日本経済新聞 関連サイト

OK
liberal arts-大学生の常識

米ボーイングの商用宇宙船「有人飛行、年内にも」

米ボーイングの商用宇宙船「有人飛行、年内にも」

 米航空大手のボーイングが宇宙開発で久しぶりの脚光を浴びそうだ。2011年に退役したスペースシャトル以来となる米国の有人宇宙飛行を担う輸送用宇宙船が年内にも実用化される見通しで、ボーイングと米宇宙開発ベンチャーのスペースXが技術を競う。火星移住構想まで表明するスペースXなど新興勢力に押されてきたボーイングにとって、面目躍如の好機が訪れる。

宇宙船「スターライナー」(イメージ)

 ボーイングで国際宇宙ステーション(ISS)開発の責任者を務めるマーク・マルクイーン氏が都内で日本経済新聞社のインタビューに応じ、有人宇宙船「CST―100」(スターライナー)を19年以降、年1機ペースで打ち上げる方針を明らかにした。

 18年中に有人の飛行試験も終え、19年以降はスペースXと半年に1機ずつを打ち上げて、ISSに実際に飛行士や物資を届ける。

 マルクイーン氏は「米国の宇宙産業は十分な大きさがあり、競争によって強くなってきた」と話し、新興勢力との競争を歓迎する姿勢を示した。スペースXは長くボーイングなどが独占してきた政府衛星の受注にも成功するなど、勢力を拡大している。テスラ創業者のイーロン・マスク氏が豊富な資金を投入し、米航空宇宙局(NASA)出身の人材も活用して足がかりを作った。

 11年にNASAのスペースシャトルが退役した後、ISSへの輸送はロシアの宇宙船「ソユーズ」に依存している。米国では14年のクリミア危機でロシア依存を懸念する声が高まり、NASAは有人飛行の輸送機としてボーイングのスターライナーとスペースXの「ドラゴン」を選定した。いずれも翼のないカプセル型で、大型ロケットで打ち上げる。

日本企業との協力に期待するマルクイーン氏

 当初17年までを目指していた機体の実用化は遅れているが、ボーイングは18年8月ごろに無人でスターライナーを飛行試験し、12月には有人のテスト飛行も終える。ソユーズより多い5~7人を一度に運ぶことができ、交換用の部品や必要な物資を定期的に届ける。

 旅客機に使う発光ダイオード(LED)照明を備えるなど飛行士の快適性を重視し、最大で30時間以上に及ぶ長時間飛行にも対応できるようにした。

 ボーイングは1990年代にNASAから受託し、日本やフランス、ドイツ、ロシアなどと連携して11年に完成したISSの機能を強化してきた。大型旅客機と同程度の大きさのISSには、三菱重工業など日本企業も多く参画する。マルクイーン氏は「胴体部分には日本企業の高い技術が生かされている」と評価し、日本との協力拡大を期待した。

 米国は2020年代半ばまでISSを運用したい考えだが、トランプ政権は月面有人探査を優先する考えで、ISSは民間に運営を移行する方針を示している。一方、中国は現在のISSの運用終了を見越して独自のISS構築を目指している。安全保障上の思惑も絡み、民間企業も巻き込んだ宇宙空間の主導権争いが過熱しそうだ。
(企業報道部 市原朋大)[日経産業新聞2018年3月8日付、日経電子版から転載]

「日経College Cafe」のお勧め記事はこちら>>