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持ち主不明の土地、課題は? 九州より広い面積に

持ち主不明の土地、課題は? 九州より広い面積に
都市部でも増えている空き家は所有者不明地につながりやすい

 持ち主がわからない土地が全国で増えているそうね。どうしてわからなくなってしまうのかな? 所有者不明の土地を増やさないために、どんな対策が必要なの?

 所有者がわからない土地の現状と課題について、谷隆徳編集委員に話を聞いた。

――なぜ今、持ち主が不明の土地が問題になっているのですか?

 人口が減るなか、空き家が増えています。全国で820万戸、全住宅の13%強が空き家です。売却・賃貸待ちの家や別荘も含みますが、多くは使われていません。空き家になって時間がたつと、持ち主もわからなくなりがちです。

 持ち主不明の土地は行政もなかなか利用できず、公共事業や災害時に困ります。東日本大震災の後、所有者がわからない土地が、高台への住宅移転の大きな障害となりました。耕作する人がいなくなった農地の集約も、所有者がわからなければできません。

 岩手県知事や総務相を務めた増田寛也・東大公共政策大学院客員教授が座長の民間研究会は2017年、所有者不明の土地について報告をまとめました。それによると、農地や山林も含め持ち主がわからない土地が16年時点で、全国に約410万ヘクタールもありました。九州より広い面積です。40年には北海道本島の面積に迫る約720万ヘクタールに増えるとしています。

―― 土地はいらないものなのでしょうか?

 土地に対する日本人の感覚が変化しています。国土交通省の調査では、1990年代は土地が有利な資産だと思う人が6割いましたが、2016年には3割に減りました。昔は土地の値段は上がるというのが常識でした。今は逆に、地価下落のリスクに加えて固定資産税や管理費用がかかり、土地は「負の資産」と言われることもあります。

 所有者不明になるきっかけは主に相続です。売却や賃貸ができない土地は継ぎたくない人が目立ちます。売買する際は一般に、契約時に所有者変更を登記します。でも相続では放置され、代替わりを重ねて子孫が土地の存在自体を知らないこともあります。

―― 登記しなくてもよいのですか?

 所有権の登記は義務ではありません。相続時に売却予定がなかったり、遺産分割協議がまとまらなかったりして「とりあえずそのままにしておこう」と考える人が多いのです。放置しても遺族に実害はないのが実情です。登録免許税や司法書士に払う手数料など登記費用が高いことも一因と考えられます。

 国道を造るために行政がある土地を取得しようとしたところ、所有者が最後に登記されたのが明治時代。調査を進めると法定相続人が148人もいることが判明し、一部の相続人は結局特定できなかった事例もあります。法務省の抽出調査では、大都市でも7%の土地が、最後の登記から50年以上たっていました。

――国は対策を考えていますか?

 所有者不明の土地について、公園など公益的な事業でなら利用権を設定して使えるようにする法案が、今国会で審議される見通しです。相続時の登記義務付けを検討する方針も打ち出されました。倒壊の恐れや廃棄物の不法投棄などで近隣の住民が困っている空き家は、所有者が見つからなくても自治体が取り壊せるようになっています。

 ただ、根本的な対策にはほど遠いと言えます。法務省の不動産登記簿の情報と、自治体の固定資産税台帳や住民票などの情報は、ばらばらに管理されています。行政でも部署が違えば確認できず、所有者を探すのが大変な作業になります。こうした情報を一元管理することも必要です。

 相続したい人がいない土地は、自治体が寄付の形で受け入れ、購入・利用希望者がいなければ最低限の管理で公有化するしかなさそうです。所有者がいない土地は国のものとなるのが基本ですが、所有者がわからずに困るのは地域です。もっと積極的に関与する仕組みが必要でしょう。

■ちょっとウンチク
永遠に終わらぬ地籍調査
 政府は1951年から自治体を通じて土地の所有者や境界、面積などを調べる地籍調査をしている。進捗率は2016年度末で52%にすぎない。佐賀や沖縄のようにほぼ終えた県がある一方で、京都や三重は1割に満たない。東京は23%だ。韓国や台湾などは100%終了済みといわれ、日本は遅れている。
 このため、登記所に備えられた地図の半分近くは、明治時代の地租改正時に作られた地図(公図)などに基づいた不正確な内容という。土地の境界の確認は所有者の立ち会いが原則なだけに、相続時などの不動産登記を義務付けないと、地籍調査は永遠に終わらないだろう。

(編集委員 谷隆徳)[日本経済新聞夕刊 2018年3月5日付、NIKKEI STYLEから転載]

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