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重さ感じない中学かばん
フットマーク、「1/1の視点」で

重さ感じない中学かばんフットマーク、「1/1の視点」で

 中学生にとって朗報になりそうな製品が4月に正式に発売される。登山用のリュックサックを参考にした形状・構造で、荷物の重さを感じさせないようにした通学かばん「RAKUSACK(ラクサック)」。開発したのはフットマーク(東京・墨田)だ。

《フットマークの会社概要》
▽本  社 東京都墨田区
▽事業内容 水泳・体育・介護用品製造
▽設  立 1950年(創業は1946年)
▽従業員数 58人(2017年8月末)
▽連結売上高 49億5000万円(17年8月期)

 スクール水泳用品や体育用品が主力の同社がなぜ、かばんを開発したのか。理由は今から約1年半前、2016年9月に開いた座談会にある。

「えっ、そんなに重いんですか」。水泳用品担当の白川純也氏は絶句した。中学生と保護者から自社製品の評価を聞く座談会。白川氏を驚かせたのは水泳用品の話ではなく、通学時に中学生が持ち歩く荷物の重さ。重さは10キログラムになるという。

「脱ゆとり教育」で学習内容が増え、教科書が大判化し厚みも増している。さらに折り畳み傘や水筒が加わる。学校での盗難事件を防ぐため荷物を全て家に持ち帰らせる学校も多い。「重さに悩む中学生を何とかしてあげたい」と思いを募らせた白川氏は同僚と2人で重さを感じさせない通学かばんの開発を始めた。

 フットマークには「1/1(いちぶんのいち)の視点」という言葉がある。目の前にいる1人の顧客の声を聞き、その人が求めているものをつくるという趣旨だ。「欲しい人が1人いれば、世の中全体では、かなりの人数になるはず」と三瓶芳社長(60)は説く。通学かばんの開発プロジェクトはすぐに動き始めた。

 ただ簡単ではない。素材を工夫し軽くしたかばんは出回っている。そもそも、かばんより荷物の方が圧倒的に重いので、かばんを軽くしても解決策にはならない。

中の荷物を固定するなど重さを感じさせない構造にした通学用かばん「ラクサック」

 「形や構造から入ろう」。素材を軽くて耐久性のあるナイロンに決め、社外のデザイナーや大学を訪れ意見を聴いた。たどり着いたのが登山用のリュックサックだ。キーワードは「固定」。リュックサックは背中に密着する形状・構造になっている。荷物が揺れ動くと、体の特定の部分に重さが集中してしまい、疲労感が増すからだ。

 中学生の体の大きさや形状、動き方を分析。立体裁断で背中にピッタリと合うような形にした。かばんの中には面テープが付いた専用の空間を設け教科書を固定させた。

 1946年の創業当初はおむつカバーを製造していた。69年に技術を応用して水泳帽子をつくるようになり、現在は水泳用品や体育用品が主力製品。赤ちゃん向けだったおむつカバーも、今では高齢者用が中心だ。

 時代に合わせて主力製品を変えられた原動力がラクサックを生み出した「1/1の視点」だ。

年間売上高約50億円(2017年8月期)に対し、自社製品の種類は約3000に及ぶ。「(効率を考えると)ちょっと多すぎるかもしれない」と三瓶社長は笑うが、ムダをあえて許容する姿勢が時代への適応力を高めた。

ラクサックは新年度が始まる4月に正式に発売する。価格は9500円(税別)。初年度の販売目標数は1万。三瓶社長は「近くの中学校の生徒さんに試しに使ってもらったところ、評判はよかった」と手応えを示す。

社内ではラクサックのバリエーションを増やす計画が進んでいる。対象は重い荷物に悩んでいる介護関係者のようだ。「1/1の視点」の連鎖が同社を新たな高みに引き上げていく。(長島芳明)
[日経産業新聞2018年3月6日付]