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career-働き方

サステナブルな会社選び(14)「21世紀のグッド・ライフ」がブランドの指標へ 

サステナブルな会社選び(14) 「21世紀のグッド・ライフ」がブランドの指標へ 
グッド・ライフについて説明する会議創設者のコーアン氏
authored by 「オルタナ」編集部

 約1年にわたって連載した「サステナブルな会社選び」を読んでくれていた皆さん、本当にありがとうございます。これまでほぼ毎月2本、大手企業や中小企業でサステナビリティ(持続可能性)を推進しているビジネスパーソンに話を聞き、企業の取り組みを紹介してきましたが、この回が最後の連載となります。

1600人以上を動員したサステナブル・ブランド国際会議

 最後に紹介するのは、これまでのような企業紹介ではありません。今年の3月1、2日にヒルトン東京お台場(東京都港区)で開かれたイベントについてです。そのイベントは、企業のCSRやマーケティング、ブランディング担当者、NPO・NGO関係者、そして大学生ら1600人以上を動員したもので、CSR関連のビジネスイベントとしては国内最大規模を誇ります。

 それは、サステナビリティとブランディングの統合を議論する「サステナブル・ブランド国際会議2018東京」(主催:博展)です。この国際会議は米サンフランシスコで始まり、今では世界12都市までに広がりました。日本では昨年3月に初めて開催し、今年で2回目。我々、「オルタナ」編集部も運営に携わっています。

2日間で合計1640人が来場した

 今年の会議では2日間で50以上のセッションが行われ、登壇者は延べ140人を超えました。これまで、この連載では企業がサステナビリティに取り組む理由や実際に行っている活動、成果と課題などを書いてきました。まさに、このイベントで行われた全セッションでそれらの問いが投げられ、会場全体で話し合われました。

 多くの金言が生まれましたが、今回は将来、利益追求だけではなく、社会的課題を解決する仕事をしたいと考えている大学生へ伝えたい3つのキーメッセージを紹介します。

共通テーマは「グッド・ライフ」の再定義

 「グッド・ライフとは、ブランド選別における新たな判断基準」――。最初に紹介するのは、サステナブル・ブランド国際会議の創設者であるコーアン・スカジニア米SLM社CEOの言葉です。

 サステナブル・ブランド国際会議では、数年ごとに世界全体の共通テーマを設けており、今年は「グッド・ライフの再定義」でした。コーアン氏が話している「グッド・ライフ」とは、かつてのアメリカンドリーム的なものではありません。

 地球温暖化による気候変動や劣悪な環境下で、低賃金で労働を強いられている子どもたち、資源の無駄遣いなど、いま多くの社会的課題が可視化されるようになりました。そのような状況で、企業の戦略として社会的課題に向き合い、消費者や社会のニーズに応えていくことが問われています。

 昨今、国連が2015年に採択したSDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・ガバナンス)も話題になり、サステナビリティの潮流をつくっています。「企業は21世紀のグッド・ライフとは何かを考えながら、ブランド戦略を構築していくことがカギだ」と、コーアン氏は強調しました。

企業がミレニアル世代に選ばれるためには

他社も巻き込んだ活動の重要性を説くP&Gのナバレス氏

 「シェアが大切。時には競合他社も巻き込む」――。これは、P&Gのクリント・ナバレス広報渉外本部執行役員の言葉です。サステナブルな活動でインパクトを生み出す方法について明かしました。

 同社は2017年10月から、「使用済みファブリーズでリサイクル!」というキャンペーンを展開しています。実はこのキャンペーンでは他社メーカーの容器も回収しています。地球環境のためを思って始めた取り組みなので、自社容器だけにこだわるのは本質的ではないと考え、そう決めました。ナバレス氏は「なによりシェアが大切。場合によっては競合他社も巻き込む。これは私の活動、それはあなたの活動と分けていては、大きなインパクトは起こせない」と言い切ります。

 同氏は同社がサステナビリティに取り組む理由も説明しました。一般的には、社外向けの広報と考えられますが、「社外だけでなく、インターナル(社内)ブランディングのためでもある」そうです。ミレニアル世代(一般に1980年―1995年生まれ)は働くことに目的を求める傾向にあるため、若者に選ばれる企業であり続けるために、「サステナビリティの取り組みで付加価値を生み出すことが重要」と話しました。

ミレニアル世代がテーマのセッションでファシリテーターを務めた吉水氏

 「欲望喚起型から関係構築型マーケティングへ」――。最後に紹介するのは、マーケティングクリエイティブディレクターの吉水由美子氏の言葉。吉水氏は、ミレニアル世代をテーマにしたセッションの、ファシリテーターとして登壇しました。

 セッションでは、ミレニアル世代がほかの世代と比べて、社会的課題への関心が高いことをデータで紹介。多少価格が高くても、エシカルな商品を選ぶ傾向にあり、マスメディアよりSNSや口コミに信頼を置いていると指摘しました。その上で、吉水氏は「これまでは欲望喚起型のマーケティングが主流だったが、これからは顧客とともにつくっていく関係構築型マーケティングの時代になるだろう」と語りました。

 SNSの浸透で企業と消費者の関係も変わりました。従来は企業が消費者へ上から情報を流すという縦の関係でしたが、いまはそれが横の関係に変わったと言います。だからこそ、「企業と消費者が価値観を共有し、共創することが重要になってくる」と結びました。

サントリー・新浪社長や大和証券・中田社長も講演

 この他にも、多くの金言が生まれたのですが、ここですべてを紹介することはできません。もし、もっとこの国際会議で話された内容を知りたいと思った人は、ウェブメディア「サステナブル・ブランド ジャパン」(http://www.sustainablebrands.jp/)を見て下さい。

サントリーホールディングスの新浪社長もサステナブルを語った

 講演したサントリーホールディングスの新浪剛史社長や、大和証券グループ本社・中田誠司社長、国連グローバル・コンパクト ボードメンバーの有馬利男氏、最年少登壇者のミライロ・垣内俊哉社長といった方々が話した内容が記事化されています。

 それでは、そろそろ終わりにしたいと思います。サステナビリティをテーマに連載をしてきましたが、いかがでしたでしょうか。実際、サステナビリティの重要性を理解している国内企業はまだまだ少ないのが現状です。

 広めていくのは、まぎれもなく、次の時代を生きる皆さんです。この記事をいま読んでいるあなたと、ぜひ力を合わせて推進していきたいと強く思っています。ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。
(「オルタナS」編集長・池田 真隆)
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