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相手に伝わる文章術 書く前にツリーで整理

相手に伝わる文章術 書く前にツリーで整理

 メールや報告書を相手に分かりやすく伝える「ロジカルライティング」が注目されている。働き方改革に欠かせない業務の効率向上にもつながるからだ。家電の取扱説明書やビジネスメールの書き方などを指導するテクニカルライターの高橋慈子さんにロジカルライティングのコツを聞いた。

 たかはし・しげこ 1984年東京農工大農卒。技術系出版社を経てテクニカルライターとして独立。88年ハーティネス設立、代表取締役。企業のマニュアル制作にも携わる。慶大などで非常勤講師を務める。

 ――ロジカルライティングとは何でしょうか。

 「相手に読みやすく伝える技術だ。研修ではよく、自分の時間短縮ではなく、相手の時間短縮になる文章にしようと伝えている。文章の質を上げることで受け手側が把握しやすくすれば業務の効率を上げられる。働き方改革に伴い生産性や競争力を高めたいというニーズが高まるなかで注目されるようになってきた」

 「読み手をよく考えてビジネス文書を書いているという人は意外と少ない。社会人向けに開いた講座で、受講後に『読み手は直属の上司だけだと考えていた』と振り返るコメントを読むこともある。上司の先にいる経営陣や取引先の経営層もメールを読む可能性があることを意識していない人が多い。日本の国語教育では作文や文芸作品の読解が多く、情報を伝える書き方を学ぶ時間が少ない」

 ――ビジネス文書の書き方で最近目立つ悩みは何ですか。

 「メールの書き方だ。若い世代はLINEなどメッセンジャーでの短いやりとりが増え、メールを使う機会が減っているため慣れておらず自信がない。まずメールの件名の付け方が分からないという人も多い。相手がすぐに読むべきか判断できるよう、分かりやすく簡潔な目的を件名に入れよう」

 「ダイバーシティー(多様性)が広がり、同じ職場で働く仲間が同じような教育や社会経験を積んできた人だけとは限らない。契約社員や派遣社員、外国人の社員、取引先も様々な業界の人と連携しながら仕事をするのが当たり前になってきた。コンプライアンス(法令順守)が重視され、メールは証拠になる。後から直接関わっていない人が読んでも分かりやすく適切なやりとりができていれば自分を守ることもできる」

 ――文章を分かりやすくまとめるにはどうしたらよいでしょうか。

 「メールや文書の件名に目的があり、本文で内容を簡潔に説明するためのつながりが重要だ。文章がつながっていないと読み手は納得しにくい。書くことが苦手な人ほど最初に構成しないまま何となく書き始めてしまうから、仕上げるのに時間がかかり、読みにくい文章になってしまう」

 ――文章を書く前に準備することはありますか。

 「読み手がどのような人かを考えるのが重要だ。ビジネス文書の目的は相手に何をしてほしいかを伝えて納得させ、行動させることだ。自分が伝えたいことだけを考えて書くと、自分主体の論理になってしまう」

 「頭の中にある情報を整理して見えるようにするために使うのが『ロジックツリー』だ。グループにまとめたり階層にしたりして、情報のつながりを分かりやすくする。どのような読み手が何を知りたがってるのか、相手の求めることをよく考えながら情報を木の枝のようにつなげて、書く内容の順序や内容を把握しておきたい」

 ――論理的に整理する際のルールはありますか。

 「読み手の知識やメリットに合わせて伝えなければならない。例えばスマートフォンの説明で『パソコンと携帯電話の中間』と言ってもシニア世代には分かりにくい。『画面をタッチして操作する』『家族の顔を見ながら通話できる』と伝えた方が伝わりやすい」

 「問題の概要を提示し、相手の課題をどう解決できるかを分かりやすく伝えよう。強みや弱みを分析する『SWOT分析』や、競合や顧客との関係性に視点を置く『3C分析』などを活用しながら、伝える情報を精査するのも効果的だ」

 ――上司や取引先へのメールで起きがちな失敗を教えてください。

 「いつも接しているから知っているだろうと思い込んで必要な事実や具体的な数字を省いてしまう人が多い。読み手はいつのどの件だったかと前のメールを確認するため、余計な時間や手間をかけてしまう。『あの件』のように指示代名詞を使わずに、できるだけ具体的な表現を心がけたい」

 「伝えるべき重要なことは先に書く方が望ましい。起承転結のように背景を説明してから結果を示す説明の仕方に慣れている人が多い。英語に翻訳すると、要点が後から出てくるため読み手を困惑させかねない。グローバルに事業展開する企業が多いなかで、自分の書いた文章がそのまま英語に翻訳されることを念頭に置いて構成するようにしよう」
(聞き手は企業報道部 小柳優太)[日経産業新聞 2018年4月2日付、日経電子版から転載]

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