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「痛み分かち合える」全日空が求める人材

「痛み分かち合える」全日空が求める人材

 新卒の就職人気ランキングで常に上位に入る全日本空輸。2018年3月卒業予定の大学生・大学院生を対象に日本経済新聞社とマイナビ(東京・千代田)が実施したアンケートでも文系総合で首位になった。17年から採用に人工知能(AI)を利用するアプリを使い始めたのに続き、18年にはウェブ面接を導入するなど採用でも新たな挑戦を続ける構えだ。求める人物像や採用戦略について、人財戦略室の二川恒平スーパーバイザーに聞いた。

AI導入、「非常によかった」

 ――採用にAIを導入したのが話題になりました。

 「事務系総合職志望の学生が対象で、AIを使って性格などをみる『GROW(グロウ)』というアプリを使っています。これをダウンロードして、まず自身の性格診断をしてもらいます。併せて友人など5人の他者からの評価も入れてもらうと、性格や行動の傾向などが分かります。これで人となりを知るとともに、当社があらかじめ設定している『大事にしたいコンピテンシー(行動要件)』との適合性などもみています」

 ――なぜAIの導入に踏み切ったのですか。

羽田空港に並ぶ全日本空輸の航空機。グループも含め、多くの人が運航を支えている

 「以前は、人の目だけで書類選考をしていました。人はやはり完全ではありません。たとえば、自分の経験と似たような経験をした人に会うと、共感が生まれます。体育会で部長を経験したとか、同じ競技をやっていたとか。それもご縁ではありますが、本当は当社で活躍できる人材だったのに、たまたま気質や経験が違う人にあたってうまくいかなかったというようなケースは、必ずあると思います」

 「一方で、AIやIT(情報技術)も完全ではないので、補完しあうやり方ができないかと模索していました。我々が見つけられなかった人をGROWで発見していきたいですね」

 ――使ってみた感想はどうですか。

 「非常によかったです。書類を見た人の評価は低めでも、GROWで当社との親和性が非常に高いと判断された学生に、面接に進んでもらったんです。その結果、ほぼ満点だったという事例もありました。こっちは立つ瀬がないですが(笑)」

 ――航空業界は華やかな印象がある一方、いったんトラブルが起きれば大変な職業でもあります。

 「見た目は優雅でも、水面下では......という白鳥の例え話のようですよね。災害などのイレギュラーな場面で運航できないとき、たとえばコールセンター勤務だったら『自分は何も悪くないのに電話でお客様に怒られてしまう』といったような経験もするでしょう。そのとき『自分の同僚や後輩が空港でどうしてもフォローできなかったことのバトンを渡されたんだ』と思えるかどうか。その意識が非常に大事です」

「チーム力」と「ベンチャー精神」が重要

「バトンを渡されたと思えるか、その意識が大事」と話す二川氏

 ――どういった人物を求めていますか。

 「第一に、職種に限らず『バトンを受け継ぐ』、つまりチームで働く力が外せない要素です。当社の業務は、スーパー経営者がいれば業績を急回復させられるという種類のものではありません。営業担当が大きな修学旅行の受注を受けても、パイロットや整備士がさぼったら飛行機が飛ばず、商品にもならない。このオペレーション全体が商品です。大変なときは全員で痛みを分かち合って、業績がよければ喜ぶ、という思いの人が多いかなと思いますね」

 「第二に、革新的であることです。これは設立の経緯からきている会社のDNA、カラーです。戦後、GHQ(連合国軍総司令部)の政策によって日本の空は封鎖され、米国の飛行機しか飛んでいない時代がありました。当時、なんとか自分たちの手で飛ばすんだという思いで立ち上げた会社です。お金もなく、ヘリコプターが2機あるだけで、社員数もたった28人でした。いわばベンチャー企業として始まった。だから常に新しいことを顧客に提案したい。これが生命線だからです」

 ――経営人材にはどんな資質を求めますか。

 「運航を維持する上で最も大事なことは、判断する力です。AIの導入が進み、運航スケジュールの最適化など自動化される部分もあるでしょう。しかし、最後に『これでいこう』と決めるのは人です。AIが導き出す案が、本当に顧客にとって最善の判断なのか。その視点で悩むことをあきらめない人が周りから信頼されると思います」

 ――19年卒の採用スケジュールは。

 「募集職種は5つあります。グローバルスタッフ職と呼んでいる事務系総合職と技術系総合職はそれぞれ50人程度、客室乗務員は600人程度募集します。さらに運航乗務職(パイロット)と障害者採用もあります。職種によってスケジュールが違います。事務系総合職の場合、4月9日までにウェブでの適性検査と、GROWを受検してもらいます。エントリーシートの提出は10日までです。技術職や客室乗務員はGROWは必要ありません」

 「事務系総合職には6月選考と8月選考があります。エントリーの時期は同じです。留
学や教育実習など個人の事情に応じて、どちらかを選んでもらいます。グループ面接や個別での面接を複数回実施して内々定となります」

ウェブ面接、学生の移動の負担減らす

 ――会社説明会のスタイルは。

 「リクナビやマイナビなどの就職情報サイトが実施する大規模な合同説明会に参加し、大学でも説明会を開くというスタイルは基本的に変わりません。しかし近年、特に総合職を目指すような学生には、少数の会社に狙いを絞るような感度の高い人が多くなってきました。そこで、ここ1、2年は大学やターゲットを絞った説明会にも参加するようになりました」

 ――採用活動で新たな取り組みはありますか。

 「ウェブでの面接を始めます。これまで、8月選考を導入したり、面接のために極力地域に出かけたりして、スケジュールや地域性による事情に対応してきました。今年からは一部ですが、海外や沖縄などにいて、選考に来られない人向けにウェブでの面接を取り入れようと思っています。ウェブで完了するということはありませんが、学生の移動の負担は減らしたいですね」

 ――全日空は昔から学生の人気が高いです。なぜだと思いますか。

 「人気の理由は、客観的に2つあると考えています。1つは、消費者と直接接する会社なので、就活を始める学生にとって親しみがあるということでしょう」

 「もう1つは、学生への接し方を強く意識しているからだと思います。採用活動ではありますが、ほとんどの人とは『ご縁がなかった』という結果になります。その人たちも社会人になり、出張や旅行で利用してくれることがあるでしょう。つまり、今後もお付き合いが続くのです。だから、説明会や面接選考の場面では学生の目線に寄り添い、何かを持ち帰ってもらえる場にできるよう考えています」
(松本千恵)[NIKKEI STYLE 2018年3月21日付]

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