日本経済新聞 関連サイト

OK
career-働き方

好印象の姿勢術 小さな工夫でスマートに

好印象の姿勢術 小さな工夫でスマートに

 どんなに高価なスーツで身だしなみを整えても、姿勢が悪ければ相手の印象は悪くなる。スマートな姿勢や所作はビジネスの相手や同僚に好感を与え、信頼感も得やすい。小さな工夫で好印象を与える姿勢術を探ってみた。

ANAビジネスソリューションは美しい姿勢を教える企業研修を手がける(常陽銀行の研修風景)

 仕事の内容にかかわらず、第一印象でだらしなく見えるケースが多いのが姿勢の悪さだ。「商談などのビジネスシーンでは次の仕事をとれるかに大きくかかわる」。人材育成などを手がけるANAビジネスソリューション(東京・港)で講師を務める川上美佐子さんはこう指摘する。同社はANAホールディングス傘下で、講師陣は客室乗務員(CA)の経験者が多い。立ち振る舞いのプロに、どうすれば相手に好印象を与えられることができるかを聞いた。

 まず立ち方。男性はかかとをつけたまま足先を45度開く。女性は片足を半歩引き、両足首をそろえるようにして土踏まず付近に重心を置く。「1本の糸で頭をつられているイメージ」(川上さん)で背筋を伸ばすのもポイントだ。肩甲骨を後ろでくっつける感覚で胸を張ると、堂々とした印象につながる。

 指先は隙間のないようにそろえ、中指はズボンやスカートの両側の縫い目にそろえると凜(りん)とした印象を与える。目線は相手の顔に対して水平に向けると美しいという。川上さんは「特に男性は時間がたつにつれて、あごが上がってくる人が多い。あごを少し引く意識の方がスマートに見える」とアドバイスする。

 この基本姿勢を押さえておけば応用もできる。お辞儀する際は、背筋を伸ばして手を横につけたまま、腰の位置で30度ほど前傾させる。プレゼンテーションの際も同様の姿勢で、ジェスチャーも指先をつけたままスピーチすれば威厳がついて説得力が増す。

 座り方も気になる。上半身は基本姿勢を押さえたまま、座った時に両足をしっかり地面につけることを意識する。イスには深く腰掛けるのが重要だが、背中全体がイスの背もたれにつくのは印象が悪くなる。座面に対して背骨が直角になるように座ると見た目も美しい。

 商談や会議の際はテーブルで下半身が見えない場合も多い。川上さんは「足を組んだりすると、肩が片方下がったり肘をついたり、必ず上半身に影響が出る」と指摘する。

 メモを取る際はペンを不用意に動かさないほか、要所で顔を上げて相手と目線を合わせる。メモが不要な時はペンを置き、手を膝の上に置いた方が信頼感が高まる場合もある。

 自らの姿勢を確認するには、スマートフォンのカメラを活用するのが効果的だ。自分の立ち姿や座った姿を撮影すると、客観的に評価ができる。鏡の前だと人は無意識に自分を美化する傾向がある。「自分では問題ないと思っていても、意外と姿勢がくずれている人が多い」(川上さん)という。

 精神状態も姿勢に出る。姿勢に関するセミナーを全国で開く日本姿勢調律協会の野口早苗代表理事は「自分のメンタルの状況で姿勢は大きく変化する」と語る。

 例えば仕事で失敗したり私生活の悩み事があったりすると、自然と背中が縮こまり視線が下がって守りの姿勢になる。逆に成果をあげたり、仕事がはかどったりした時は背筋が伸びて開放的な印象になるという。

 野口さんは「調子が悪い時こそ、美しい姿勢を意識して気持ちをリセットすることが必要」と話す。オフィスで単独で作業する際も「社内だから」と気を抜かない方がいい。正しい姿勢を心がけることが前向きに仕事に取り組む意欲や、同僚からの好評価にもつながる。

 最初はこうした姿勢を意識するのも煩わしく思うかもしれない。無理をせず、ちょっとした心がけから習慣にするといいだろう。

猫背、壁立ち訓練で改善

(姿勢コンサルタントの武田まり子さん)

 正しい姿勢を保つためには、体をほぐすことや必要な筋肉を鍛えることも必要だ。姿勢コンサルタントの武田まり子さんに自宅やオフィスで簡単にできるストレッチ・トレーニングを聞いた。

姿勢コンサルタント 武田まり子さん

 まずおすすめなのが壁立ちだ。かかとを壁際にそろえて、お尻、背中、肩、頭を壁にくっつけていく。「体にゆがみがあると、必ずどこかに隙間ができる」(武田さん)。その隙間を埋めるように肩やお尻の全面を壁に押し当てると、それだけでトレーニングになる。

 スマートフォンの使用が原因で首が前に出て背中が丸まった「首猫背」。デスクワークで前肩姿勢が染みついた「肩猫背」。中高年に多いおなかが突き出た「腰猫背」。壁立ちはそれぞれのタイプに有効だ。毎日数分でも続けると、正しい姿勢が身についてくるという。

 猫背の改善には腹筋や背筋を鍛えることが必要だ。武田さんは「座った状態で両足を持ち上げて数十秒キープするだけで、必要な筋肉をつけられる」と語る。イスの背もたれに背中がつかないように意識すると効果的だという。

 こうしたトレーニングが面倒だという人には、デスクワークの途中で座ったままできるストレッチがある。まず肘の部分が直角になるように腕を持ち上げる。手のひらが背面に向くように内側に回し、腕全体を思い切り後ろ側にそらす。そのまま肘で円を描くようにして肩甲骨を動かす。これで前肩姿勢がほぐれ、血行が促進されてリラックスできる。

 「トレーニングして姿勢が良くなれば、肩こりや腰痛が改善する傾向がある」(武田さん)。一歩進んだ姿勢術は、ビジネス以外の場でも役に立ちそうだ。
(企業報道部 平嶋健人)[日経電子版2018年2月20日付]

「日経College Cafe」のお勧め記事はこちら>>