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早稲田大ワークショップ2018(2)進化する恋愛のカタチ 
〜私たちはなぜ恋愛ゲームにハマるのか~

早稲田大ワークショップ2018(2) 進化する恋愛のカタチ 〜私たちはなぜ恋愛ゲームにハマるのか~
authored by 早大ワークショップ受講生
 この記事は、早稲田大学の2018年度学部横断型授業「プロフェッショナルズ・ワークショップ」の日本経済新聞社実施講座を受講した学生による作品です。このテーマで4年目を迎える今年も、4月から6月まで講座を実施。「日経カレッジカフェのコンテンツを作成しよう」という課題に対して、受講した学生がメディアの仕組みや取材、記事の書き方について学び、3グループに分かれて実際に独自記事を作成しました。今回、紹介する記事はその中の1本です。他のグループの作品も後日、掲載します。なお、文章表現の一部などはカレッジカフェ編集部で修正しています。

 「恋って何なんだろう」。都会の雑踏にふと耳を傾けてみると、こんな言葉が聞こえてきた。多くの人々が日夜悩まされている万人共通の問題――それが恋愛である。しかし、時代はネット隆盛期。アプリを使えば、自分の好みの異性と簡単に出会うこともできる。恋愛の価値観は年々変化し続けている。その価値観を揺るがす一因となっているのが恋愛シミュレーションゲームだ。私たちは某ゲーム会社のシナリオライターの方にお話を伺い、その魅力の源を探った。

若者の2人に1人は恋愛ゲーム経験者

2人に1人は恋愛ゲームをしたことがある驚きの結果に

 恋愛ゲームはどのくらいポピュラーなのか。大学生を中心とする若者に「恋愛ゲームをプレイしたことがあるか」とアンケートを取ったところ、476人の回答者のうち約半数が「ある」と答えた。恋愛ゲームは若者に「受けている」と言っても過言ではないだろう。

 今回、話を伺ったシナリオライターのTさんによると、恋愛ゲームで大切なのは「惹(ひ)き」と「訴求」なのだそうだ。「ライターとしての課題でもありますが、ユーザーに読ませるためにはこれから『何か起こるな』って予想してもらうことが重要ですね。タイトルやあらすじに想像力をかきたてる文言を入れて、ネタとして『読みたい』と思ってもらえたら、それは『惹きがある』とか『ネタの訴求をしている』って言うのです」と彼女は語る。タイトルなどから自分が惹かれるものを選んで、その恋愛をバーチャル体験する――このスタイルが受けているのだ。

 「例えば、『契約結婚』という言葉には惹きがあるんです。ドラマの『逃げ恥(逃げるは恥だが役に立つ)』でもあったけど、やっぱり世の中の流行は人気に直結するので」。世のトレンドをしっかりつかんでいくのも制作側の務めなのだという。

 ユーザーの中には、課金をしてゲームを楽しむ人もいる。アンケートで「課金をしたことがあるか」と質問したところ、普段から恋愛ゲームを好んでプレイする人の4分の1は、これまでに2万円以上課金をしたそうだ。素敵な恋愛を体験するためにお金を払う。モノではなく経験に投資する現代の風潮が顕著に表れていると感じた。

三次元の恋愛、二次元の恋愛

 一方で、「恋愛ゲームはリアルで恋愛できない人がするもの」と考えている人も少なくないのではないだろうか。私たちはアンケートで恋愛ゲームをしない人たちに対し、「恋愛ゲームをしない(ハマれない)理由はなぜか」、「人々が恋愛ゲームをプレイする理由は何だと思うか」という2つの質問を投げかけてみた。前者への回答としては、「二次元の恋愛には興味がない」「周りの目が痛いから」というものが目立った。恋愛ゲームはいわゆる「オタクがするもの」として認識している人が多いようだ。

 後者に対する回答には「ストーリーやキャラクターに魅力を感じているから」というポジティブな意見が多かったが、「現実の恋愛が苦手・上手くいかないから」というネガティブな意見も4割ほどあった。恋愛ゲームは現実の埋め合わせ的な部分を担っているという印象が強いのか、やはり恋愛ゲームをしない人の中では「三次元以外の恋愛には抵抗がある」という考えが根強いのだろう。

非現実の世界でしか与えられないことをしたい

 ゲームを「現実逃避」と考える人も多い中、現実の恋愛と非現実の恋愛という2つの位置づけをどのように考えればよいのか。

Tさんはアイデアメモを見せながら話してくださった

 ここで、私たちは恋愛ゲームのユーザーが何を求めているのかに注目した。アンケートでゲームを好んでプレイする人に対し、「好きなキャラクターやストーリーは何か」と尋ねたところ、キャラクターなら王子様やアイドル、ストーリーならファンタジーやSF、果ては主人公や相手キャラクターが亡くなる悲恋モノなど、奇抜な展開が好まれていることが分かった。いずれも恋愛対象として憧れの存在ではあるものの、現実ではほぼ不可能なシチュエーションだ。ユーザーがゲームに求めるものは"いかに非日常を体験するか"ではないか。

 Tさんはこう語る。「やってみたいけどゲームの世界でしかできないことってあるじゃないですか。恋愛ならアイドルと秘密の恋をするとか、王子様にプロポーズされるとかだったりします。ラブソングは共感したいときに聞くけど、恋愛ゲームは刺激を求めてプレイする。現実で求められていることとゲームに求められていることは別なんです。ユーザーの皆さんには、この世界でしかできない経験を与えられればいいなと思っています」。プレイする側と作る側、どちらも非現実だからこそ、できる恋愛を大切にしているのだ。

ゲームの世界がもっと身近に

VRの恋愛ゲームを実際に体験した班員

 ゲームでの恋愛は今後、さらに身近になっていくだろう。制作側であるTさんは、「今の最先端はVR(仮想現実)ですよね。キャラクターと実際に会話している、触れられる距離にいるっていうのはユーザーのキャラクター愛が強まりますから、これからどんどん増えると思います」と予想する。「できることなら、すべてVRのゲームを作ってみたいですね」。

 恋愛に関する制作物が多く世に出回る今、恋愛ゲームはこれ以上ないほどの可能性を秘めている媒体である。恋愛ゲーム特有の「自分が主人公」というステージは、ドラマよりもアニメよりも「理想」を身近に感じさせてくれる。それは、私たちに濃い経験や新しい発見をもたらしてくれるのだ。

 恋愛のカタチの進化は、これからも止まることはないだろう。

3班「MTM」 岸保里奈 長井清香 蓮井慶太郎 鈴木胡桃 遠藤伶