日本経済新聞 関連サイト

OK
career-働き方

面接道場自分の「弱み」を言えますか?

面接道場 自分の「弱み」を言えますか?
authored by 曽和利光

 就活生の皆さん、こんにちは。人材研究所(東京・港)の曽和利光です。今回の質問は「あなたの強み・弱みは何ですか」。よく聞かれる質問のひとつですね。なぜ面接官がこの質問をするのか、皆さんは意図をきちんとくみ取れていますか。面接道場に集まってくれた3人の就活生と一緒に考えていきましょう。

今回の参加者
南元結奈さん
(慶応義塾大学環境情報学部3年)
林蒼太さん
(法政大学経済学部3年)
武井美佐さん
(学習院大学文学部3年)
※希望があれば仮名にしています。

自分のことをよく知っているかどうかは仕事をする上で重要だ

曽和さん:それでは南元さんの強みは何でしょうか。

南元さん:強みは行動力です。大学で学会雑誌のレイアウトリーダーを務めました。そこでは編集会議の参加率が低く、議論が盛り上がらないのが課題でした。そこで会議で菓子を配って会話のきっかけを作るようにしました。また下級生の意見も積極的に採用し、自分の意見が反映される喜びを感じてもらえるようにしました。そうすることで会議の参加率も雑誌の質も上がり、学会から表彰されることになりました。

曽和さん:では弱みは何ですか。

南元さん:行動力の裏返しなのですが。好奇心がすごく強くて、あまり方向性や一貫性がないところです。あまり深く考えず、すぐ行動に移してしまいます。

曽和さん:好奇心が強いのは良いことだと思いますが。あなたはそれを本当に直そうと思っているのですか。

南元さん:はい。一つのことを成し遂げるときは方向性をきちんと定めるのが大事だと思います。そうすることで成長するのだと考えています。

曽和さん:ありがとうございます。面接での代表的な質問に「学生時代に力を入れたことはなんですか(ガクチカ)」があります。面接官は就活生にわかりやすい実績を語らせて、就活生の能力や性格を判断します。

 それでは、「あなたの強み・弱みは何ですか」という質問は、ガクチカとどう違うのでしょう。最大の違いは、皆さんが自分のことをきちんと知っているかどうか、「自己認知力」の確認に重きを置いている点です。

 自己認知力の高さは、いろいろな能力につながっています。例えば野球。足が遅いのに、俊敏さが求められる一番バッターになろうとしたり、肩が弱いのにピッチャーをやりたがったりする人がいたとします。そういう人は自分の性格や能力が理解できていないので、チームでの役割や立ち位置がわかりません。

 しかも、できていないのにできていると思ってしまうと、悪いところを改善しようと努力もしません。会社組織にはなじまないのです。

「裏返し」はやめよう

 南元さんの弱みは「好奇心が強く、すぐに行動してしまうこと」でした。これは「行動力がある」という強みを繰り返しているに過ぎません。「弱みは何ですか?」と聞かれた時に、就活生がやってしまいがちな手法が、強みの裏返しを弱みとして言うことです。

比喩表現や慣用句では面接官には伝わらない

南元さん:強みと全く関係ないことを言ってもいいのでしょうか。

曽和さん:「行動力がある」という強みと、「何も考えずにすぐ動いてしまう」という弱みは、先ほども指摘したように同じことを言っているだけです。面接官は、本当に聞きたいことが聞けずに、弱みを答えることを「かわされた」「逃げられた」と感じることでしょう。これは注意が必要です。

 就活生が自分の弱みにまだ気付いていない場合もあると思います。強いところや良いところには目を向けやすいですが、自分の弱みは見たくないですから。掘り下げて考えた方が良いでしょう。

 それでは次に林さんに聞いてみましょう。強みは何ですか。

林さん:目標に向かって投げ出さずにコツコツ努力できることです。中学生のときから今までトランペットを10年間続けています。大学1年のとき学内でオーケストラのオーディションを受けましたが、落ちて挫折を経験しました。悔しくてプロの方を自力で見つけてレッスンしてもらいました。その結果スキルが上がり、倍率が20倍という他大学のオーケストラのオーディションを突破することができました。

曽和さん:ひとつ注文をつけるなら、冒頭部分。「コツコツ努力するタイプ」と言いましたが、果たして本当にそうでしょうか。コツコツとは、ものすごい分量のルーティンワークを人よりもできる、というイメージです。

 林さんは「他に道がないかと探索する執着心がある」。もしくは「手を替え品を替えて道を探す」タイプだと思います。自分がどういう人間か。ラベリングはワンフレーズで「○○力」という簡潔なものである必要はありません。もう少し内容に沿うような表現を考えたほうが良さそうです。

 では林さんの弱みは何ですか。

林さん:こだわりが強すぎることです。学生生活ではバイトや公務員の勉強会などいろいろやりたかったが、トランペットにこだわりすぎて他のことが出来なくなってしまいました。逆にこの欠点を利用し、オーディションに落ちた後の1年間はトランペットを頑張って練習できました。

曽和さん:林さんも弱みが強みの裏返しになっています。ただ挫折した経験が強みにつながったというところは良いですね。強みや弱みを語る際には、そのきっかけにもきちんと触れてほしいと思います。もちろん大学時代に限らず。中高生時代のことを語っても構いません。

 それでは最後に武井さんの強みは何ですか。

弱みを克服する

武井さん:目標を決めたらそこに向かって諦めないしぶとさだと思います。中学時代に米国に留学して言語の壁にぶつかりました。そこで人が言語を学ぶ仕組みを学び、さらにそれを自分で試して本当に言語を習得できるか試そうと思いました。大学時代にカナダに留学し、言語学を学ぶために大学の授業とは別に1日7時間、必死になって編入試験の勉強をしたことで、今の大学に入ることができました。

強みや弱みのきっかけにも触れよう

曽和さん:弱みは何ですか。

武井さん:真剣になっているときほど顔に感情が出ないところです。周りの人からは「怖い」とか「何を考えているか分からない」と言われることが多いです。自分は表情が出にくいのだと気付いたので、改善するために意識的に思っていることを言ったり、笑顔などで表情を豊かにしたりするように心がけています。

曽和さん:良いですね。弱みのところで改善ポイントをきちんと伝えられているのが評価されると思います。弱みをちゃんと分かっていて、その弱みによる失敗の経験があり、改善行動まで取っている。これは「いい弱み」と言えます。

 ただし比喩表現には気をつけた方がいいでしょう。武井さんは「言葉の壁にぶつかった」と言いましたが、「言葉の壁」って何でしょうか。物理的にぶつかったわけではないですよね。何か具体的な出来事をそう表現したのでしょうが、相手にはそれが何のことか分かりません。

 面接官は「学生が言ってもいないことを想像してはいけない」と訓練されています。面接官のマニュアルの1ページ目には必ずといっていいほど「事実しか信じるな」と書かれています。思い込みや先入観で人を判断しないように注意しているのです。

 ここは比喩表現や慣用句は使わず、「英語の発音が悪すぎて『グッドモーニング』を20回言っても伝わらなかった」など、具体的な話で表現すべきでしょう。

曽和利光(そわ・としみつ)
1971年生まれ。京都大学教育学部卒。リクルート人事部ゼネラルマネージャー、ライフネット生命総務部長などを経て、2011年、主に新卒採用を対象にしたコンサルタント事業の人材研究所を設立。著書に「就活『後ろ倒し』の衝撃」(東洋経済新報社)など。

(構成 鈴木洋介)[日経電子版2018年3月20日付]

「日経College Cafe」のお勧め記事はこちら>>