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liberal arts-大学生の常識

自動車学校、料金が二極化 首都圏「VIP」コースも

自動車学校、料金が二極化 首都圏「VIP」コースも

 春の足音が聞こえ始めるこの時期は自動車教習所のかき入れ時だ。卒業を控える高校生、大学生が運転免許取得のために続々と入校するが、少子化の影響で生徒獲得競争は激しい。地方では過去10年で1割ほど料金が下がったところが多い。一方、首都圏では至れり尽くせりの高価格コースも人気を集めており、サービス内容で集客につなげる動きも出ている。

首都圏ではサービス重視の教習所が人気

 「よそが下げたら対抗して追随値下げするしかない」。香川県の教習所経営者は苦しげに語る。ここ数年で徐々に料金を下げ、5~6月の閑散期にはマニュアル車の教習で18万~19万円(税別)という破格のキャンペーンを実施している。「マニュアル車の通学なら20万円台後半でないと採算が合わない」(地方の教習所経営者)との声がある中、近隣のライバルとの料金競争は静まる気配がない。

卒業生はピークから4割減

 料金競争の背景にあるのが少子化に伴う生徒数の急激な減少だ。全日本指定自動車教習所協会連合会(東京・千代田)によると、加盟する指定教習所の2017年の卒業生は152万6309人(二輪・四輪の合計)と、ピークの1990年から4割減った。市場縮小に伴って淘汰も進んでおり、教習所数は17年12月末時点で1279校と、最多だった91年の1477校から減少の一途をたどっている。

 周辺地域に若者が少ない教習所は、遠方から生徒を集めるのに躍起だ。ある地方の教習所は「片道30分以内ならどこでも送迎する」。過疎化が進む地方では隣県からも集客しなければ経営が成り立たない。低コストの教習所が戦略的に料金を引き下げる例もあるが「いくらサービスで勝っていても、数万円の安値を提示するライバルがいては生徒は集まらない」(教習所経営者)。

 教習所の経営コンサルティングを手掛けるエンカレッジジャパン(東京・港)の横山敦代表取締役は「黙っていても生徒が来てくれた時代もあったので、集客のノウハウを持たないオーナーが多い。料金を下げ合う競争が淘汰を招いている」と分析する。中には運営資金が足りず教習車を売却して人件費などの経費に充てる窮状もみられるという。

 一方、東京都内のマニュアル車の教習料金は25万~33万円程度で、ここ数年は横ばいが続く。進学を機に地方から転入する若者が多く、生徒数も10年以降は減少に歯止めがかかっている。

 武蔵境自動車教習所(東京都武蔵野市)では「IT―VIPプラン」が人気だ。ITは情報技術ではなく「至れり尽くせり」の略。待ち時間はコンシェルジュが常駐し、無料の飲み物や菓子が用意されたラウンジで過ごせるほか、教習時間にはインストラクターが迎えに来てくれる。混雑時でも優先的に予約が取れる。

女性ニーズ取り込む

 料金は年齢によって幅があり、マニュアル車で40万~50万円程度。通常コースの5~7割増しだが、17年は生徒全体の1割にあたる617人が申し込んだ。1月に入校した大学4年生の田辺佐和奈さんは「ちょっと高いけど、春の就職までに急いで免許を取りたかった。ラウンジで落ち着いて待てるのもうれしい」と満足そうだ。

 「昔の生徒は『近くて安いところ』を選んだが、今は施設がきれいで評判の良い教習所が選ばれる。大げさにいえばブランド力だ」と語るのは、コヤマドライビングスクール(東京・渋谷)の福島清次専務。校長を務める二子玉川校(東京・世田谷)は年間1万人超と都内随一の生徒数を誇る。マニュアル車の教習料金は約28万5000円(税別)と周辺校より若干高いものの、二輪などを含めた生徒数は10年前と比べて9割増えた。

 かつて教習所といえば高圧的な"鬼教官"が珍しくなかったが、二子玉川校では「顧客満足度をいかに上げるか」をテーマに指導員の指名制度を導入。指導員の3割を女性とし、教習中は併設している認証保育施設に無料で子どもを預けられるなど女性のニーズを取り込む工夫を凝らす。

 限られたパイを奪い合う構図は人口減少が進む地方同様、東京でも同じ。生徒確保のため周辺より割安な料金を前面に押し出す教習所もある。ただ「ダンピングはお互いの足を引っ張るだけ」と話すのは尾久自動車学校(東京都小金井市)の宮川徳一社長。「指導の質を高めて生徒の信頼を得なければ、悪い評判があっという間に広がってしまう」と強調する。

 今はネット上の口コミなどで指導内容や施設の比較が容易。料金以外のサービスで支持を集める勝ち組と、料金でアピールせざるを得ない業者の優勝劣敗が鮮明になっている。
(商品部 本池英人)[日経電子版2018年2月22日付]

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