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目指せソーラーカー世界一(3)料理担当もエンジニア 34人分の食事づくりに奮闘

目指せソーラーカー世界一(3) 料理担当もエンジニア 34人分の食事づくりに奮闘
authored by 工学院大学ソーラーチーム

 初めまして、工学院大学ソーラーチームの前田尚輝です。私はチーム内で電気とエネマネ(エネルギーマネージメント)を担当し、忙しいながらも充実した毎日を送っています。3回目のテーマはズバリ、「料理」です。

筆者
オーストラリアで電装関係の点検を行う筆者

 ここで、初めて読んでいただく方のために簡単なチーム紹介をしましょう。

 工学院大学ソーラーチームは"理工学に関する創造活動"を通して創造性を育むことを目的に設立され、学内の「学生プロジェクト」の一つとして始まりました。ソーラーカーの設計・製作はもちろん、財務・広報活動に至るまで全てを学生の力で行っています。"他チームと似た車は一切作らない"という思想のもと製作した独創的なソーラーカーで、オーストラリア大陸約3000kmを北から南へ縦断するソーラーカーの世界大会「ブリヂストンワールドソーラーチャレンジ」に参戦し、優勝を目指しています。また、昨年はスピードを競うチャレンジャークラスに参戦し、悪天候のレースで半数以上のチームがリタイアする中、7位という成績を収めました。

 さて、本題に戻り、「なぜ、料理なのか?」を説明します。答えはカンタン、私がシェフとして料理担当だったからです。実はオーストラリアでの大会期間中だけでなく車両製作中も自炊が多かったのですが、その中で普通とはちょっと?!違ったソーラーチームの様子をお伝えしたいと思います。

車体製作でも自炊合宿

 日本での車体製作の際は、スポンサー企業の一つであるジーエイチクラフトで、炭素繊維ボディーの成形についてご指導いただきながら、同社の施設を借用し、学生自身でボディーの成形作業に取り組みました。さらに、春休み期間の2カ月間、社宅をお借りし、メンバーで自炊をしながら、最大で15人前の食事を一般家庭にある2口ガスコンロで調理しながら過ごす生活を送りました。

 最初に困ったことはご飯を炊くことです。一度に10合以上炊かなければいけないのですが、チームで持っている炊飯器はオーストラリアのコンセントでしか使えないものだったため、アルミ鍋を使って炊くことになりました。最初は焦げてしまっていましたが3日ぐらい経つとある程度慣れて、ちょうど良いおこげつきのご飯を炊くことができるようになりました。ただ一つ欠点があって、それはご飯を炊くとガスコンロの片側が塞がれてしまうということでした。すると、もう片側のみでおかずや汁物を作る必要があるだけでなく、一度に作れる量も限られてしまうため、非常に苦労しました。

節分には恵方巻をみんなでガブリ
大きな鍋でもぺろりと平らげてしまいます

 これを2カ月ほど続けていましたが、毎日やっていると時々手を抜きたくなる時があります。一人暮らしをしている方や主婦の方は、一度は感じたことがあるのではないでしょうか。そういう時に私はいつも鍋を作っていました。お鍋だとご飯を炊く必要もなく、野菜を切って鍋で煮るだけだったのでとっても簡単だったのです。分量はあいかわらず多く、白菜を丸々ひと玉使ったり豆腐を3丁ぐらい入れたりしていました。チームで持っているアルミ鍋一つでは作れる量に限りがあるため(それでも15リットルは入り、炊き出しができるぐらい大きい鍋でした)、一つ目の鍋でみんなが食べている間に、寸胴を使って残り半分を作ったりもしていました。3日に1度のペースでカートいっぱいに食材を購入する必要があったため、冷蔵庫やキッチン周りが常に食材でいっぱいだったのを覚えています。

レース中はテントで34人分の食事

 世界大会が開催されるオーストラリアでは、大会期間中の1週間は広大な大地でテント生活をし、その前後の1週間ほどはキッチン付きのコンドミニアムで自炊生活を送りました。

 大会前後を過ごしたコンドミニアムでは、1室5人ほどのグループで部屋ごとにそれぞれ自炊をしました。独立した大陸であるオーストラリアは、特有の生態系と家畜農業保護のため、食品類の持ち込みが非常に厳しく、インスタント味噌汁のような日本の便利な商品を持ち込むことができません。そのため、食材のすべてを現地調達する必要がありました。オーストラリアのスーパーに行ってまず驚いたのは、日本では当たり前のように売られている、私が知っている野菜がほとんどないということでした。陳列されている野菜類をどう調理するのか全く分かりませんでした。

 日本のスーパーで販売されている「中華の素」のような、食材とまぜるだけで簡単に一品が作れる便利な商品も売っていませんでした。加えてオーストラリアの物価は高く、私の感覚では日本の倍以上していました。オーストラリアの牛肉は日本にも輸出されているぐらい有名なため、日本とほとんど変わらない値段で買うことができました(鳥、豚は牛肉より高く、ラム肉は牛より少し安い)。しかし、日本で買うものよりも硬く筋が多かったため、きちんと下ごしらえをしないと噛み切れないほどでした。そんな中でしたが、私たちの部屋では白身魚のムニエルやステーキ・ピザを作ったりして、普段よりも豪華なんじゃないかと思うぐらい色々な料理を作って食べました。ちなみにオーストラリアにもお米は売っていますが、タイ米が大半で日本のジャポニカ米は値段が高かったです。

レース前後の豪州のコンドミニアムでは、毎日これぐらい作って食べていました。中央は白身魚のホイル焼き

 レース期間中の1週間は、キャンプをしながら34人分の食事をみんなで作っていました。朝は早朝より活動を開始するため、時間がなく各自でサンドイッチを作って食べていました。昼も一日中、車で移動するため、車内でサンドイッチを食べていました。ちなみにサンドイッチの具材は、ハムやコーンビーフと葉っぱでした(レタスとは明らかに違う、まさに葉っぱ)。夜はガスコンロや寸胴を持ち出して、いろいろな料理を作りました。近くにスーパーがあった時はステーキやフランクフルトを焼いて食べ、うまく調達できないときはトマト缶や野菜を使ってトマトスープを作りました。

夜は砂漠の中心でワイルドな晩ごはん
朝はオープンサンドで時間短縮していました

 そんな中で、ある事件が起きました。カレーを作るために食材の買い出し班がカレーのルーを買いに行ったのですが(オーストラリアのスーパーには日本のカレールーが売っている)、買ってきたのはルーになる前のカレーのスパイス。カレーは、カレールーからだと作るのが簡単ですが、スパイスからだと作るのがすごく大変なのです。しかも100人前を軽く超える量を買ってきた......。どうやら「カレーの素を買ってきて」と言ったため、スパイスの粉を買ってきたようです......。残念ながら私たちのチームにはインド出身のメンバーがいるわけでもなくカレー粉をカレールーにする食材もなかったため、断念しました。そんなこともありながら何とかオーストラリアでの生活を終えました。

レース後にはカンガルーステーキ

カンガルーのステーキ。見た目だけでは牛肉と区別できません

 ここまでは自炊に関する話をお送りしてきましたが、最後にオーストラリアで食べた料理についてお話します。オーストラリアでの大会終了後、数人のメンバーと共にアデレードにあるおしゃれなレストランにご飯を食べに行った時のことです。英語のメニューを渡されたので、頑張って翻訳しながら何を食べようか考えていると、黒毛和牛のステーキに並んでカンガルーとワニのステーキがありました。日本人である私はすごく驚きましたが、オーストラリアではカンガルー・ワニ・エミューなどの肉が食べられているようです。私はその時一緒にいたメンバーとカンガルーのステーキを頼んでみました。食感は柔らかいだけでなくきちんと歯ごたえもあり、臭みのないおいしい赤身の牛肉という感じでした。もしオーストラリアに行く機会があったらチャレンジしてみると面白いと思います。

さて、今回の料理特集はいかがだったでしょうか。ちょっとしたハプニングも人数が多くなると大変なことになるので、皆様お気を付けください(笑)。

 それでは、次回のソーラーチーム特集をお楽しみに!!