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調査で見えたしまむらとユニクロの差

調査で見えたしまむらとユニクロの差

 デフレの勝ち組ともてはやされたカジュアル衣料大手しまむらが低迷している。ファーストリテイリングの「ユニクロ」が機能性商品で売り上げを伸ばすなか、しまむらは既存店販売が6カ月連続で前年割れ。商品開発や売り場改革も裏目に出ている。日経MJが実施した消費者アンケートでは両ブランドに抱くイメージの違いは歴然。どこで差がついてしまったのか。

18年2月期の既存店売上高が4年ぶりマイナスとなったしまむら

「安い」けれども「安っぽい」

 「踊り場を作ってしまった」。2月21日に着任したばかりの北島常好社長は渋い顔だ。

 主力業態「ファッションセンターしまむら」の2月の既存店売上高は前年比3.8%減。今冬は記録的な寒さで競合勢は単価の高いコート類の売り上げが伸びたが、しまむらは2017年9月以降6カ月連続で前年割れ。18年2月期通期では前の期比3%減と4年ぶりのマイナスとなった。

 連結業績にも影を落とす。18年2月期の売上高5930億円、最終利益348億円と増収増益を見込むが昨年10月に期初予想から下方修正した。

 北島社長の持論は「売り上げは運、利益は技術力」。ここ数年の増収はあくまで運任せだったと振り返る。増益に向けて次の一手も打ってきたつもりだったが「実は効いていなかった」。

 しまむらから消費者は遠のいてしまったのか。日経MJは調査会社モニタス(東京・港)を通じ、20~60代の男女500人に低価格カジュアルブランドについてアンケートを実施した。

 ブランドイメージを複数回答で尋ねたところ、しまむら、ユニクロともに「価格が安い」が最多でそれぞれ65.8%と49.4%を占めた。ユニクロは次いで「シンプル」が39.8%。「値段の割に品質が良い」「機能性が高い」と続く。

 一方のしまむらは「安っぽい」が27.6%。「ださい」もユニクロを上回った。安さは魅力だがかっこ悪い。そんな消費者の思いが透ける。

 しまむらは徹底したコスト管理と低価格戦略で拡大路線を敷き、収益を伸ばしてきた。「ファッションセンターしまむら」の国内店舗数は約1400店と、ユニクロを上回る。だが、ユニクロが海外に成長を求め、商品の機能性で他と差をつけてきたのに対し、しまむらは築いてきた個性が徐々に陳腐化している。

「しまパト」の宝探し感薄らぐ

 しまむらの強みは多品種少量の商品を売り切る戦略。コアな顧客にとって売り場は在庫点数の少ないとがった商品を探す「宝探し」の場。定期的にしまむらを訪れて商品を点検する、「しまむらパトロール=しまパト」を楽しむ女性を生んだ。一方で、「宝探し」の商品がヒットするかは時の運。売れ残れば値下げで売り切るしかなく、収益の圧迫要因にもなる。

 強みを生かしつつ収益性をどう高めるのか。しまむらは事業改革に着手した。一つは16年3月から順次実施した「しまむら」の売り場改革だ。

 店内のレイアウトを見直し、商品を置くゴンドラを通路に陳列するのをやめた。売り場の奥が見えにくく買い逃しが起きていたのを改め、来店者の回遊性を高めて商品に触れやすくした。ゴンドラの高さもコートなどの陳列場所で150センチと従来より低くした。店舗在庫を全体で約1割減らす効果も狙った。

しまむらの従来の店内レイアウト
背の高い陳列棚を減らすなど、見通しを良くした改革後の売り場。常連客には物足りないとの指摘も

 ただ、現状は「在庫が減って売り上げも落ちた」(しまむら幹部)状態。都内の店舗で来店客に聞くと、「すっきりして店内が明るくなった」(50代女性)との声があがる半面、「常連客にとっては物足りない」(40代販売員)との声も漏れる。在庫点数の減少で「しまパト」の楽しさが薄らいでしまったのだ。

 消費者アンケートではファン獲得でもユニクロに軍配が上がる。しまむらで月1~2回以上購入する人は11.3%と、5年前から1.7ポイント増えた。一方でユニクロは同5.9ポイント増の15.9%。差は開いている。

 功罪相半ばする売り場改革は陳列器具の入れ替え費用が1店約250万円。全体で35億円と、節約志向の同社にとっては大規模な設備投資だ。北島社長は「顧客に意図が伝わるまでには2~3年かかる」と説明する。

 商品面の改革も道半ばだ。14年発売の「裏地あったかパンツ」のような大ヒット商品の次がなかなか生まれない。値下げが常態化しがちな現状に危機感を持った野中正人会長と北島社長は、「宝探し」商品の品目を全体の7割から5割に減らしながら、定番商品やプライベートブランド(PB)を中心に単価の高い商品を増やそうと決めた。

 単価を上げるトリガーは機能性だが、ここが消費者にまだ伝わっていない。さらに昨秋は社内で大本命だったウールコートが、寒さでダウンを求める消費者の嗜好とずれ「かわいそうなくらい売れなかった」(幹部)。

 18年はテーマを「美」とし、高品質をうたうPBブランド「クロッシー」からひまわりオイルを入れたワンピースなどを今月中旬から順次売り出す。だが、消費者を呼び込めるかは未知数だ。

ネット通販にようやく参入

 コスト低減を優先し、「店舗販売に重きをおく」(野中会長)として遅れていたネット通販にもようやく参入する。5月にも衣料品通販サイト「ゾゾタウン」や「楽天市場」に出店する計画だ。

 将来的に全社のネット事業で売上高1000億円を目指すとするが、「ゾゾタウン」や「アマゾン」などが急拡大するなか、しまむらが周回遅れの感は否めない。

 さらに、未達成の都心出店にもトライしグループ全体で年100店規模の出店は続けるという。だが、ネットもリアルも拡大する二正面作戦の実現性は不透明だ。

 多ブランド戦略も課題。アンケートではしまむらの若者向け衣料専門店「アベイル」を「知らない」人が63%。ファストリの「ジーユー(GU)」(同17.8%)と比べて消費者に浸透していないことが判明した。

 カジュアル衣料大手は個性で生き残りを図ってきた。スウェーデンの「H&M」やスペインの「ZARA」はトレンド性で、ユニクロは機能性で新たなイメージを得た。だがしまむらは利益志向のなか、他ブランドの間に落ち込んでいる。

 しまむらの今の姿からは、事業規模が大きく増収を維持しているからこそ従来路線を踏襲したい、というジレンマが見える。「廃れるのではなく、世の中の変化に対応して変わっていく」。北島社長は強調する。再び成長軌道に乗るには、成功体験を捨てて従来とは非連続の戦略を描く、という選択肢も必要になりそうだ。

「ユニクロ」サンプルだけつくる施設

 「安い」だけのイメージから脱し「シンプル」や「機能性」を身につけたユニクロ。2017年9~18年2月の既存店売上高は前年同期比8.4%増と好調を維持する。工場や取引先を巻き込み、商品開発に顧客の声を反映する仕組みづくりが実を結び始めている。

 中国・上海中心部から車で1時間弱。縫製加工の国内最大手マツオカコーポレーション(広島県福山市)が16年に立ち上げたユニクロ専用施設がある。1階では約50人の従業員がミシンで作業する。量産工場のように大規模だが、サンプル品作りに特化した場所だ。

 同社はユニクロ向けにパンツなどを生産する。ユニクロの上海拠点で商品企画について商談した後、要望を反映したサンプル品を作る。だが量産を担うバングラデシュやミャンマーの工場でサンプル品を作って上海に戻していると時間がかかってしまう。新施設では指摘を受けた修正を2~3時間で済ませられる。

マツオカコーポレーションが中国・上海に設けたユニクロ専用のサンプル室

 ユニクロと議論しながらサンプル品を何回もやり取りできるように変わり、「結果として品質向上にもつながった」(マツオカの西脇徹常務)。

 商品づくりの根幹となる消費者調査も規模を拡大した。ワイヤを使わずに胸の形をきれいに保つ「ワイヤレスブラ」で、16年に発売した「ビューティーライト」は当初、5サイズを展開した。

 だが、発売後に計2万人をモニター調査すると、「サイズが合わない」との不満が多かった。日本人女性の体格が欧米人に近づいており、胸の大きい人向けのサイズが必要なことが判明。そこで17年に3サイズを追加した。現在、「ワイヤレスブラ」全体の売上高は前年の2倍以上という。

在庫・ネット対応なお課題

 「わたしたちの商品は、お客様の声で進化します」――。「ユニクロアップデート」と名付けたサイトでは、顧客の声を受けて商品の素材やデザインを見直した実例が並ぶ。店頭やはがき、モニター調査などで集めた顧客のコメントを商品企画につなげ、改良を試みる。工場などとの連携で、こうした改善のスピードが上がった。

 一方で、昔から変わらない課題も多い。その一つが品切れに伴う欠品だ。17年秋以降、記録的な寒さもあり「シームレスダウン」などの販売が好調だ。だが18年に入ると、十分な商品量を供給できない事態に陥った。

 また昨秋、毎年最大のセール「感謝祭」でインターネット通販サイトが一時ダウンした。約1日後に復旧したが、業界関係者からは「年末のセールではサイトダウンを避けるため大々的な広告宣伝を控えたようだ」との声が聞かれた。国内のネット販売比率は当初期待したほど伸びていない。

 柳井正会長兼社長が「情報製造小売業」を目指すと表明してから1年。IT(情報技術)を駆使して業務全体を変えるという取り組みは生みの苦しみを続けているもようだ。異業種との競争も激しく、スピード感を出せるかが焦点となる。
(原欣宏)

[日経MJ2018年3月12日付、日経電子版から転載]

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