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career-働き方

レクサス販売のエース、先読み提案で心わしづかみ

レクサス販売のエース、先読み提案で心わしづかみ
東京トヨペット レクサス青山セールスコンサルタントの藤崎丈明さん

 トヨタ自動車の有力販売会社、東京トヨペット(東京・港)は東京都内でトヨタブランド店のほか高級車ブランド「レクサス」の販売店を運営する。レクサス青山セールスコンサルタントの藤崎丈明さん(39)は優れた営業成績で7年連続で社内賞を獲得。「口下手で営業は不向きだった」が、顧客の予定を把握し機敏に動く気遣いで信頼を重ねてきた。

 レクサスは独メルセデス・ベンツやアウディなど輸入車ブランドと激しい販売競争を繰り広げる。特に東京・青山は富裕層が多く競合店がひしめく激戦区。そんな場所で藤崎さんは社内賞「グランドスラム」を2010~16年に連続受賞した。グランドスラムは新車販売台数や入庫回数などで年間を通じて一定の成績を収めた一部の営業担当者にしか与えられない。いかに顧客と強固な信頼関係を築けているかが問われる。

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 入社5年目からレクサス店で働き「お客様からの問い合わせにどうレスポンス(対応)するか」を最も重視する。迅速さに加え「顧客の気持ちを先読みする」のがポイントだ。例えば久しぶりに点検の予約をした顧客がいたら「そろそろ車を買い替えたいのでは」と連想する。「お客様に『買いたい』と言わせるのは失礼」と考える藤崎さんは常に自分から先回りして提案することを欠かさない。

 そのための必須アイテムが2冊のスケジュール帳だ。1冊は毎日の予定管理に使う短期的なもの、もう1冊には1年単位で顧客の予定を書き込む。「子供が生まれるから大きな車がいいな」「リースの満期がそろそろだ」――。顧客との電話やメールの一つ一つに目を配り、見逃してしまいそうな小さな情報も丁寧に書き留める。後で見返し、予定から逆算して最適なタイミングで提案につなげている。

 学生時代は警察官を志望していた。もともとは無口で人と接するのが苦手。アルバイト先の先輩から「それなら営業がいい」とアドバイスされたことがきっかけとなり東京トヨペットに01年入社した。

 ポリシーは「お客様の不安な気持ちを少しでも解消する」ことだ。原点は初任地の江東区内の店舗で経験した忘れ得ぬ出来事にある。入社2年目のある日、商談の最中にある顧客が事故に遭ったと連絡を受けた。そのまま商談を続けていると「自分が代わるからすぐ現場に向かえ」と上司から指示を受けた。対応を終えて戻ると「なぜすぐに行かなかった」ときつく怒られた。「お客様の不安な状況を少しでも解消することが何よりも大切だと気付かされた」

 それ以来、事故対応は最優先している。もし事故が起きればたとえ商談中でも上司らに引き継いで真っ先に現場に駆けつける。「お客様が独りぼっちで不安な思いをしている時に少しでも心の支えになれたらいい」。その姿勢を貫いたことで「今後も君から買い続けるよ」とレクサス車を10台以上も買い続ける顧客との出会いも生まれた。

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 高級車市場の販売競争は激しい。特に輸入車は17年の販売台数が20年ぶりに30万台を超えるなど好調だ。だが藤崎さんは「国産ブランドならではの強みがある」と語る。

 レクサスは新車発売時の営業向け研修で開発者と直接対話できる機会がある。どんな思いで新しい車をつくったのか。自ら聞いたその声を販売の現場で役立てる。「開発者の思いを伝えたい、とついつい熱くなってしまう」。車の特性を生かせる運転の仕方も開発者から教えてもらい、顧客が試乗する際に助言する。

 高級車を扱うだけに経営者や政治家、芸能人といった最重要人物(VIP)級の顧客が多い。だからこそ「休息」を重視している。仕事にメリハリをつけるため残業は極力しない。「最高のパフォーマンスができなければ結果的にお客様に悪影響を与えてしまう」との思いからだ。

 もちろん休日でも、顧客に事故が起これば駆けつける。普段は2人の子供と遊ぶなどして穏やかに過ごし、明日への活力につなげている。

ふじさき・たけあき
 2001年東京トヨペット入社。カーテラス深川店(現東京トヨペット深川店)、レクサス高輪を経て現在はレクサス青山で勤務する。政治家や経営者など個人のほか、ハイヤー利用する法人を含めた多数の顧客を担当する。東京都出身。

(古川慶一)[日経産業新聞2018年2月1日付、NIKKEI STYLEから転載]

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