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挑戦し続ける人(3)サイバーエージェント曽山哲人取締役
「『やり抜いた』という実感が自分を育てる」

挑戦し続ける人(3) サイバーエージェント曽山哲人取締役 「『やり抜いた』という実感が自分を育てる」
構成:古屋美枝 撮影:大丸剛史
authored by 中野智哉株式会社i-plug代表取締役社長

 第3回は、日本で「CHRO(最高人事責任者)」といえば、必ず名前が上がる、サイバーエージェント取締役人事管轄の曽山哲人さん。話題の人事制度を手掛けたり、人事関連の著書も出版するなど、今やすっかり人事の専門家ですが、新卒のときには伊勢丹に入社したという経歴も。適性検査の結果を見ながら、子どものときや学生時代のエピソードをお伺いしました。

子どものときからの「規律を守る」という性格がベースに

曽山哲人(そやま・てつひと) サイバーエージェント取締役 人事管轄。1974年、神奈川県横浜市生まれ。上智大学文学部英文科卒業。1998年、新卒で伊勢丹に入社。紳士服配属とともに通販サイト立ち上げに参加。1年後の1999年に当時社員20名だったサイバーエージェントに転職。インターネット広告の営業担当として入社し、のちに営業部門統括に就任。2005年、人事本部設立とともに人事本部長に就任。2008年から取締役を6年勤め、2014年より執行役員制度「CA18」に選任されたのち、2016年より現職。おもな著書に『強みを活かす』(PHPビジネス新書)、『クリエイティブ人事 個人を伸ばす、チームを活かす』(光文社新書)、『最強のNo.2』(ティスカヴァー・トゥエンティワン)がある

――曽山さんの適性検査を拝見しましたが、全般的に点数がすごく高いですね。こちらの点数は約4万6,000人の学生のデータをもとに偏差値表示になっているんですが、曽山さんはほとんどの項目が60近辺でした。もっと皆さん、項目によって点数にバラつきが出がちなので、とても珍しいです。これを見ると、いろんな経験をされてその中で成長されてきたという感じがします。

 ありがとうございます。

――特にズバ抜けて高かったのが発信力。

 あ、一応、発信してますね!(笑)弱みは「考え抜く力」って書いてある。鍛えたいですね!

曽山さんの検査結果の一部(検査結果の全体は一番下にあります)

――この結果を見ていただいて、何か思い当たることがありますでしょうか。

 ここに規律性ってありますけど、もともとは僕、規律を重視する人間なんです。エニアグラム(性格タイプ論)では完璧主義者って出るし、血液型もA型。何かタイプ診断をすると、たいてい「細かい」「神経質」「せっかち」って出るんですが、自分でも当たっていると思ってます。そのうえで、サイバーエージェントに入ってから、自分で考えることや、リスクをとってやることが大丈夫なんだ、ということがわかって、よりのびのびとやれるようになった、という感じですね。根底がすごくガッチリしてて、その上にチャレンジする気持ちが乗っかった、という。この適性検査の結果を見ていても、それを感じます。

――なるほど。大学のときはどんな学生でしたか?

 ラクロス部のキャプテンをやっていて、完全に規律派でしたね。時間に絶対に遅れなかったし、遅れるメンバーにすごく厳しかったです。

――規律性が高い性格というのは、昔からですか?

 子どもの頃からですよね。約束を守れ、と親から言われていたせいか、ルールを守ることの重要性というのは、子どもの頃から鍛えられていた感じですね。

――子どものときに、曽山さんが時間をかけて取り組んでいたことは何ですか?

 小学校のときは、マンガを描くことや、工作が好きで、マンガ・イラスト倶楽部というのに入っていました。クリエイトするのが好きでしたね。ただ、親からは学校に遅れずに行くことや、宿題をちゃんとやることなどをすごく厳しく言われていたので、それがベースになっています。

「ラクロスで組織を作るのはすごく難しいと学んだ」

――中学生のときはどうでしたか?

 小児喘息があったので、激しい運動はダメだっていうことで、卓球クラブに入ったんです。卓球なら全然大丈夫だろう、と思ったら、すごい大変なんですよね(笑)。ツラかったですけど、卓球自体はおもしろかったです。でも、上手くはならなかったんですよ。大会に行くと、すごい上手い人がたくさんいて、「こんなにすごい人たちが出ているんだから、全然勝てるわけない」と思っていました。

――その後に、ダンスを始めたんですよね。

 中3の始めくらいに、地元の友だちに「ダンスやろうよ」って誘われたんです。その頃、「元気が出るテレビ」というTV番組で「ダンス甲子園」という企画が始まって。めっちゃ面白い! カッコいい! しかも周りでダンスをしている人はいない! これは、「空いてる!」と思ったんです。「空いてる」というのは、結構、僕の中で大事なんです。

――それからはずっとダンスを?

 そうです。高校卒業手前までやってました。友だちと一緒に、東京のダンススクールに週に1回通って、高校のときに「ダンス甲子園」の全国大会に出たんです。めちゃくちゃ練習して。そこで、最終的に3位を取れました。いちばん大きかったのは、目標決めて頑張ってやればできるんだ、と知ったこと。それはやっぱり、自己革新のベースになっていると思いますね。ダンス甲子園はすごく大きかったと思います。

――その後は、上智大学に行かれたんですよね。

 1浪したんです。高校3年のときは勉強をちゃんとしていなくて、このままだと志望大学に行けないな、と思って。1年間、すべての欲望を全部消して勉強する、という、人生の意思決定をしたんです。食事のときと寝るとき以外はずっと勉強してましたね。もう、量をこなすしかなくて、効率とかまったく考えなかったです。ひたすら勉強をしていましたね。

――それもスゴいですね!

 でも、これもまた、努力すれば結果が出るんだな、って感じで、合格して。やっぱり目標を決めてやるっていうのは大事だな、と思いました。

――じゃあ、大学受験が2回目の自己革新になったわけですね。

 そうですね。大学時代は4年間、ラクロスをやっていました。ラクロスを始めたのも、ダンスと同じで、「空いてる」ところだったから。みんながこれから始めるスポーツ、言ってみればスタートアップ系の部活だと言われて、入りました。僕は喘息を持っていたので、ゴールキーパーしかできなかったし、別にラクロスがすごく上手かったわけじゃないですけど、4年のときにキャプテンを任されて。頑張るとそういうチャンスがもらえるんだ、と思って、これも嬉しかったですね。ダンスと、大学受験と、ラクロス、っていうのは僕の中ですごく大きいです。

――まだ人があまり足を踏み入れていない、「空いてるところ」というのが、毎回のキーポイントなんですね。

 そうですね。大学を卒業して、最初に入社した伊勢丹でイーコマースに携わったとき、「ネット」という、4つ目の「空いてるところ」を発見した。そのとき、ネットはこれからすごい伸びるだろうと思って、(サイバーエージェントに)入った、という感じです。

適性検査では「細かい」「神経質」「せっかち」と出ることが多いと話す曽山さん

強いチーム作りを学ぶべく、新卒で伊勢丹に入社

――伊勢丹にはなぜ行かれたんですか?

 僕自身、ラクロスで「組織」を作るのはすごく難しいと学んだんです。社会人になったら、すごいチームを作っている会社で、チーム作りを学びたい、と思っていて、業界とか業種はそんなにこだわりはありませんでした。いろんな業界や業種を受けて、その中で伊勢丹を選んだのは、やっぱりファッションっていうのがオシャレでカッコいいな、と思ったからですね。

――伊勢丹に入って、最初はどこに配属されたんですか?

 最初の正式な配属は紳士服で。新宿店のスーパーメンズという、とても大きなサイズのハイブランドの服を日本で唯一取り扱っているという売り場で、日本各地からお客様が買いに来ていたんです。それをネット通販してみたら、すごく売れたんですよね。それで、ネットはこれから伸びるに違いない、と思って、雑誌でネット業界の求人を探したんです。

――それでサイバーエージェントに入られたんですね。

 そうです。営業として入社して、4~5年経った29歳くらいのときに営業の責任者になり、30歳のときに人事に移りました。

「おもしろい」という自分の感覚を信じてやりがいのある仕事を探して

――では最後に学生さんに向けて、メッセージをお願いします。まず、大学時代の過ごし方について、アドバイスを。

 とにかく、振り切れてほしいですよね。何でもいいんです。遊びでもいいし、部活でもいいし、研究でもいい。やり抜くと見えてくるものがあるので、結果が出てなくていいからやり抜いてほしいです。「やり抜いた」という自信がある人って、自己革新できるんですよね。

――さらに、今、どういう会社を選べばいいでしょうか。

 1つしかないですね、「伸びる市場の会社を探せ」。これだけです。たとえばネットもまだ伸びますし、介護や教育など、今後伸びるであろう市場に行くというのは大事だと思うんです。

――会社に入ってからはどうしていくと良いでしょうか。

 自分に嘘をつかずにやっていってほしいな、と思います。おもしろいか、つまらないかの感覚って、入社してから数年が大事だと思うんです。そこから先は環境に染まってしまうから。もし、会社に入ってからすごく違和感があって、このままだと自分がもったいないと思うなら、部署を異動するか、会社を変えたほうがいいですよね。素直に、自然体でやってほしいですよね。おもしろいとか、ワクワクするとか、何かやりがいを感じることを探していってほしいな、と思います。