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やる気スイッチを入れよう(35)リアルコミュニケーションで幸せになる

やる気スイッチを入れよう(35) リアルコミュニケーションで幸せになる
authored by 菊入みゆき明星大学特任教授、JTBコミュニケーションデザイン
ワーク・モチベーション研究所長

 あなたは、日々のコミュニケーションを何によって取っていますか。メールやラインでほとんどのやりとりを済ましている場合は、リアルコミュニケーションを増やした方が幸せになれ、自分の頼みも聞いてもらえます。

大学生はリアルコミュニケーションが少なめ

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明星大学のキャンパス

 コミュニケーション総合調査によると、大学生は、「対面で話す」コミュニケーションが60%、メールやライン、SNSなどのオンラインでのコミュニケーションが33%でした。会社員や主婦等と比べると、直接話す割合が少なく、オンラインコミュニケーションが多いことがわかりました。

 しかし、コミュニケーションが楽しいと答えた人の特徴を見ると、「メールやSNSでのコミュニケーションよりも、電話や実際に会って話すほうが多い」と回答する割合が高かったのです。直接話すコミュニケーションが、楽しさと関連しているようです。

 いくつかの研究で、対面で会うことはオンラインでのコミュニケーションよりも、オキシトシン等のいわゆる幸せホルモンの分泌を促し、またストレスを軽減させることがわかっています。リアルなコミュニケーションが、幸せにつながっているのです。

人は対面でのコミュニケーションを軽く見過ぎている

 昨年アメリカの大学で行われた研究では、対面で何かを依頼をしたときに成功する確率は、メールでの依頼の34倍であることがわかりました。45人の協力者がそれぞれ10人ずつ、計450人に対し、あるアンケートに回答してほしいと依頼する実験が行われ、どれだけの人に受け入れられたかが分析された結果です。

 ただ、メールよりも対面の方が効果的であることは、それまでの研究でもわかっていました。この研究のユニークな点は、協力者に事前に成功率を予測してもらったことです。10人のうち何人が承諾してくれるかを予想してもらったのです。すると、メールのグループも対面のグループも、ほぼ5割の成功を予測しました。10人中5人は承諾してくれるだろうと思ったわけです。しかし、結果は34倍という大きな差があることが明らかになりました。

 私たちは、対面でのコミュニケーションに関して、その効果を軽く見過ぎているようです。逆に、メール等のオンラインコミュニケーションに関しては、過剰な期待をしているのです。

 この研究では、もう1つの実験により、依頼を受けた側は相手の様子やしぐさなど、非言語的な手がかりを見て、依頼が信頼できるものかどうかを判断していることもわかりました。コミュニケーションでは、文章以外の要因も重要であるということです。

リアルとオンライン、両方をどんどん使おう

 もちろん、ネットによるコミュニケーションにもたくさんの利点があります。多くの情報を、より確実に伝えられます。履歴が残るので、あとで見直して確認することもできます。

 なによりも、ネットでのやり取りは手軽です。じかに会うのは緊張してしまう人も、ラインやメールなら大丈夫という場合も多いでしょう。交通事情や経済その他の事情により会うことがむずかしくても、オンラインならつながることができます。

 リアルとオンライン、両方の特徴を理解して、うまく活用しましょう。

 手軽に連絡を取りたいときは、どんどんオンラインを使いましょう。そこでのつながりを生かして、会う機会を増やしていきましょう。オンラインでのコミュニケーションばかりになると、幸せ感が低くなり、頼みが受け入れられないなど、いろいろな不具合がでてきます。

 まずは、今の自分のリアルとオンラインのバランスを見直してください。そして、私たちがリアルなコミュニケーションの効果を軽く見過ぎ、オンラインを過度に信頼しすぎる傾向があることを、頭に入れておきましょう。

 じかに会うことは、時間も労力も使うし、気も使います。しかし、それだけの効果はあることも事実です。就活でも、ネットでの情報収集に加えて、会社説明会にも行き、じかに話を聞く。先輩を訪問し、対面でコミュニケーションを取る。友だちとも、「会おうよ」と会う約束をする。すると、気づかないうちに、毎日が楽しくなり、やる気スイッチが入ります。

参考:コミュニケーション総合調査<第1報> 「2017年の満足度と2018年への期待」(株式会社JTBコミュニケーションデザイン)

Roghanizad, M. & Vanessa K. B.(2017). Ask in person: You're less persuasive than you think over email, Journal of Experimental Social Psychology 69, 223-226