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6月1日の迎え方(就活リポート2019) 選考解禁!女子学生の意思決定に必要なこと

6月1日の迎え方(就活リポート2019)  選考解禁!女子学生の意思決定に必要なこと
authored by 菊入みゆき明星大学特任教授、JTBコミュニケーションデザイン
ワーク・モチベーション研究所長

 企業の採用選考解禁の時期が近づいてきました。就職活動をする学生は、多くの、そして重大な意思決定を迫られる時期でもあります。ここでは、女子学生に向けて、意思決定する際に何が必要かをアドバイスします。

就活は意思決定の連続

 就活は「意思決定」の連続です。「どの会社の説明会に行くか」、「聞いた説明をどう受け取るか」、「どの会社にESを出すか」、「A社とB社の面接が重なった、どちらを選ぶか」等、情報を得て選び、次の情報を得て、また選ぶという繰り返しです。

 就職という、人生における大きな意思決定で後悔しないためには、何に気をつければいいのでしょうか。

そもそも正しい「意思決定」はできない

 「一番いい会社を正確に選びたい」と多くの学生は思っているでしょう。しかし、そうした正しい「意思決定」はそもそも不可能です。まず手に入る情報が限られています。すべての企業の募集内容を詳しく理解することはできません。募集の資料だけではわからないこともあります。さらに、私たちの判断は偏ったり、非合理的になりがちです。

 客観的な正解はないのです。あるのは、自分が満足し、納得できる意思決定です。存在しない正解を求めて焦るよりも、自分が満足か、納得できるかを考えましょう。

意思決定では不安はあって当たり前

 人生における大きな意思決定に、慣れていないという大学生は多いでしょう。特に女性は多いかもしれません。自分で決めることを女性には求めない、という社会通念が未だに残っていますし、女性自身も、そうした行動を求められていないとどこかで感じてしまうからです。

 就活のタイミングで、「自分で決める」ことに慣れましょう。「自分の人生は、自分で設計する」という気持ちを持つことです。これが、納得できる意思決定への第1歩です。

 決定には、不安や緊張が伴います。ある女子学生が、「きついです。もう、誰かにスパンと決めちゃってほしいです」と言っていました。重大な決定だからこそ、誰かに任せたくなるほどきついのです。

 何かを選ぶということは、別の何かを捨てることを意味します。これが、意思決定がきつい理由です。捨てるのは可能性です。A社に新卒入社するという決定は、別のすべての会社に新卒入社する可能性を捨てることをも意味します。「本当にこれでよいのだろうか」と不安になったり緊張したりするのは、当たり前のことなのです。

 ですから、「きつい」と思ったら、「ああ、来た来た。これは、意思決定のときに起こる不安だ」と考えましょう。行動を起こし、人と話し、ものごとを進めるうちに、不安は軽くなります。

判断の「軸」と「幅」

 6月1日からの一定期間は、大企業を中心に採用活動が山場を迎えます。その場で、またはその日のうちに返事をしなくてはならない、という場面もあるでしょう。あらかじめ意思決定の「軸」を確認しておきましょう。自分が大切にしていること、これだけはゆずれないという基準です。「自分の〇〇力を活かせる仕事がしたい」「将来は、結婚、育児と仕事を両立させたい」などです。こうした軸は、最初は自分でもよくわからないのですが、就活を通して徐々にできていきます。

 一昨年就活をしていた木村さん(仮名、女性)は、最初は漠然と、「金融業界がいい」と考えていました。しかし、様々な企業の説明を聞き、面接を受けるうちに、「地元がすごく好きなんだと気づいたんです」と言います。結局、銀行や証券会社の内定を断り、地元の信用金庫に就職しました。今は、楽しそうにお客様のお宅をまわり、「ありがとう、と言われると、めちゃ嬉しくて、やりがいを感じます」と話しています。

 ゆずれない「軸」と同時に、ゆずってもいい「幅」も考えておきます。「〇〇力を活かせる仕事がしたいけど、期間限定であれば他の仕事を経験するのもいいかもしれない」「育児もしたいが、いろいろなサポートが受けられるなら、外勤の仕事や昇進も考える」等です。

 昨年就活生だったBさんは、最初は「語学力を生かせる仕事がしたい。けれど、結婚や育児を考えると海外赴任はしたくない」と考えていました。しかし、いくつかの企業をまわるうちに、「海外赴任もありかな」と思うようになったそうです。「先のことはわからないから、あんまり選択肢を狭めるのもよくない、と思うようになりました」と言って、結局商社に就職しました。ゆずってもいい幅を持って活動をした結果、満足できる就職ができた例です。

自分の偏りを知っておこう

 私たちの意思決定は、偏ったり非合理的になりがちです。代表的な例は、一番最近得た情報を重視してしまうという偏りです。例えば、さっき会った友達が、「従業員の平均年齢が若い方がいいらしい」と言うのを聞いたために、説明会でそのことばかり気になり、他の重要な説明を聞き流してしまう等です。また、ハロー効果と言って、いったんこの会社は素晴らしいと思うと、なにもかも素晴らしく見えて、欠点が見えなくなってしまうという偏りがあります。逆も同じで、こんな会社ダメだと思ってしまうと、素晴らしい点が目に入らなくなります。

 女性は、人間関係に対する関心が高い場合が多いです。人と比較して焦ったり、悩んだりし、その気持ちが意思決定に影響しがちです。今就活中の竹中さん(仮名、女性)は、「友達がいい会社に内定もらって、その会社がすごくよく見えちゃって、自分が受けている会社が、あんまりよく思えなくなってきたんです」と言っています。ハロー効果で、判断に偏りが生まれている状況です。

 偏りは必ずあります。偏りを自覚しましょう。「さっき聞いた話を重視しすぎているのかもしれない」、「素晴らしい(ダメだ)と思い込んでいるのかもしれない」と、自分の気持ちを外から眺めてください。そして、もう一度、自分の「軸」と「幅」に立ち帰りましょう。

心身をゆるめること

 最後にひとこと。気持ちもからだも凝り固まっていると、柔軟なものの見方ができません。意思決定をするときは、いったん心身をゆるめる時間を、ぜひ持ってください。これは本当におすすめです。ゆっくり入浴したり、時間がなければ、手首足首をぶらぶらと回し、ゆっくり呼吸をしましょう。特に吐く息を長くしましょう。これだけでも、心身が適度にゆるみ、納得できる意思決定ができるようになりますよ。