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孫さんも驚く?久留米大付設高、医学部合格はトップ級
久留米大学付設中学・高校の町田健校長

孫さんも驚く?久留米大付設高、医学部合格はトップ級久留米大学付設中学・高校の町田健校長
福岡県久留米市にある久留米大学付設中学・高校

 福岡県久留米市にある中高一貫の男女共学校、久留米大学付設中学・高校(通称は付設)。ソフトバンクグループ会長兼社長の孫正義氏や、「ホリエモン」の愛称で知られる堀江貴文氏など著名な起業家を輩出している。2017年には国公立大学医学部の合格率で全国トップクラスの実績を上げた。人口30万人あまりの九州の地方都市から、なぜ医学部に強い有名進学校が生まれ育ったのか。久留米の「付設」を訪ねた。

国公立医学部に3人に1人

 「実は孫さんは私の1年後輩にあたるんですが、高校に入学して半年ぐらいで渡米したようなので、在学中は知るよしもなかった。ただ、当時の地理の担当教員が孫さんの相談に乗って『世界に飛び出せ』と助言したといっていましたね。もちろん今の在校生は孫さんが学んだ学校だとよく認識しています」。付設の町田健校長はこう話す。

言語学者でもある町田健校長

 町田校長は著名な言語学者でもある。付設から東京大学に進学。名古屋大学の教授時代にテレビに度々出演していたが、60歳になるのを機に故郷に戻り、17年4月に校長に就任した。町田校長は、「いや、母校の躍進ぶりには驚きました。孫さんとか、僕らの時代以前は東大合格者は2ケタに達していなかったんじゃないかな。当時から医学部に行く生徒は多かったけど、今の方が進学実績が格段に上がっています」という。

 付設の1学年の定員は中学が160人、高校は200人で、福岡市の公立トップ、修猷館高校や福岡高校のほぼ半分の規模だ。17年の合格実績は東大27人、京都大学7人。そして国公立大学医学部医学科は実に78人。「国公立の医学部合格者数は過去最高を記録しました。3人に1人強ですね、合格率だと、全国トップクラスになります」と教頭の名和長泰先生は話す。しかも東大理科1類や理科2類よりも難易度の高い九州大学医学部医学科に28人が合格している。

 JR久留米駅から車で約20分のところにある付設。付近には山林もあり、牧歌的な雰囲気が漂う。かつては九州を代表する進学校といえばラ・サール(鹿児島市)の名前が挙がったが、今地元では「付設かラ・サールか」といわれている。九州の地方都市の学校はなぜこれほど躍進したのか。

女子パワーでラ・サールに並ぶ

「福岡市内の女子生徒が増えている」と話す名和長泰教頭

 名和教頭は「生徒の平均通学時間は約90分にもなります。わざわざ福岡市を中心とした都市圏から通ってくるからです。特に女子が増えて、進学実績が伸びました」という。在校生の約8割は福岡県内だが、うち福岡都市圏からの通学生が6割を占める。地元の久留米市など筑後地方の生徒は2割弱だという。通学圏以外の生徒は寮住まいになるが、男子生徒に限られている。

 高校は05年から男女共学化した。現在は約3分の1が女子生徒だ。「女子生徒は元気で明るい。しかもわざわざうちに通う子は『絶対、医者になる』などと覚悟を持ってきますから、すごく意志が強い。17年には東大理科3類に推薦合格した女子生徒も出ました」(名和教頭)という。

 もちろん学校側の受験対策は極めて手厚い。通常の6時限目の授業が終わるのは午後3時25分だが、高3には7~8時限目(終了は午後6時)が用意される。「東大数学」「九医英語」など志望校に応じ、「特別講座」を選択受講できる仕組みだ。毎年春に志望校の動向をにらみ、講座を策定する。

活発な女子生徒の比率が増えている=久留米大学付設中学・高校提供

 高3向けの年4回の「校内模試」も伝統になっている。国語、数学など各教科の教員全員が、東大、京大、九大医学部などの入試問題を分析、研究して出題を作成。長年蓄積したデータを基に結果を分析、検討して、生徒たちと課題を共有し、受験対策につなげる。町田校長は「私も校内模試を受けました。教員の手作りのビッグデータです。これが学校の資産ですね」という。1989年から化学を教えている名和教頭は「大学受験の結果は、ほぼ校内模試の結果通りになる。大手の予備校の模試よりも正確です。年間の学校行事予定表を作成し、4回の校内模試を各回ごとにテーマを決めて、実施しています。それを基に生徒は傾向と対策を練る」という。

 結果、通塾率は約1割にとどまる。「授業についていけない生徒が塾に通っているケースがあるぐらいです」(名和教頭)という。

OBは濃いキャラが続々

 付設のOBはテレビなどメディアをにぎわす「キャラの濃い」有名人が多い。弁護士でタレントの本村健太郎氏、東京都知事選に出馬したジャーナリストの鳥越俊太郎氏、孫正義氏の実弟で、堀江氏の同級生でもある実業家の孫泰蔵氏も卒業生。泰蔵氏は「大学受験に失敗して浪人したときに、兄にノウハウを教わり、なんとか東大に合格した」と話していた。

 ソフトバンクで孫氏の秘書を務めた三木雄信氏(現在はトライオン社長)もOBで、泰蔵氏や堀江氏とは同級生。3人は正義氏よりも15期後輩に当たるが、当時から正義氏はIT業界の風雲児と注目を集めており、付設では「すごか兄貴」と呼ばれていたという。

寮生活をする男子生徒も多い=久留米大学付設中学・高校提供

 当時の付設の卒業アルバムを見せてもらうと、優等生とは思えない格好をした生徒が目立つ。三木氏は、「あのころは『ビー・バッブ・ハイスクール』がはやっていた時代でしたから、髪をリーゼント風にセットして短ランとボンタンを着て学校に来る生徒も結構いました。ヤンキーっぽい人が多かったですね。でも先生たちは、何も言いませんでした」と笑う。

 同校のモットーは「和して同ぜず」。すぐれた人物は協調はするが、主体性を失わず、むやみに同調したりしないという意味だ。「先生たちは自由にやっていいが、最後は自己責任だというのが口癖」(三木氏)。この伝統が個性的なリーダーを輩出する下地になっているのかもしれない。

 ジャパネットたかた社長の高田旭人氏もOBだ。父親はテレビ通販のカリスマと呼ばれた高田明氏。突然引退したときは経営を危ぶむ声もあったが、旭人氏は業績を逆に拡大して評価を受けている。旭人氏は「長崎出身だったので寮生活だった。僕は数学が好きで、東大の理系に行きましたが、ものすごく頭がきれて独創的な発想をする友人が多かった」と振り返る。

「ポスト孫」の起業家も次々

 若手のOBにも「ポスト孫」を狙う起業家が次々誕生している。東大時代に孫泰蔵氏の下で「修行」した井上和久氏は、13年にグッドラックスリーを創業、次々ゲームアプリを開発、ヒット作を出している。九大医学部出身の医師である鍵本忠尚氏はバイオベンチャー、ヘリオスを起業してiPS細胞を活用した医薬品開発に取り組み、再生医療の世界で注目を集めている。

 「東大を出て公務員になってもね。国籍の問題もあったし」。かつて孫氏になぜ付設高校を飛び出し、米国に留学したのか問うと、ポツリとこう答えた。ただ、孫氏が初めて起業したのは地元の福岡。プロ野球でも福岡市が本拠地の球団を買収するなど、地元愛は人一倍強い。

 JR久留米駅前には巨大なタイヤが置かれている。久留米はブリヂストンの創業の地でもある。実は同校は、創業者の石橋正二郎氏が寄贈した土地に立っている。世界企業に躍進したブリヂストンの石橋氏、ソフトバンクの孫氏ゆかりの付設。起業家精神あふれる付設は今も健在だ。
(代慶達也)[NIKKEI STYLE 2018年2月18日付]

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