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食べる幸せ 広げたい!(1)食の原点を訪ねて 
1粒の梅干しに詰まった文化と歴史

食べる幸せ 広げたい!(1) 食の原点を訪ねて 1粒の梅干しに詰まった文化と歴史
authored by お茶の水女子大学 Ochas

 笑い声と甘い香りを辿って木目張りの床を歩き、たどり着いたのは大学の一室。部屋に入ると、目に飛び込んできたのはイチゴミルク色のエプロン。私たちはそこで「食の幸せ」を届けている――。

 初めまして!私たちは、お茶の水女子大学の「Ochas」というサークルで「食べる幸せ」を広げるための活動をしています。食べることは、日々の生活に必要な栄養素を摂取するという点において必要不可欠。でも、食べることの意味はきっとそれだけじゃない...。

「食べる幸せ」って何だろう?

 「食べる幸せ」って何だろう?――。皆で囲む食卓の温かさ。友人と行くご飯の楽しさ。綺麗な食べ物を見たときの感動。好きなものを食べている時の幸福感。きっと誰にでも必要なことだからこそ、一人ひとりが食事に持つ意味や想いは違うはず。Ochasは、そんな何気ない幸せを探し、広げることをテーマに、日々活動しています。

 コンセプトはざっくりしているようですが、個々の興味に合った分野から食べる幸せ探しができるように7つの常設チームと期間限定のプロジェクトに分かれて活動しています。私たちが見つけた幸せの瞬間を切り取ったものにはなりますが、この場が皆さんにとっても食べる幸せを見つけるきっかけになったら嬉しいです。

 早速ですが、第1回目のテーマは「食の原点を訪ねて」。私たちが普段見ている食品は綺麗に包装・陳列された商品や作物ばかり。でも、流通の裏側や自然の中で生きている作物の姿については意外と知らない。自然の恵みを直に見て、肌で感じてみる...。今回はそんなOchasの一体験をご紹介します。

学内で育てている野菜は、自分たちで育てたい作物を決め耕作から水やりまで行う

Ochas産直!お野菜はいかが?

 都会の喧騒を忘れるような緑の中に、ぽつぽつと実をつける野菜たち。なんと、学内で野菜を育てているのはOchasの「ファームチーム」。ヒール? スカート?? そんなの作業日には言語道断!!! 太陽の下に集合したのは、土と虫と雑草と...お茶大生(笑)。自分たちで育てたい野菜(作物)を決め、小規模ながらも耕作から水やりまで行っています。

 現在育てているのは主に夏野菜。日に日に成長していく野菜の姿には自然の強さを感じ、野菜のできあがりと味への期待が高まります。自分たちで育てると、野菜の花や実のなり方や、作物が生きていることを実感させる、つるつると張った葉など、市場では見られない野菜の顔をたくさん発見できます。時には虫に食べられていたり、水が足りないとしおれてしまったり、野菜の青臭さを感じたり...そんな姿も生きている証拠です。

 いつも目にしている作物の背景にも、キレイなだけじゃない、泥臭く青臭い瞬間や農家の皆さんの努力や苦労があって、私たちは安全でおいしい作物を食べることができているのだと実感できます。そうして食の原点を体感できるのが、まさにこのファームチームです。そんな貴重な体験に加え、育てるところから美味しくいただくまでがファームチームの醍醐味。何より、とれたての野菜は新鮮で格別の味! 今日も野菜たちの成長に感謝して...いただきます。

見つけた!梅干しの原点

 「梅って、こんなにフルーティーな香りなの!!?」

 Ochasの「フードヴォイスプロジェクト」が参加した、梅干しづくりワークショップ。そこで私たちを迎えてくれたのは、段ボールいっぱいのぷっくり膨らんだ梅と、すもものように甘く芳醇な梅の香りでした。梅のイメージといえば、はちみつ漬けや減塩、しそ付けといったパックの梅干し...。もしかするとコンビニのおにぎりの方がよく見るかも?

ぷっくり膨らんだ梅は、すもものように甘く芳醇な香り。梅干しづくりで重要なのは塩の量

 普段は梅を意識して食べないので、梅に対する認識は(恥ずかしながら)「ちょっとしたご飯のお供」程度でした。また、梅の加工品を目にしても、実際に梅から製品を作る工程を見ているわけでもなく...。改めて考えてみると、梅について知らないことだらけです。

 そんな私たちが目にした梅の実は、イメージとかなり様子が違っています。なめらかで繊細な皮に包まれ、今にもはじけそうなくらいぴん、と張った大粒の実。桃のような可愛らしいフォルムと香り。まるで「今日の主人公は私!!」と言わんばかりの存在感を放っていました。こんなに立派で品質がいいのは当然! なぜなら、今回使わせていただいた梅は、農家さんが手塩にかけて育ててくださった結果、厳しい基準を満たしている正真正銘のブランド梅なのです。ここまで贅沢に使わせていただける経験は滅多にありません。食に関する活動をしてきたOchasだからこそのありがたい特権です。

また、農家さんのお話によると、梅の生産や農園は、伝統を生かしながらも環境や文化と共に変化していくことのできる「世界農業遺産」に認定されているそう。そのような仕組みがあることも知らなかったし、梅という作物たったひとつ、それが地域と一緒に成長していく文化的な側面もあるなんて...。「食べることは生きること」というように、食文化は人の生活と自然の中で共に変化し、育ってきました。そして今回の梅とその文化も、生活の中で代々大切にされてきたからこそ、私たちが知り、伝えていくことが大切だと感じました。

 そんな梅の生い立ちを知ったところで、ついに梅干しづくりの始まりです。 梅を水で洗ってヘタを取り、これを焼酎で消毒した後に塩漬け...と、作業自体は簡単ですが、重要なのは塩の量。店頭でよく見る梅干しは塩分が4%~10%くらいですが、今回はなんと梅の20%の塩を使っています。この塩分20%の梅干しこそ、本来の梅干しの姿「白干し」というのです。店頭で売られている製品は、元々白干しだったものから一度塩分を抜いたあとに再度味をつけているのだとか。

ワークショップでは梅を使ったレシピも考案し、皆さんに紹介させていただいた

 当たり前のように思っていた「減塩」「はちみつ漬け」といった梅干しも、元々はフルーティーな香りがしていた梅を大量の塩で漬け、調味液ではない100%梅由来の水分「梅酢」でひたひたになっていたなんて、想像もしていませんでした。あとは、天日干しをして完成です。今回の梅干しは、最高品質の材料をシンプルな方法で加工した極上の一品! 最高に美味しいこと間違いありません。

ワークショップでは梅を使ったレシピも考案

 梅の楽しみ方はまだまだあります。食に関する活動をメインとしているOchasの特性を生かして、今回のワークショップにて梅を使ったレシピを考案、そして参加者の皆さんに紹介させていただきました。今までは意識すらしていなかった梅ですが、梅干しの原点を知ることができて愛着が湧きました。きっと梅を見たときにはこの感触を思い出し、梅の香りが楽しかった記憶を呼び起こしてくれることと思います。さあ、梅雨も明けたことだし、大粒の梅たちをお日様のもとに出してあげましょう。自然の恵みを惜しみなく受けた、おいしい梅干しになりますように!

 食の原点を訪ねて...ということで、当たり前だと思っていたことも見方を変えると、知らなかった食の姿や楽しい発見が待っていました。もし機会があれば、「今食べているものはどこから来ているのだろう?」と考えてみるのも面白いかもしれません。

 今回紹介させていただいたOchasの活動はほんの一部です。次は「TFT」という、発展途上国に給食を届ける活動を紹介する予定です。TFTって何だろう?という方も、知っている・やっているという方も、Ochasならではの取り組み方をぜひ知っていただきたいと思います♪ お読みいただきありがとうございました!