ここで「こいつは本気だ」と思わせられれば印象が変わります。

 「好きこそものの上手なれ」という言葉があるように、「そんなに根深い思いがあるなら、その仕事を与えたら、きっと頑張るだろう」と判断されるのです。

 ただ、根深い話はどうしても長くなりがちです。グループ面接などで時間が限られている場合、長々と話しては「空気が読めないやつだな」と思われるかもしれません。その場合はストーリーを省いたり、短い単語に置き換えるなど、表現に国語的な工夫も必要になるでしょう。

曽和利光(そわ・としみつ)
 1971年生まれ。京都大学教育学部卒。リクルート人事部ゼネラルマネージャー、ライフネット生命総務部長などを経て2011年、主に新卒採用を対象にしたコンサルタント事業の人材研究所を設立。著書に「就活『後ろ倒し』の衝撃」(東洋経済新報社)、「『できる人事』と『ダメ人事』の習慣」(明日香出版社)など。

(構成 鈴木洋介)[日経電子版2018年2月13日付]

「日経College Cafe」のお勧め記事はこちら>>