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career-働き方

人事部の視点(9)自立する力そぐ「教えすぎ」
~就活生の親の心構え

人事部の視点(9) 自立する力そぐ「教えすぎ」~就活生の親の心構え
authored by 日経カレッジカフェ×人事部

 こんにちは。株式会社モザイクワーク取締役COOの髙橋実です。モザイクワークは企業の採用コンサルティングを行っている会社です。今僕は、モザイクワークのほか、二社で人事の仕事に携わり「本気の複業」を行っています。

 さて、ここ数年、保護者の方が就活に参加する、という話が増えています。大学では保護者向けの就活説明会を行ったり、企業では保護者同伴が可能な就職説明会などを開催しているケースも出てきています。

 これからの先行き不透明な世の中を考えると、我が子の将来が心配になってしまうことも理解できます。僕は企業人事として、新入社員入社日当日に「保護者への手紙」を書いてもらったり(ほとんどの新卒社員は、感謝の気持ちか、これからの期待と抱負を書いてくれます)、家庭訪問をしてご挨拶をしたりと、保護者の方に安心してもらう取り組みをしていたこともあります。こうしたことをする企業も増えてきています。

 そんな訳で、今回はこれまでと少し趣向を変え、就活生を持つ保護者や大人の方向けに、「就活を控えている人たちへの向き合い方」についてお話ししたいと思います。

情報の渦に巻き込まれている若者

 学生の皆さんと話をしていると、僕の学生時代と比べ圧倒的に「勉強している」し「真面目」だと感じます。そして、自分の将来を真剣に考えています。そして、今の就活環境は超売り手市場で、どこの企業も雇用不足。一見バラ色に見える就活環境ですが、学生の悩みは深くなっているのが実態です。なぜでしょう。

 一つの大きな理由は、「情報量が多すぎる」ことにあります。

 インターネットが普及して、様々な情報が可視化されました。でも、得られる情報量が爆発的に増えたことで、判断する軸が増えてしまい、消化不良に陥っている。情報は、自らで正しい判断軸をもっていれば選択は簡単ですが、就活は学生にとって手探りで、判断軸を持たないまま膨大な情報の渦に巻き込まれていく。これでは、迷うのは当たり前です。

 僕の就活時代は、インターネットもなく入手できる情報が少なかった。だから、直接企業の方々に会いに行って情報を得ていきましたが、自分自身が直接得た情報で判断できるので迷うことが少なかった。でも、今は間接的に取得できる情報量が多過ぎることで、かえって時間と手間もかかってしまい、結果迷いを生じさせているのではないかと思います。

これからの時代に一番大切なのは「キャリア自立」

 これからの若者が対峙する世の中は、想像をはるかに超える環境変化が待ち受けており、「超高齢化社会化」「世界でも未曽有の人口減」に直面します(リクルートワークス研究所レポート「2025年の働くを予測」)

 このような世の中で必要となるのはどういうことでしょうか。僕は「キャリアの自立」だと思っています。どんな環境変化があっても自身で決断をしていく。「自分の将来は自分で決める」そのための「決断をする力」が、今まで以上に必要になってきていると言えるでしょう。

 例えば、以前とある大学の話をお伺いしたのですが、その大学では一時期学生全員とキャリア面談を行ったそうです。しかし皮肉にも、学生の内定率が下がってしまいました。キャリア面談という頼れる場所ができたことで自身の決断をする力が弱まってしまった、「教え過ぎ」が決断する力をそぎ落としてしまう要因になってしまったのかもしれません。

自らでキャリアを選ぶために大人がやるべきこと

 情報が膨大にあり、これからは「キャリアの自立」が必要になる若者たち。そのような中で、大人は何をするべきなのでしょうか。僕は「教えすぎず、答えは自分で出させること」が重要なのではないかと感じています。

 決断とは、苦しいものです。でも、その中で苦しんで、自ら答えを出す、そういう苦しい場面を繰り返し体験していくことで、「キャリアの自立」の力がついてくる。周囲が失敗を恐れて簡単に答えを導いてしまうことは、成長の機会を奪っているかもしれないのです。挫折は辛い、だから正解を早く教えてあげたいと思うのは親心。しかし、あえて若者が自ら答えを出すことを支援することこそが、僕ら大人がやるべき本当の親心なのではないでしょうか。

 就活は、これからの人生100年時代に生きていく若者にとっては、社会人としてのスタートラインに立っただけのことです。今後必要になるのは、未来に立ちはだかる壁を突き破る力をつけること。まさしく人生を生き抜いていく力をつけていくことです。そのためにも、僕たち大人は少し離れたところから、彼らを信用し、暖かく見守ることが必要なことなのではないでしょうか。