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日本経済新聞「未来面」
学生から三菱ケミカルホールディングス社長へ提案
空きスペース活用

日本経済新聞「未来面」 学生から三菱ケミカルホールディングス社長へ提案空きスペース活用
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 日本経済新聞の未来面は、読者や企業トップの皆さんと課題を議論し、ともに作っていく紙面です。今回は三菱ケミカルホールディングス社長・越智仁さんからの「女性・外国人活躍、10年後の企業はどう変わる?」という課題について、学生の皆さんから多数の投稿をいただきました。

【課題編】女性・外国人活躍、10年後の企業はどう変わる?

越智仁・三菱ケミカルホールディングス社長

越智仁・三菱ケミカルホールディングス社長

 これからの日本企業は女性と外国人が経営の中枢にどんどん入っていかないと伸びません。ビジネスの舞台が世界へ広がり、顧客の価値観やニーズも多様化しているからです。

 当社グループはかつて、化学という分野で、主に国内向けに、素材を提供してきました。今は世界の様々な人たちに向けて、課題の解決方法を提供する会社に変わりました。日本の大企業では40歳を超える社員の多くは男性ですが、日本人男性だけの発想では、もはや対応しきれません。性別、国籍、年齢などにとらわれない自由な発想、視点、提案が欠かせない時代です。

 当社グループの新卒採用における女性比率は、事務系、技術系合わせて約4割です。現在300人近い女性社員が育児休暇を取得していますが、保育所に関する情報を提供するだけでなく、外部の専門会社と提携し、保育所そのものも手当するなど、働く女性を支援しています。

 女性管理職を一定割合以上にするなどの数値基準も設けていますが、大事なのは男性管理職や男性役員が意識を変えることです。「自分たちはこのやり方でやってきた」と従来の路線を押しつけてはいけない。例えば「会議の続きは一杯飲みながら」といった仕事の進め方は、見直す必要があります。

 出張などで家庭を離れることが難しい女性社員もいます。ビジネスは実際に顔を合わせるのが大事だと言いますが、今はネット社会です。テレビ会議などで、密なコミュニケーションは取れます。このほど外資系製薬会社などで多くの実績、知見を有する方をダイバーシティ推進担当執行役員として傘下の三菱ケミカルに迎えました。大いに新風を吹き込んで欲しいと期待しています。

 何事も日本を中心に考える仕事の進め方を変えるために、海外事業に新しい仕組みを取り入れました。これまでは海外の仕事も日本の事業部ごとに縦割りで、日本から細かな指示をしていました。グローバル化が進んだ今、これでは限界があり、海外の事業所同士が横でつながり、マーケティングや人材育成を一緒にやった方がいいに決まっています。欧米の地域統括会社のトップは現地の方で、同時通訳を入れた経営会議にも参加してもらっています。

 性別、国籍、宗教、文化、障がいの有無など多様化が進めば進むほど、組織に変化を促します。こうした外からの新しい力が、会社を成長させるのです。ダイバーシティ、多様化が今ほど重要な時代はなく、我が社はこれを経営戦略の柱の1つに考えています。

 そこで読者の皆さんにお願いです。女性や外国人が活躍することで、5年後、10年後、日本の会社にどのような変化が起きているでしょうか。枠を超えた自由で大胆な発想のもと、近未来の多様化した日本の会社の姿を描いてみてください。

(日本経済新聞2018年4月2日付)

◇    ◇

【アイデア編】

アイデア001 空きスペース活用
一宮 沙希(早稲田大学文化構想学部4年、21歳)

 10年後の日本企業では、オフィスの空きスペースの活用方法を考える、"場のデザイナー"が活躍するようになると私は想像する。近年注目を浴びているフレックスタイム制やリモートワークの導入が進むと、同じ時間帯に会社に出社する人が減り、社内の場所に空きが生まれることが予測できるからだ。空きスペースが、活用方法次第で、企業の課題解決を促す場や企業ビジョンの象徴となる可能性は大いにあり得る。例えば、皆が気軽に意見を交わしあえるカフェになるかもしれないし、外国人社員と日本人社員の子どもたちの異文化交流を兼ねた遊び場になるかもしれない。日本企業において女性や外国人が活躍するためには、育児休暇や外国との時差といった諸問題を解決する必要がある。解決にあたりフレックスタイム制やリモートワークの導入はさらに進むだろう。10年後、場のデザイナーが、限られた空間に新しい価値を生みだすことを私は期待したい。

アイデア002 MUSTからの解放
藤倉 素子(自営業、53歳)

 日本の女性はたくさんのMUSTに縛られている。特に仕事を持つ女性にその傾向が強い。仕事をしながら家事に手抜きをしてはいけないはなど。海外の女性は働きながらもバランスを保つ事を大事にする。年齢制限は設けず、何歳になっても学ぶ事を忘れない。学びたい時に学び、自分を成長させながら目的達成へ近づける。一握りのエリート女性だけが生き残るのでなく、幅広く女性が活躍できる。日本が持つMUSTの慣習を考える機会を与えてくれる外国人。仕事から一度離れることにより、人間的に深みが増した女性が活躍できる場所が作られる。やはり仕事だけの男性より、仕事以外の経験をする女性の方が考え方が柔軟だ。みんなと同じでないといけないという日本人が持つMUST。外からの影響でMUSTでなくCHOICEな世の中に変わって行くと思う。

アイデア003 今日から変わろう
中田 千里(会社員、31歳)

 私は一番変わるのが日本人だと思う。私自身は女性で海外出身、そして大企業に勤めている。このテーマにぴったり。長年私はずっと日本企業の未来に不安に思っている。女性の視点からすれば、管理職になる為に若い内、女性らしいキャリアプランへの理解や制度が非常に大事。結婚と出産という大きなイベントがある前提でどう育成するのかを考えるべきだ。外国人の視点からすれば、せっかく自分たちの国の文化を持っているのに、隣の人はあえてグーグルで検索しても自分に聞きに来てくれない。これでは世界と戦えない。女性管理職が30%に上り、外国人の執行役員がたくさん増えると、日本人の価値観や考え方はものすごく変わると思う。一人目が変わると二人目も変わる。管理職が変わると部下も変わる。真のグローバル企業を目指すなら、世界と戦っていく時にもっと視野を広く、異文化に心を開いてほしい。10年後?今日から変わろう!

【講評】越智仁・三菱ケミカルホールディングス社長

 今回も斬新なご意見を多数いただきました。「空きスペースを活用する場のデザイナーが活躍する」という意見は、企業が取り入れるべきアイデアだと思います。人工知能(AI)の普及などで人員が減れば、当然社内に空きスペースが増えます。そこをどう有効活用するかという課題は、場のデザインにとどまらず、そこでどんな仕事をするのかという、仕事のデザインであり、そこにどんな人が集うのかという、人のデザインでもあります。

 ラグビーやサッカーなどスポーツでは、空いたスペースをいかに活用するかが大切です。企業経営も同じで空きスペースをうまく使い、そこから新たな価値を生み出すか。経営問題そのものだと思います。
「MUSTからの解放」は、同意する読者も多いのではないでしょうか。日本の会社は、前例や慣習に基づいて「こうすべきだ」「こうあるべきだ」という発想が多いです。職場の中枢に女性や外国人がどんどん入ってくるようになり、これまでの常識が非常識に変わる例も増えています。

 MUSTからの開放は、経営が選択肢を用意することを意味します。働き方が多様化しているのですから、選択肢が増えるのは当然です。男性の役員や幹部社員が自分の心の中にあるMUSTをいかに見直すか。柔軟でグローバルな組織になるために、不可欠でしょう。

 「日本人よ変わろうよ」という呼びかけも面白く読みました。「今日からすぐやろう」というのがいいですね。中国など海外の方には、日本の会社はまだ変革余地が大きく見えるのでしょう。外国人の管理職や経営幹部が増えてくれば、声が出しやすくなります。三菱ケミカルの経営会議メンバーには3人の外国人が含まれます。3人いれば、1人ではできなかった提言や行動ができます。会社を変えてくれると期待しています。

(日本経済新聞2018年4月23日付)

【「未来面」からの課題】
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