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ホンネの就活ツッコミ論(69)プレゼン・作文でちょっと得する見出しの付け方

ホンネの就活ツッコミ論(69) プレゼン・作文でちょっと得する見出しの付け方
authored by 石渡嶺司大学ジャーナリスト

 インターンシップが盛んになってくると、グループワークでプレゼンテーションをする機会が増えてきます。プレゼンテーションでは、どんな発表をするのか、冒頭でタイトルを出す必要があります。

 先日、大阪経済大学経済学部の経済学部合同ゼミというプレゼン大会を見学しました。学生グループのプレゼンを教員が審査していく、というものです。大学全体では毎年秋に「ZEMI1グランプリ」という大規模なイベントがあり、その前哨戦的な位置づけです。プレゼン内容は興味深いのですが、タイトル付けがいまいち、というグループがいくつか見受けられました。

 大阪経済大学の学生以外にも、このタイトル付けを適当でいい、と侮っている学生は多くいます。タイトル付けはプレゼンテーションだけではありません。就活だけでなく大学でも小論文・レポートを提出する機会は多いはず。そしてここでもタイトル付けが必要です。今回はこのタイトル付けについて、16年間、記事・本を書いてきた経験からまとめました。

誰に対してのタイトルか

 タイトル付けの技術論の前に考えていただきたいのは、誰に対してのタイトルか、という点です。

例)マルチスポーツ普及に関する問題についての一考察

大阪経済大学経済学部合同ゼミのプレゼンで入賞したグループ。苦労が報われる瞬間

 もし、これがアメリカのスポーツ事情に詳しい専門家向けの論文集や専門雑誌であれば、こういうタイトルでもいいでしょう。むしろ、多少堅いくらいでちょうどいい、とも言えます。ちなみに、マルチスポーツとは季節ごとに参加する競技を変えることでアメリカではよくあるそうです。そのため、アメリカのメジャーリーグのドラフト指名では大学野球だけでなくNFLなど他競技からの指名も珍しくない、とのこと(詳しくは『不合理だらけの日本スポーツ界』をどうぞ)。

 しかし、大半の日本人はマルチスポーツと言われてもわかりません。そうなると、このマルチスポーツが何か、タイトルで少し出す必要があります。このように、タイトル付けの前提としては誰に向けてのタイトルか、そこを考える必要があります。

下手なタイトルは「漠然・長文・低認知度」

 ここからタイトル付けの技術論に入るわけですが、まず、下手なタイトル付けから。下手なタイトル付けの特徴は「漠然」「長文」「低認知度」の3点があります。「漠然」とは、漠然としすぎていて意味が分からないタイトルです。

例)ひたむきな努力が奇跡を生んだ

 「ひたむきな努力」と言われても事情を知らない人は何のことか、理解できません。それよりも「奇跡」とはどんなものだったか、そこをタイトルでもっと説明する必要があります。

 「長文」とは長すぎること。長文タイトルはそれだけで読む気・聞く気がなくなります。大阪経済大学経済学部合同ゼミの参加事例から言えば、

例)日本の個人消費におけるキャッシュレス化を行動経済学の観点から考える
例)中小企業の人材確保における就職希望者の増加と魅力の発信

 うーん、長い。言っていることはわかりますし、これが論文集向けのタイトルならまだいいでしょう。しかし、プレゼンの大会でここまで長く付けられても聞く側はしんどくなるだけです。

 「低認知度」は前の項目でも紹介した専門用語です。その専門用語をわかる人だけに向けたプレゼン・レポートであれば、低認知度の専門用語を使ってもいいでしょう。

例)メンタルアカウティングとサンクコスト

 しかし、専門知識のない人が参加するプレゼン、あるいは読者となるレポートであればもう少しわかりやすくする必要があります。

わかりやすい内容は先の方が伝わる

例)ナッジ戦略~あなたも知らないうちに誘導されているかも?
例)あなたも知らないうちに誘導されているかも~ナッジ戦略

プレゼンのタイムキーパー。熱が入りすぎてオーバーしてしまうグループも

 上記例も大阪経済大学経済学部合同ゼミの事例から。上が実際にあった例、下はその実例の順を変えたものです。ナッジ戦略とは「他に望ましい行動をとらせようとすること」という意味で、プレゼンはなかなか興味深かったです(残念ながら午前中の予選で落選)。

 さて、このタイトルですが「ナッジ戦略」は認知度の低い専門用語です。そこで学生グループはサブタイトルに「あなたも~」と付けました。サブタイトルは確かにタイトルの説明になっています。が、専門外の人が参加するプレゼンであれば、サブタイトルとタイトルを逆にした方が、分かりやすくなります。このようにわかりやすい内容をタイトルにして、分かりにくい専門用語はサブタイトルにした方がより良くなります。

Yahoo!記事で多いのは疑問形・強い・「」・引っかかり

 私が記事を定期的に書いているのは、この日経カレッジカフェの他、北海道新聞・毎日新聞関西版(どちらも月1回ペース)、Yahoo!ニュース個人(月2~4本程度)です。このうち、Yahoo!ニュース個人は日経カレッジカフェと同じく、ネットメディアです。そして記事によってはYahoo!トピックスに掲載されます。

 Yahoo!記事は他の方の記事も見ていると、いかにして読者を引き付けるか、相当こだわっています。このYahoo!記事のタイトル付けは学生の皆さんにも参考になるはず。多いのは「疑問形」「強い」「『』(カギカッコ)」「引っかかり」の4点です。

 「疑問形」は「~なのか」「訳」「理由」など。その疑問を解消する内容がプレゼン・レポートに盛り込まれていると、これは強力なタイトルです。

例)若者のSNS依存の急増のワケとは

プレゼン後の質疑応答。厳しい質問にどう切り返すかもグループ次第

 大阪経済大学経済学部合同ゼミの事例だと、上記のタイトルが好例です。

 「強い」は強いキーワードのこと。「激怒」「真相」「前代未聞の~」「地獄」など。学生のプレゼンはともかく、レポート・小論文であまり強いキーワードを使いすぎるのはまずいかもしれません。対象者が誰か、それによっては使わない方がいいこともあるでしょう。ただし、対象者が広いようならあえて使う手もあるのではないでしょうか。

 「『』(カギカッコ)」はタイトルで「」(カギカッコ)を使う、というものです。プレゼン・記事内容で出てくる人のコメント、あるいは強い言葉を「」(カギカッコ)にすると目立ちます。

 「引っかかり」は対象者(読者)が引っかかるフレーズを使う、というものです。

例)「センター試験24泊25日」を変えたい!~一木重夫・小笠原村議インタビュー

 これは私のYahoo!ニュース個人記事。2015年記事なのですが、Yahoo!トピックス入りして100万PVを大きく超えました。小笠原諸島にある小笠原高校の生徒がセンター試験を受けるとき、フェリーで片道25時間かかります。しかも、センター試験時期にドッグ入りするため運休。そのため、センター試験を受けるだけで24泊25日という苦行を強いられていました(当時)。その改善を訴えていた小笠原村議へのインタビュー記事です。

 誰もが受験するか、あるいは名前の知っているセンター試験。それが「24泊25日」と言われると、どういうことか、気になるはず。実際、この記事はYahoo!トピックス入りしたこともあり、小笠原とは全く関係ない方にも多く読んでもらえました。なお、この記事がきっかけで状況は改善されたそうです。このように、対象者(読者)に引っかかるようなフレーズを使うのは強力なタイトルとなります。

 以上、4点、Yahoo!でよく使われる手法をまとめました。学生のプレゼン・レポートなどでも参考になるはず。もちろん、タイトル付けはタイトルを付けたら終わりではありません。内容が伴っていないと、全く意味がないのです。とは言え、いい内容のプレゼン・レポートであっても、タイトル付けがいい加減だと、魅力が半減することも確か。一味違う、プレゼン・レポートにするため、本稿が参考になれば幸いです。