日本経済新聞 関連サイト

OK
skill up-自己成長

心をつかむ雑談のコツ

心をつかむ雑談のコツ

 「今日はいい天気ですね」「そうですね」「......」――。商談や面談などで相手とのオープニングトークが弾まず、その後の仕事にも影響した経験をもつビジネスパーソンは多い。雑談を甘く見てはいけない。心をつかむ会話術を探った。

 「信頼関係を築くうえで雑談は重要だ」と指摘するのは、営業方法などのセミナーを開くコミュニケーション総合研究所(東京・千代田)の松橋良紀代表理事。例えば売ろうとしているモノの商品力に大きな差がない場合、会話で商談相手に信頼感を得られるかが重要になるという。

 相手が初対面の場合、オープニングトークは難しい。まず相手への関心を示し、雑談で相手のことを知ってニーズを探ることが大事だ。有効なのが名刺で、相手の部署名から仕事内容について聞いたり、名前の読み方や由来を聞いたりすると本題の商談にスムーズに移行しやすい。

 「やはりこの時期はお忙しいですか」。企業研修を手がける、らしさラボ(東京・品川)の伊庭正康社長によると、このフレーズは誰に対しても、どんな時でも使えるという。「今はどうなのですか」などと問えば次の会話につながりやすい。同じ相手と再び会う場合にも有効だ。

 雑談で多い失敗が自分のことを話しすぎることだ。伊庭氏は「雑談は相手との違いなどお互いを知ることだ」と話す。自分が話し過ぎると相手が話す意欲を失うケースが多いという。

 ではオープニングトークの時間はどのくらいが適当か。松橋氏によると、例えば1時間の商談では相手のニーズなどについて冒頭から30分間ほど話してもらうことが目安になるという。相手にニーズを話してもらわなければ、押し売りになってしまう恐れがある。

相手と信頼関係を築くうえで雑談は重要だ

 相手のニーズを引き出す質問力も重要だ。「オープンクエスチョンで質問すれば、相手との会話が弾む」と松橋氏は指摘する。

 オープンクエスチョンとは英語の「5W1H」などで質問する方法を指す。例えばパソコンを顧客企業などに売りたい場合、「パソコンのメモリーが大きいとどんな利点があると思いますか」といった具合だ。一方、「そうですね」で会話がとぎれる場合は、相手が「はい」か「いいえ」で答えるような尋ね方をしているという。

 話の内容だけでなく、ジェスチャーなどを交え相手の話をどう聞くかも重要だ。相手と目を合わせることや、相手の話に合わせてうなずくといった基本的な動作が信頼関係を築く一歩となる。

 雑談で触れない方がいい話題もある。議論になってしまうことが多い宗教や政治の話題は避けた方が無難だ。「プロ野球球団の話題も各自が持つこだわりが強く議論になりやすく、避けるべきだ」と伊庭氏は指摘する。国籍や住所の細かい部分もデリケートなため避けた方がよい。

 読書や旅行の経験を生かすことも効果的だ。大事なのは、相手の関心に合わせて話題を仕入れ、適切に使い分けることだ。例えば商談相手が経営陣の場合、経営者が講演するセミナーに参加して講演内容を話題にしたり、商談先の企業の創業者が書いた本を読んだりして情報を集める。

 商談が終わってすぐ解散するのはもったいない。商談後の雑談は、翌日にキャンセルされるなどの事態を防ぎ、契約を確かなものとする作業にもなる。「キャンセルを防ぐには、5~10分の雑談で個人的なつながりを作って席を立つ方が良い」(松橋氏)

 雑談が得意でない人も、回数を重ねて経験を積めば相手の心をつかむ会話ができるようになる。雑談力を鍛えれば、よりよい人間関係を作ることにつながる。

頑張りすぎず自然体で(らしさラボの伊庭社長に聞く)

 雑談のポイントは何か。らしさラボ(東京・品川)の伊庭正康社長に聞いた。

 ――表情や声音で気をつけるべきポイントは。

らしさラボの伊庭正康社長

 「自然体であることが一番大事だ。もともと表情があまり豊かでなくても、頑張りすぎて力むと逆に『信用できない』と思われる」

 ――年上と年下で、話す際の注意点は。

 「年上の方とは基本は教えてもらうというスタンスで、相手を否定しないことが必要だ。年下の場合、相手を年下と思わないこと。世代を意識した発言は相手との距離を作ってしまう。座り方でも、背もたれにもたれて貫禄を出さない」

 ――相手の性格や表情によって気をつけるべき点は何ですか。

 「表情豊かな人には自分のエピソードを話しても良い。ただ、表情があまりなく早口な人は目的志向が強く結論を急ぐ傾向がある。合理的な考え方の人が多く、くどくどと自分の話をしない方が良い」

 ――飛び込み営業など相手が乗り気でないときの対処法はありますか。

 「飛び込み営業では、名刺や資料をゆっくり出すことが効果的だ。名刺を出している間に少し話ができる」

 「相手の関心がある点や大事にしている点に気づき、触れると良いだろう。例えば、接客に注力している喫茶店なら『忙しくても店員の方の笑顔がすてきですね』という具合だ。ただし、話す内容は自分の専門領域のことにする。自分が専門にしているプロとして話すので、相手も聞いてくれる」
(企業報道部 近藤彰俊)[日経電子版2018年2月6日付]

「日経College Cafe」のお勧め記事はこちら>>