日本経済新聞 関連サイト

OK
career-働き方

人事部の視点(11)企業選び、何を基準にすればよい?
~就活生の親の心構え

人事部の視点(11) 企業選び、何を基準にすればよい?~就活生の親の心構え
authored by 日経カレッジカフェ×人事部

 こんにちは。エリーパワー人事部で新卒採用を担当しております玉井亜以子です。

 さて、人事部の視点(9)(10)でもありましたが、昨今新卒採用において、内定時に親の意思を確認する「オヤカク」という言葉が出てきたり、親向けの就職説明会等が新聞でも取り上げられるようになりました。

 このような情報を聞くと、子供に過干渉する親が増えている?ようにも思えます。しかし、私自身、親世代と共に働きながらそのような話を聞いたことがなく、違和感を覚えたのです。

 一体、親たちは何が目的で子の就活に参加するのか?その理由をリサーチすべく、社内の親世代メンバーに調査(アンケート・ヒアリング)を行いました。

自分たちの時代との違いが多くて、知らないことが多い

 まず、調査結果として出てきたのが「就活について知らないことが多いから」ということ。
・親世代の就活方法と、今の方法が違いすぎて、仕組みを知りたい
・親世代には想像しなかった業界や仕事、働き方があり、どんな内容か知りたい

 人事部に視点(9)にもありましたが、これは親も情報化社会の影響を受けている結果です。情報が限られていたが故、「知っている=目にすることができる」「知らない=目に入らない」と二分化することができましたが、情報が増えたことで「見ることができるけれど、知らない」という新しい存在が生まれました。

 親がその親から言われた「そんな知らない会社やめなさい」という言葉には、ある意味の真実があり、「知らない=判断材料が少なく判断できない=危険な可能性が高い」といえた。しかし、判断材料が入手しやすい今は、「知っている=安全、知らない=危険」とは言い切れなくなってきたのです。

 情報を理解した上で、各自が判断をしなければならない。そのような状況で、親の「知りたい」と、企業の「知ってほしい」というニーズが合致したのが、親の就活への参加というカタチなのではないでしょうか。

親も迷っている―どう企業を評価すればいい?

 次に結果から出てきたのが、「どうやって企業を評価すればいいのか分からないから」。
・世間では認知されている企業であっても、本当はどうなんだ?
・聞いたこともない企業をどう評価すべき?

 情報の種類・数を増やしても、必要な情報を全て集めるのは不可能。「判断するためには、どうすればいいの?」と視点が分からず、親も迷っているのです。

企業を判断するための視点、忘れがちなのは?

 判断するための視点は色々とあります。「社風、商品、業績・財務情報」など具体的なことが比較的思い浮かびやすいと思いますが、忘れがちになるのが「業界・事業全体をとらえる」という視点。

 今回の調査で「父親から聞いた業界研究の話が非常に役立った」という話がありました。

 「成長性は、成長できる機会の量で決まる。個人・企業も業界の中にいる1つであり、業界の成長に影響を受ける。成長性は、時間軸(フェーズ、ライフサイクルの長さ)、環境軸(海外との比較、業界内でのポジション、関連業界との関係性)で判断する」「チャンスが与えられやすい成長期であれば、業界内でポジションが変わる可能性は十分ある。しかし、機会が少なくなる成熟期においては話が異なる。しかしそれは、海外や関連業界との関係も含めて考えるべき」と言われ、本人は「こんな見方があるのか」と深く納得したとのこと。

私自身の視点で恐縮ですが、「人を大切にしているか?」「事業レベル」「下積み期間の長さ」からも判断できると考えています。 

 仕事の下積み期間は、会社から見れば、人への投資期間でもあります。手軽に起業でき、商品・サービスの提供のハードルが低い事業の場合、仕事の習熟年数も短い。「誰でも簡単にできる=誰でも代わりになれる」傾向が強く、投資回収も短い。そのような場合、同じ人に長く働いてもらうメリットが会社として薄い。

 一方、事業が誰でも出来るものではなくハードルが高い場合は、習熟に時間を要するため、下積み期間も長くなる。難しい仕事ができる人は代替も難しく、投資回収するためにも、長く働いてもらわなければならない。

 事業の側面から、前者は「人が使い捨てされやすい」、後者は「使い捨てできない」構造にあります。「20代で部長に抜擢!」「すぐに活躍できる教育体制です」の言葉を、評価制度や教育の充実という視点からだけでなく、「事業」「習熟時間」という視点からも判断してもらえればと思います。

経験者でも判断を誤ることがある-感情とバイアス-

 とはいえ、いくら納得できる視点で導き出してもそれはただの仮説。決意して実行しなければ、結果を確かめることはできません。入社しないと分からないことは、必ずある。それが分かっていたとしても、人は感情を持ち、バイアスがかかる(着目した情報を集めてしまう)特性が、時に邪魔をすることが。

 「不安・怖れ」がマイナス面を過剰に評価させ、「驚きや興奮」がプラス情報ばかりを集めさせる。その反対にあるものが目に入らず、客観的に判断できない傾向に陥りがちです。
・全てにメリットとデメリットは必ず同じようある
・リスクは対策できるものと出来ないものに分ける
・リスクを恐れて実行しないのではなく、実行して対策していくという方法もある

 この当たり前が、感情とバイアスで分からなくなってしまう。また、判断する視点は経験から導きだせますが、感情とバイアスは、経験で回避できるものではない。経験豊富な親でも同じことが起こりえるし、逆に経験があればあるほど、そこに着目しすぎて盲目になってしまう可能性も高い。

 今回、就活生の親の心構えとして、企業の判断方法について書かせて頂いたコラムですが、私自身も多くの気づきがありました。自身が未熟な故に、経験が判断の精度を上げると思っていましたが、経験はどう活かすのかが重要なのだと、当たり前のことに気づかされました。

「リスクをとって挑戦する」
「経験をリスク回避に活かすのではなく、経験こそリスク回収に活かす」

そういう心構えで、これからもモノゴトにあたっていけたらと思っております。